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自閉症児の行動を途中で止めて言語訓練をする〜ABAの行動連鎖中断法〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に

  • 「貸して」と要求する。
  • 「手伝って」と援助を求める。
  • 「いただきます」と言って食事を始める。
  • 「ごちそうさま」と言って食事を終える。
  • 必要な物を相手へ伝える。

等を教えることがあります。

これまでの記事では

等を使って日常生活の中で
コミュニケーションを教える方法を
説明しました。

今回説明するのは
行動連鎖中断法(behavior chain interruption strategy)
です。

例えば子供が電車の玩具で遊ぶ時に

  1. 線路をつなぐ。
  2. 電車を置く。
  3. 電車を走らせる。

という一連の行動を
普段から行っているとします。

この途中で必要になる
電車を親が持っている状態にすると
そのままでは遊びを続けられません。

そこで「貸して」という新しい行動を
教える機会を作ることができます。

『行動分析学事典』では
既に確立している=できている
行動連鎖の途中に
「中断状況」を設定することで
活動を続けるための物や援助への要求等
新しい行動レパートリーを
増やせる方法として行動連鎖中断法
説明されています。

Cooperらは行動連鎖妨害戦略(BCIS)
という名称で既に一人でできる行動連鎖を
途中で妨げ別の行動を
生起させる方法として説明しています。

1.既にできている行動連鎖を利用する

まず行動連鎖について確認します。

例えば子供が食事をする時には

  1. 椅子へ座る。
  2. 「いただきます」と言う。
  3. 食事をする。
  4. 食べ終える。
  5. 「ごちそうさま」と言う。
  6. 椅子から離れる。

という一連の流れがあります。

遊びなら

  1. ブロックを出す。
  2. 車を作る。
  3. タイヤをつける。
  4. 車を走らせる。

等です。

『はじめての応用行動分析』でも
行動連鎖は好子を得るために行う
一連の行動として説明されています。

行動連鎖中断法ではその中の一部分を
一時的に止め別の行動を
追加していきます。

2.機会利用型指導法とは学習機会の作り方が違う

機会利用型指導法では例えば子供が

  • ジュースを見る。
  • 玩具へ手を伸ばす。
  • 親へ近づく。
  • 親へ物を持ってくる。

等、子供から行動が
起きている場面を利用します。

つまり子供のその時の動機づけ操作
を利用して学習機会を見つけます。

一方、行動連鎖中断法では
既に進行している
行動連鎖を途中で止めることで
次の行動をするために
何かが必要になる状況を
大人が計画的に作ります。

そのため家庭では
「子供が要求したくなる瞬間をずっと待つ」
必要がありません。

生活の中にある
決まった行動連鎖を利用して
要求等が必要になる場面を
計画的に作ることができます。

3.遊びを毎回中断すると遊び自体を嫌がりやすい

例えば子供がブロック遊びをしています。

子供が必要とする物を親が毎回持って
1回ごとに「貸して」
と言わせていたとします。

すると普段遊べているにも関わらず
子供が自由に遊べなくなります。

親が関わるたびに
遊びが止まる状態にも
なりやすくなります。

中断場所によっては
強い抵抗等が起こることもあり得ます。

そのため家庭では遊びそのものを
何度も止めることは避けます。

4.遊びでは普通に渡す中に時々課題を入れる

家庭では子供が必要な物を
基本的には普通に渡します。

例えば子供が
ブロックで車を作っています。

親がタイヤや窓等を持っているとします。

最初の部品はそのまま渡します。

次も普通に渡します。

そして例えば3回に1回程度
コミュニケーション課題を
入れます。

この「3回に1回」は
文献に定められた基準ではありません。

遊びを止めすぎないための
家庭での使い方です。

例えば

  1. 子供が部品を必要とする。
  2. 親が子供の名前を呼ぶ。
  3. 子供が親を見る。
  4. 親「真似して、貸して」
  5. 子供「貸して」
  6. 親が部品を渡す。
  7. 子供が遊びを続ける。

とします。

残りの機会では毎回「貸して」を
要求しなくても構いません。

遊ぶ時間を確保しながら時々学習機会を
挟みます。

5.遊びでは自己開始を必須にしない

ここは

  • 機会利用型指導法
  • 時間遅延法

と大きく異なるところです。

前の記事では子供から

  • 親を見る。
  • 近づく。
  • 声を出す。

等の自己開始を待ってから次の指導を
行うことを重視しました。

しかし今回の行動連鎖中断法では必ずしも
自己開始を求めません。

例えば子供がブロック遊びをしていて
次の部品を親が持っているとします。

そこで

  1. 親が名前を呼ぶ。
  2. 子供が親を見る。
  3. 親「真似して、貸して」
  4. 子供「貸して」
  5. 親が部品を貸す。

と教えます。

Cooperらが説明するBCISでも
中断した場所で「どうしてほしいの?」
等の言語的なプロンプト
使用する手続きが紹介されています。

つまり子供が自発的に
要求するまで待つこと自体が
BCISの中心ではありません。

行動連鎖の途中に
新しい行動を組み込むことが
中心になります。

6.生活上必ず起こる行動連鎖は使いやすい

家庭で行動連鎖中断法を使う時に
遊び以上に使いやすい場合があるのが
毎日ほぼ必ず起きる生活場面です。

例えば

  • 食事を始める。
  • 食事を終える。
  • 外出する。
  • 靴を履く。
  • 入浴する。
  • 着替える。

等です。

これらは子供がその日に

  • 特定の玩具で遊びたがるか
  • ジュースを飲みたがるか

等に左右されにくい
生活上の行動連鎖です。

そのため機会利用型指導法のように
「今この物へのモチベーションが高いか」
だけに頼らず毎日の決まった場面に
学習機会を設定できます。

7.「いただきます」を食事開始の行動連鎖に入れる

例えば子供が食卓へ来て椅子へ座り
すぐ食べ始めようとします。

「いただきます」を既に言えるものの
親から言われなければ言わないとします。

この場合食事開始という
行動連鎖を利用します。

  1. 子供が椅子へ座る。
  2. 子供が食事へ手を伸ばす。
  3. 親が手を前に出して一瞬食事開始を止める。
  4. 子供が「いただきます」と言う。
  5. 親が「いただきますだね」と言って食事開始を許可する。
  6. 子供が食べ始める。

