自閉症児の適切行動を増やすために〜ABAの強化〜

自閉症児の支援では「ほめましょう」
「ご褒美を使いましょう」
と言われることがあります。
こうすると適切行動が増えたり
強まったりする強化という現象を
起こそうとしているからです。
しかしABAでいう強化は
単にほめることや
ご褒美を渡すことではありません。
ある行動の後に特定の結果があった時に
その行動が増えた場合に強化された
と考えます。
つまり大切なのは
- 親がほめたか。
- ご褒美を渡したか。
ではありません。
- その後に同じ行動が増えたか。
- 同じ場面でまた行動するようになったか。
が重要です。
親にとって良い対応と考えても
子供の行動が増えていなければ
強化が起こっていない可能性が
あります。
目次
1.強化は行動が増えたかで判断する
例えば子供が靴をそろえた後に
親が「そろえられたね」
と言ったとします。
- 次の日も子供が靴をそろえる。
- その次の日も自分で靴をそろえる。
このように靴をそろえる行動が
増えているなら親の声かけがご褒美として
機能して強化が起こっている可能性
があります。
一方で親が毎回ほめていても
子供が靴をそろえない場合は
そのほめ方はご褒美になっておらず
強化はお固定ないのかもしれません。
「えらいね」
「すごいね」
と伝えることが悪いわけではありません。
ただしABAでは
ほめたこと自体ではなく
行動が増えたかを見ます。
行動が増えていないなら
- ほめるタイミングが遅い。
- 何の行動をほめられたか子供が理解sていいない。
- 子供にとって親に褒められることが
ご褒美になっていない。 - 行動の後に褒め言葉以外のご褒美がない。
等を確認します。
強化は大人の主観ではなく
子供の行動の変化で判断します。
ただし、ヒントはあります。
親が褒めて子供が笑顔になっている場合は
ご褒美として機能している可能性が高く
強化が起きることが多いです。
2.強化には好子による強化と嫌子による強化がある
強化には大きく分けて
- 好子による強化
- 嫌子による強化
があります。
好子による強化とは
行動の後に子供にとって良いこと=好子
が得られてその行動が増えることです。
例えば
- 片づけた後に好きな遊び=好子ができる。
- 手を洗った後におやつ=好子を食べられる。
- 言葉で要求したらスマホ=好子を借りられる。
- 宿題を3問終えたら休憩=好子ができる。
等です。
一方で嫌子による強化とは行動の後に
子供にとって嫌なこと=嫌子がなくなり
その行動が増えることです。
例えば
- 課題を3問終えたら課題=嫌子が終われる。
- 歯みがきで口を開けたら仕上げみがき=嫌子が短く終わる。
- 着替えを始めたら親の注意=嫌子が止まる。
- 苦手な場所で「帰りたい」と言ったらその場=嫌子から離れられる。
等です。
嫌子による強化は結果として適切行動の
強化をしていることがあります。
嫌子を避けるために他の行動が強化される
ことがあるからです。
例えば
- 食後、自分の食べこぼしを掃除させる=嫌子と子供の食べ方が綺麗になる。
- おしっこをトイレの床にこぼしたら拭かせる=嫌子とおしっこの飛び散りに気をつけるようになる
- 玄関で靴を揃えることを忘れていたら玄関に呼び靴を揃えさせる=嫌子と靴を揃えることが週間になっていく
等です。
家庭では好子による強化だけで
全ての行動を教えることは難しいです。
うっかり忘れや子供が自主的には
気をつけないことに関して
少し面倒なこと=嫌子を与えることで
行動が改善することが多いです。
3.子供にとって良い結果は一人ずつ違う
大人が子供のご褒美になると思うことが
子供にとって必ずしもご褒美とは
限りません。
例えば
- シールをもらう。
- 親にほめられる。
- お菓子をもらう。
- 好きな遊びをする。
- 休憩できる。
- 一人で過ごせる。
- 親と少し遊べる。
等は子供によってご褒美になるかは
違います。
ある子にはシールが有効でも別の子では
全く効果がないことがあります。
親にほめられることがご褒美になる子も
います。
一方で褒められることはむしろ嫌いで
放っておかれることや
