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自閉症児の行動のモチベーションを上げる〜ABAの動機づけ操作〜

自閉症児に同じ指示を出しても

  • すぐに行動する時。
  • 何度言っても動かない時。

があります。

例えば子供が「ジュース」と言えば
ジュースを得られることを
知っていたとします。

しかし直前に
ジュースを十分に飲んでいれば
目の前にジュースがあっても
要求しないことがあります。

反対に最後に飲んでから
時間が空いていれば
自分から「ジュース」
と言う可能性が高くなります。

行動後に得られる結果の価値と
その結果を得るための
行動の起こりやすさを変える条件を
動機づけ操作と呼びます。

刺激性制御が何を合図に行動するか
を表すのに対して
動機づけ操作はその結果を
今どの程度得たいのかに影響します。

1.動機づけ操作は結果の価値を変える

動機づけ操作とは

  • 食べ物。
  • 飲み物。
  • 休憩。
  • 遊び。
  • 注目。
  • 課題から離れること。

等の価値を変える行動前の条件です。

同時にその結果を得るための
行動の起こりやすさも変えます。

例えば最後に水分を取ってから
時間が空いている場合です。

飲み物の価値が上がり、その結果

  • 冷蔵庫へ行く。
  • 水筒を持ってくる。
  • 「飲みたい」と言う。

等の行動が起こりやすくなります。

一方で飲み物を十分に飲んだ直後は
飲み物の価値が下がります。

同じ要求行動も
起こりにくくなります。

2.刺激性制御と動機づけ操作は役割が違う

刺激性制御は
特定の刺激が行動の合図
になっている状態です。

動機づけ操作は
行動後に得られる結果の価値を
変える条件です。

例えば子供が
お菓子を要求する場合です。

机の上にお菓子があることは
要求すればお菓子を得られるという
合図になることがあります。

これは刺激性制御です。

一方で最後に食べてから
時間が空いていることは
お菓子の価値を上げ
要求行動を起こりやすくします。

これは動機づけ操作です。

合図があっても結果の価値が低ければ
行動しないことがあります。

結果の価値が高くてもどの行動をすれば
結果を得られるのか分からなければ
適切な行動は起こりません。

刺激性制御と動機づけ操作の
両方が関係します。

3.価値を上げる条件を確立操作と呼ぶ

結果の価値を上げてその結果を得る行動を
起こりやすくする条件を
確立操作と呼びます。

例えば好きな動画を
しばらく見ていない時は
動画を見ることの価値が
高くなる場合があります。

その結果

  • タブレットを持ってくる。
  • 「動画を見たい」と言う。
  • 課題を早く終わらせる。

等の行動が起こりやすくなります。

  • 他にも最後の休憩から時間が空いている。
  • 好きな人と長時間会っていない。
  • 外遊びをする機会が数日なかった。

等によって

  • 休憩。
  • 注目。
  • 外遊び。

の価値が上がることがあります。

4.価値を下げる条件を無効化操作と呼ぶ

結果の価値を下げてその結果を得る行動を
起こりにくくする条件を
無効化操作と呼びます。

例えば子供が動画を十分に見た直後です。

動画を見ることの価値が
下がる場合があります。

その直後に
課題が終わったら動画を見られるよ。
と伝えても課題を行うモチベーションには
なりにくくなります。

好きなおもちゃを
いつでも自由に使える状態でも
そのおもちゃを
課題後の好子として使う効果は
低くなることがあります。

以前は効果があった物でも
直前の経験によって価値は変わります。

5.モチベーションを内面の言葉だけで説明しない

子供が行動しない時に

  • やる気がない。
  • 興味がない。
  • 気分が乗らない。

と説明することがあります。

しかしこれだけでは
支援方法が決まりません。

確認することは

  • 最後にその物を得た時刻。
  • 直前に得た量。
  • 自由に使える状態だったか。
  • 行動すると何を得られるか。
  • 行動しなくても同じ結果を得られるか。
  • 課題後に何が始まるか。