という方法です。

「いただきます」がまだ言えない場合には
3の後に
親「真似して、いただきます」
子供「いただきます」
音声模倣で適切な言葉を教えてから
食事を開始します。

食事そのものを
長時間取り上げるのではありません。

「いただきます」という行動を食事開始の
行動連鎖の中に組み込みます。

9.「ごちそうさま」を食事終了の行動連鎖に入れる

同じように食事終了も
利用できます。

例えば子供が
食べ終わると

何も言わず
椅子から立って

遊びに行くとします。

そこで

  1. 子供が食事を終える。
  2. 子供が椅子から離れようとする。
  3. 親が手を前に出して一瞬離席を止める。
  4. 子供が「ごちそうさま」と言う。
  5. 親が離席を許可する。
  6. 子供が次の活動へ移る。

とします。

まだ
「ごちそうさま」
と言えない場合には


「真似して、ごちそうさま」

子供
「ごちそうさま」

音声模倣
入れます。

ここでも

子供が自分から
言い出すまで

長時間待つことが
目的ではありません。

食事を終了して
次の活動へ移るための

行動連鎖の一部として
教えます。

なお

「いただきます」

「ごちそうさま」

をこのように教える具体的手順は

今回確認した3冊に
そのまま記載された
BCISの標準手続きではありません。

既存の行動連鎖を中断して
新しい行動を組み込むという原理を

家庭生活へ応用した方法です。

11.ただし長時間の阻止や強い身体的制止はしない

「中断する」と言っても
子供が従うまでずっと止め続ける
という方法にはしません。

例えば食事なら

  • 子供の手を強くつかむ。
  • 身体を押さえる。
  • 長時間食事を与えない。

という方法ではありません。

手を前に出す等で次の行動を一瞬止め
必要な言葉を教えたらすぐに行動連鎖を
再開します。

CooperらのBCISでも
中断による苦痛の程度を
事前に確認することが
重視されています。

  • 強い混乱。
  • 自傷。
  • 激しい問題行動。

等につながる中断は家庭で繰り返して
練習する場面には向きません。

12.行動の直後に自然な結果を返す

行動連鎖中断法自然な強化随伴性
を作りやすい方法です。

例えば

  • 「貸して」と言ったら物を貸してもらえる。
  • 「いただきます」と言ったら食事が始まる。
  • 「ごちそうさま」と言ったら食卓から離れて次の活動へ移ることができる。

等です。

別に

  • シール。
  • ポイント。
  • お菓子。

等を用意する必要はありません。

行動連鎖の次の部分へ進めること自体が
その行動に自然に付随した
モチベーションになります。

『行動分析学事典』でも
中断状況を利用して活動を続けるための
物や援助への要求等を新しい行動として
行動連鎖へ加えられると
説明されています。

14.時間遅延法や機会利用型指導法とは目的を分ける

ここまでの方法は似ていますが

家庭では役割を分けて考えます。

機会利用型指導法は子供から自然に起きた
行動や高いモチベーションを
学習機会として利用します。

時間遅延法は既にできる行動について
親がすぐにプロンプトを出さず
子供からの自己開始
増やすために使います。

マンド・モデル法
子供から反応が出た後にまだ知らない
適切な要求言語を「真似して、○○」
と教えます。

一方、行動連鎖中断法
進行中の行動連鎖を計画的に中断し
その場所に新しい行動を組み込みます。

そのため私が提唱する家庭での使用では
必ずしも自己開始を求めません。

必要なら

  1. 名前を呼ぶ。
  2. 「真似して、貸して」と指示する。
  3. 子供が「貸して」と言う。
  4. 親が「貸してだね」と言う。
  5. すぐ貸す。

という流れで教えることができます。

実践例

自閉症児が夕食を食べます。

現在は

  1. 椅子へ座る。
  2. 「いただきます」と言う
  3. 食べ始める。
  4. 食べ終わる。
  5. すぐ椅子から離れる。

という行動連鎖になっています。

そこで「ごちそうさま」を
食事の行動連鎖へ追加します。

食事終了時は

  1. 子供が食べ終わる。
  2. 椅子から離れようとする。
  3. 親が一瞬離席を止める。
  4. 親「真似して、ごちそうさま」
  5. 子供「ごちそうさま」
  6. 親「ごちそうさまだね」
  7. 子供が離席する。

とします。

食事の終了という毎日ほぼ必ず起こる
行動連鎖を利用して
言葉を使う場所そのものを
明確にします。

最終的には

  1. 食事を始める場面で「いただきます」と言う。
  2. 食事を食べる。
  3. 食事を終える場面で「ごちそうさま」と言う。
  4. 離席する。

という一つの行動連鎖として
家庭生活の中で維持される状態を
目指します。

参考文献

日本行動分析学会編
『行動分析学事典』丸善出版

P.A.アルバート/A.C.トルートマン著
佐久間徹・谷晋二・大野裕史訳
『はじめての応用行動分析』二瓶社

John O. Cooper
Timothy E. Heron
William L. Heward 著
中野良顯訳
『応用行動分析学 Applied Behavior Analysis 第2版』明石書店

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