早く次の活動へ進めることの方が
ご褒美の子もいます。
そのためご褒美=好子は
大人が決めつけるものではありません。
実際に使ってみて行動が増えたかを
確認します。
ただし子供の適切行動全てに
不自然なご褒美=好子を使って良い
わけではありません。
ご褒美を使えるのはその行動をした後に
自然にご褒美が得られる行動のみです。
例えば
- 要求言語の練習→その後言葉で要求すればご褒美を得られるようになる
- 移動手段→チャイルドシートに暴れずに座れたら好きな場所に移動ができる
- 買い物の練習→好きなものを買えるようになる
これらの練習には不自然なご褒美を
使っても全く問題ありません。
一方
- 勉強をする
- 親の指示に従って行動する
- 家事をする
- 挨拶をする
これらの行動に関しては行動を習得しても
ご褒美を得られることはないので
不自然なご褒美は使って教えません。
4.好子による強化が使いにくい子もいる
中には好子による強化が使いにくい子
もいます。
- お菓子に興味が薄い、もしくは偏食が激しすぎて食べられるものが少ない
- シールに興味がない。
- 親にほめられても行動が増えない。
- 好きな遊びがなく終始うろうろしている
- 要求そのものが少ない。
このような場合があります。
この状態で無理にご褒美を探しても
うまくいかないことがあります。
好きな物を増やそうとして
大人がいろいろ提示しても
子供の行動が増えなければ
強化として機能していません。
この場合は
好子で行動を増やすことに
こだわりすぎない方がよいです。
目標は行動の習慣化にします。
例えば
- 帰宅したら靴を脱ぐ。
- 食後にコップを流しへ運ぶ。
- 外から帰ったら洗面所へ行く。
- 寝る前にトイレへ行く。
このような行動を毎日同じ順番で
行います。
好子による強化が難しい子では
「楽しいからやる」を目標にしません。
毎日同じ場面で同じ行動を繰り返すことで
- その時間になれば行動する。
- その場所に来たら行動する。
- その手順になれば次の行動に進む。
という習慣化を目指します。
前述の不自然なご褒美を使用して
教えられない行動も
このように行動の習慣化を目指します。
5.困った行動も強化されることがある
強化は適切行動だけに起きるものでは
ありません。
困った行動に対しても起きます。
例えば子供がスマホを要求して
大声で泣いたとします。
親が最初は断っていたけれど
泣き続けた後にスマホを渡したとします。
この場合
- 子供がスマホを要求する。
- 要求を断られると子供が大声で泣く。
- 親からスマホが手に入る。
という流れになります。
この流れが繰り返されると
大声で泣く行動が
スマホを手に入れる方法として
強まりやすくなります。
同じように
- 宿題中に大声を出す→親が宿題の量を減らす
- 食事中に席を立つ→苦手な食べ物を食べなくてよくなる。
- 片づけ中に寝転ぶ→親が代わりに片づける。
等も困った行動を強化している
可能性があります。
困った行動が続く時は
- その行動の後に何が起きているか。
- 子供にとって得になる結果が起きていないか。
- 子供にとって嫌なことが避けられる結果が起きていないか。
を確認します。
6.問題行動を減らすためにご褒美を使う
困った行動を減らすには
困った行動だけを止めようとしても
うまくいかないことがあります。
大切なのは適切行動が出現する場合に
そちらにご褒美=好子を足して
好子による強化を起こすことです。
例えばスマホを要求する場面なら
- 泣く。
- 大声を出す。
- 親の手を引っ張る。
という行動は強化しません。
- 親の目を見て「スマホ貸して」と言う。
- 親と目を合わせ何らかの発声を出す。
- 親の近くに来て要求する。
等の適切な要求行動が出た時に
ご褒美を渡します。
ただし実際に問題行動で要求している子は
問題行動の後に適切行動をしたとしても
問題行動が強まることが多いです。
例えば何も言わずに泣いたり
大声を出したりしたすぐ後に
「ちょうだい」と言葉で言えたので
要求を叶えると
泣くことや大声が強化される可能性が
あります。
問題行動が多い子は問題行動を起こしても