等です。

例えば
お腹が空いているから食べ物を要求した
ではなく

  • 最後の食事から三時間経過していた
  • 目の前に食べ物があった。
  • 要求すると食べ物を得られた。

と記録します。

観察できる条件で考えることが大切です。

6.好子を集中的に使うと飽和化が起こる

同じ好子を繰り返し使うと
その好子の価値が
徐々に低下することがあります。

これを飽和化と呼びます。

例えば課題のたびに

  • 同じお菓子。
  • 同じ動画。
  • 同じおもちゃ。

を使用する場合です。

最初は課題をすぐに始めていた子供でも徐々に好子を見ても
行動しなくなることがあります。

同じ好子を集中的に使うと二か月程度で
飽和化が目立つこともあります。

ただし全ての子供で
同じ期間になるわけではありません。

  • 使用する回数。
  • 一回に与える量。
  • 日常で自由に使えるか。
  • 他に好きな活動があるか。

等によって変わります。

飽和化が起きた時に

  • もっと高価なおもちゃを探す。
  • 新しいお菓子を探す。
  • 新しい動画を探す。

という対応を続けると次々に新しい好子を
準備しなければ
行動を教えられなくなります。

大切なのは好子を
探し続けることではありません。

好子がなくても
行動を教えられる状態を
作ることです。

7.好きな物を自由に与え続けると価値が下がる

子供が好きな物を

  • いつでも使える。
  • 要求しなくても得られる。
  • 課題をしなくても得られる。

という状態にするとその物の価値が
下がることがあります。

例えばタブレットを
一日中自由に使える場合です。

課題後に終わったらタブレット。

と伝えても
行動を増やす結果には
なりにくくなります。

行動を教える時に使う物は

  • 使用する時間を決める。
  • 課題と関係なく一日中与えない。
  • 適切な要求後に渡す。
  • 決めた時間で終了する。

等のルールを作ります。

ただし子供の生活に必要な

  • 食事。
  • 水分。
  • 睡眠。
  • 安心できる場所。

等を必要以上に制限して
モチベーションを作ってはいけません。

8.強い制限でモチベーションを作らない

欲しい物を長時間与えなければ要求行動が
起こりやすくなることがあります。

しかし強い制限を行うと

  • 泣く。
  • 奪い取る。
  • 他者を叩く。
  • 物を壊す。

等の行動も
起こりやすくなる可能性があります。

食事や水分等を長時間制限して
行動を教えてはいけません。

好きな物を使用する場合も

  • 短時間だけ保管する。
  • すぐに成功できる課題にする。
  • 適切な行動後に早く渡す。
  • 十分な量や時間を与える。

という形にします。

子供が強く困る状態を
作ることが目的ではありません。

適切な行動を使いやすい場面を
作ることが目的です。

9.行動しなくても同じ結果が得られると行動は増えない

子供に「貸して」と言ったら貸す
と教えていても
何も言わずに手を伸ばした時にも
物を渡していると「貸して」と言う必要が
なくなります。

また課題後に動画を見られるルールでも
課題を拒否した後に
同じ動画を見られるなら
課題を行うモチベーションは
低くなります。

適切な行動をした時としなかった時で
結果に違いがなければ
行動は増えにくくなります。

  • 適切な要求をした時に得られる。
  • 決めた課題を終えた後に進める。
  • 片づけた後に次の遊びを始められる。

という結果を一貫させる必要があります。

10.問題行動が起きてから好子を見せない

子供が課題を拒否した後に

  • これが終わったらお菓子をあげる。
  • 動画を見せる。
  • 好きな場所へ行く。

と好子を見せることがあります。

この対応を繰り返すと

  • 課題を拒否する。
  • 親が好子を提示する。
  • 課題を行う。

という行動の流れが
作られる可能性があります。

子供は最初の指示では動かず
より良い条件が
提示されるまで待つようになります。

使う好子やルールは
活動を始める前に決めます。

問題行動が起きた後に
条件を良くしません。

最初から決めた条件で
行動させます。

11.自然な結果を優先する

生活行動にはその行動と直接つながる
自然な結果があります。

  • 靴を履いたら外へ出られる。
  • 着替えたら出発できる。
  • 片づけたら次の遊びを始められる。
  • 食器を運んだら食事が終わる。
  • 適切に要求したら必要な物を得られる。

等です。

自然な結果は日常生活の中で
繰り返し起こります。

一方で

  • 歯を磨いたらお菓子。
  • 片づけたら毎回スマホ。
  • 着替えたら玩具を買う。

という結果は
生活行動と直接関係がありません。

新しい行動を教える初期には
使うことがあっても
最終的には自然な結果で
行動が続く状態を目指します。

12.課題の量と難しさも行動の起こりやすさに影響する

同じ結果を得られる場合でも
行動に必要な負担が大きいと
行動は起こりにくくなります。

例えば動画を見る前に

  • ひらがなを一文字読む。
  • プリントを十枚行う。

では必要な行動量が違います。

新しい行動を教える時は

  • 確実にできる量。
  • 短時間で終わる課題。
  • プロンプトなしでできる部分。

から始めます。

ただし問題行動が起きた後に

  • 十問から一問へ減らす。
  • 子供の担当を親が行う。
  • 課題自体を中止する。

と変更すると問題行動によって
課題量を減らせると
学習する可能性があります。

課題の量や難しさは始める前に決めます。

13.好子は使えたらラッキーと考える

ご褒美=好子は行動を教えるために
便利なことがあります。

しかし好子がなければ
行動を教えられない状態を
目指してはいけません。

好子が使えたらラッキー
使えなかったら仕方がない
と考えます。

子供が好きな物を
毎回探し続ける必要はありません。

以前使えた好子でも

  • 直前に十分使った。
  • 飽和化した。
  • 別の活動をしたい。
  • その日の価値が低い。

という理由で使えないことがあります。

好子が使えないたびに

  • 新しいお菓子。
  • 新しいおもちゃ。
  • 新しい動画。

を準備していると

より強い好子がなければ
行動しない状態になる可能性があります。

好子がある時に行動を形成した後は
少しずつモチベーションが
低い場面でも
同じ行動を使えるようにします。

最初は
日常の要求場面で
好子を使って行動を形成します。

例えば欲しい物を見せて
「ちょうだい」と言えたら渡します。

子供は要求すると
欲しい物を得られるため
行動を覚えやすくなります。

次に日常生活で
避けることができない場面で
同じスキルを使います。

例えば食事前に「いただきます」
と言ってから食事を始めます。

お風呂から出たい時に「出たい」
と要求してから浴室を出ます。

食事や入浴は毎日の生活で
避けることができません。

このような場面で
好子を別に用意せず適切な行動をした後に
生活を次へ進めます。

最後に
日常生活とは直接関係のない課題でも
同じスキルを使えるようにします。

例えば親が用意した練習場面で

  • 言葉を言う。
  • 指示に従う。
  • 課題を終える。

ことを教えます。

この段階では強い好子がなくても
行動することを目指します。

順番は

  • 日常の要求場面で好子を使って行動を形成する。
  • 避けられない生活場面で同じ行動を使う。
  • 日常と直接関係のない課題でも行動する。

という流れです。

14.動機づけ操作とコンプライアンスを分けて考える

子供が指示に従わない場合に

  • 好子の価値が低い。
  • 課題後の結果を得たいと思っていない。

という動機づけの問題が
関係することがあります。

しかし欲しい結果がなくても

  • 親の指示に従う。
  • 生活上必要な行動を行う。
  • 決められた担当を終える。

ことも必要です。

全ての生活行動に特別な好子を用意すると
好子がない時には指示に従わない状態に
なる可能性があります。

新しい行動を教える初期には
価値の高い結果を使います。

一方で既に習得した
日常生活の行動は

特別な好子がなくても
行える状態を目指します。

動機づけ操作は
行動を教えやすくするための
環境調整です。

指示に従う能力そのものを
置き換えるものではありません。

実践例

子供が自分から
「開けて」と言う行動を
教える場合です。

子供は一人で開けられない
玩具の箱があると

  • 箱を床へ投げる。
  • 親の手を引っ張る。
  • 大きな声を出す。

という行動をしていました。

「開けて」という言葉は親の後に続けて
言うことができました。

しかし自分から
使うことはありませんでした。

最終的な目標を

一人でできない時に相手を見て
「開けて」と言うと決めます。

最初は日常の要求場面で
行動を形成します。

子供が遊びたい玩具を
一人では開けられない箱へ入れます。

玩具が見えないと
箱を開けたいと思わない可能性があるため
中が見える箱や開けられない包装のお菓子
を使います。

子供が箱やお菓子を持って
親の近くへ来たら待ちます。

親がすぐに箱を開けてはいけません。

子供が親を見たり声を出したりしたら
親が「真似して、開けて」
と正しい言葉全体を教えます。

子供が「あけて」と言ったら
すぐに箱を開けます。

箱を開けてもらえることが
要求行動の自然な結果です。

この場面で
「開けて」が安定したら

避けることができない
生活場面へ移します。

例えばおやつの袋が開けられない
場面です。

親がすぐ手伝うのではなく
待ちます。

子供が「あけて」と言ったら
おやつの袋を開けます。

次に日常とは直接関係のない
練習課題で確認します。

親のタイミングで
「お菓子の袋が開けられない時に何て言うの?」
と質問します。

子供が「あけて」と答えられたら
「そう、あけてだね」と褒めます。

メルマガをしています。

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