要求が叶わないことを学習させることを
目指すことが先です。
7.ご褒美はすぐに渡す方が効果的
子供に新しい行動を教える時は
行動の直後にご褒美を渡す方が
効果が高いです。
すぐにご褒美を渡すことが可能では
なくても問題がありません。
すぐに褒めれば良いのです。
例えば子供が
- 「ちょうだい」と言えた。
- アイコンタクトして何らかの発声を出した。
等の適切行動をした直後に
具体的に褒めます。
このように行動の直後に褒めると
何が適切行動なのかが
子供に伝わりやすいです。
その後にご褒美を与えれば
少しタイムラグがあっても
褒め言葉→ご褒美の順番を覚えるので
問題ありません。
8.強化する行動を間違えない
親がよかれと思って対応していても
増やしたい行動ではなく
別の行動を強化している場合があります。
例えば子供が「できない」と言うたびに
親がすぐに答えを教えているとします。
この場合
- 考える。
- ひとまずやってみる
という行動ではなく
- 「できない」と言う。
- 黙って親の助けを待つ。
という行動が増える可能性があります。
この場合は
- まず自分で解いてみる。
- 間違えた部分を親が教える。
- 親の前で再度解いてみる。
- 類題を子供一人で解いてみる。
という流れにします。
強化を目指すのは「できない」と言うこと
ではありません。
- 自分で解いてみる。
- 終わったら報告する。
- 親と一緒に答えを確かめる。
- 間違えた場合は正解を教わる。
- 一人で再度回答する。
という行動です。
どの行動の後に
親が反応しているかを確認しないと
意図しない行動が増えてしまいます。
9.強化は記録して確認する
強化がうまくいっているかは
記録して確認します。
例えば片づけを増やしたい場合です。
記録することは
- 自発的に片付けられたか。
- 残っている物はないか。
- 親の声掛けがあったか。
- 片付け後の報告はあったか。
- 片づけた後に何が起きたか。
等です。
1週間記録して
- 自発的片付けが増えた。
- 落ちているものが減った。
- 片付け後に笑顔で報告に来るようになった。
このような変化があれば
支援が合っている可能性があります。
反対に変化がない場合は
- 自発的に片付けない時は面倒なことを足しているか。
- 基準が高すぎないか。
- 片付けられない程のおもちゃを出して遊ぶ許可をしていないか
等を見直します。
強化が起きているかどうかは
感覚で判断せず
行動が増えたかで確認します。
実践例
外から帰った後に
手を洗わずリビングへ行く子の場合です。
これまでは親が
- 「手を洗って」
- 「先に洗面所へ行って」
- 「汚いから洗いなさい」
と何度も声をかけ
それでも指示を無視する時は
怒っていました。
子供は玄関からそのまま
おもちゃの方へ行くことが多く
親が強い声で言った時だけ
洗面所へ行くことがありました。
子供が手を洗ったとしても雑で何回も
やり直させることがありました。
そこで増やす行動を一つに決めました。
- 玄関に入ったら親が洗面所の前まで連れて行く。
- 親が水を出す。
- 親が石けんを出す。
- 親が子供の手を持ちこする。
- 親が子供の手を持ち水ですすぐ。
- 子供がタオルで手を拭く。
- 子供が手を拭けたことを報告する
このように親がする部分と
子供一人でする部分を分けました。
この場面では
手を洗い終わった後に
リビングで遊べること=ご褒美は
好子による強化として
働く可能性があります。
一方で手洗い場面=嫌子が終わることは
嫌子による強化として
働く可能性もあります。
大切なのは
どちらの強化かを言葉だけで
決めることではありません。
もし遊びやほめ言葉が
強化として機能しにくい子であれば
好子で動かそうとしすぎません。
- 玄関に入る。
- 洗面所へ行く。
- 手を洗う。
- 手を拭く。
- リビングへ行く。
この順番を毎日同じように行い
行動の習慣化を目指します。
子供の行動を増やしたい時は
何を強化しているのかを
必ず確認しましょう。
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