自閉症児に適切なコミュニケーションを教える〜ABAのFCT~

自閉症児が
- 欲しい物を得るために大声を出す。
- 動画を見せてもらうために親を叩く。
- 大人に来てもらうために物を投げる。
- 相手の玩具を使うために取り上げる。
という問題行動を起こすことがあります。
これらの行動によって
- お菓子を得る。
- 動画を見られる。
等の子供にメリットがある結果が起きると問題行動が繰り返される
可能性があります。
このような時に
問題行動と同じ結果を得られる
適切なコミュニケーションを教える方法を機能的コミュニケーション訓練
=Functional Communication Training
(FCT)と呼びます。
ただし問題行動が起きた直後に
適切な言葉を言わせればよい
という方法ではありません。
問題行動の機能を確認し問題行動によって
目的を達成できない状態を作った後に
適切なコミュニケーションを
別に教える必要があります。
目次
1.代替行動分化強化として要求を教える
機能的コミュニケーション訓練は
代替行動分化強化と関係する方法です。
代替行動分化強化とは
問題行動の代わりになる
適切な行動を強化し
問題行動では同じ結果を得られないように
する方法です。
例えば子供がお菓子を得るために
大声を出している場合は
- 大声ではお菓子を得られない。
- 「お菓子」と言えばお菓子を得られる。
という違いを作ります。
2.機能分析によって問題行動の結果を確認する
同じ問題行動でも得ている結果は
子供によって異なります。
例えば大声を出す行動でも
- お菓子を得ている。
- 動画を見られる。
- 大人が近づいてくる。
- 課題が中断される。
という違いがあります。
問題行動によって
何を得ているのかを確認することを
機能分析と呼びます。
一般的には問題行動の機能を
- 物や活動を得る。
- 注目を得る。
- 課題や活動から逃れる。
- 行動自体によって感覚的な刺激を得る。
という形で確認します。
確認することは
- 問題行動の直前に何が起きたか。
- 最終的に子供が何を得たり避けたりしたか。
です。
例えば
- 動画を終了する。
- 子供が親を叩く。
- 親が再び動画を見せる。
という流れが繰り返されていれば
叩く行動によって
動画を得ている可能性があります。
- 玩具を使っている友達へ近づく。
- 子供が玩具を取り上げる。
- 相手が離れる。
- 子供が玩具を使う。
という流れであれば玩具を得ることが
問題行動の機能になっている可能性が
あります。
3.問題行動の機能に合う言葉を教える
機能的コミュニケーション訓練では
ただ言葉を増やせばよい
というわけではありません。
問題行動によって得ていた結果と
教えるコミュニケーションで得られる
結果を一致させます。
例えば
お菓子を得るために
大声を出しているのであれば
「お菓子ちょうだい」と言う言葉を
教えます。
大人に来てもらうために
物を投げているのであれば「来て」
と伝える行動を教えます。

4.自然な発声とアイコンタクトを要求へつなげる
要求の言葉を教える前に
- 自然環境の中で起きている独り言の発声。
- 自発的なアイコンタクト。
を増やします。
例えば上記の行動が自然に出現したら
- くすぐり。
- 追いかけっこ。
- 抱っこ。
- 身体を揺らす遊び。
- 歌や掛け声を使った遊び。
等の関わり遊びで子供を喜ばせます。
発声とアイコンタクトが増えてきたら次に遊びの要求として使うことを教えます。
例えば
- 大人が独り言が出た子供を短時間くすぐる。
- 一度くすぐりを止める。
- 大人は何も言わずに待つ。
- 子供が発声して大人の顔を見る。
- すぐにくすぐりを再開する。
という流れです。
遊びの中で
- 大人を見て発声する
- 遊びが再開する。
という関係が安定したら
物の要求でも
同じ行動が起きることを待ちます。
例えば
- 子供の好きなおやつが置いてある
- 大人は何も言わずに待つ。
- 子供が発声して大人の顔を見る。
- おやつを渡す。
という流れです。
遊びで身につけた要求方法を
物の要求へ般化させます。

5.先行条件操作で癇癪を防ぎながら行動のコントロールを教える
要求時に癇癪が起きる場合は
最初から要求場面を
増やす必要はありません。
先に要求時の癇癪が
起きにくい環境を作ります。
これを先行条件操作と呼びます。
例えば
- 自由に使えない動画端末は子供から見えない場所へ置く。
- 使えない玩具は手の届く場所へ置かない。
- お菓子を自由に取れない場合は目の前へ出したままにしない。
という方法です。
先行条件操作によって
- 要求する。
- 断られる。
- 癇癪を起こす。
という場面そのものを減らします。
ただし先行条件操作だけを
続けるのではありません。
癇癪が起きていない間に
要求時でも大人の指示に従って
行動できることを教えます。
例えば子供が
- 動画。
- お菓子。
- 玩具。
等を要求した時にすぐに渡すのではなく
- 「座って」
- 「立って」
と簡単な指示を出します。
子供が指示に従った後に
要求へ応じます。
例えば
- 子供が動画を要求する。
- 親が「椅子に座って」と伝える。
- 子供が着席する。
- 動画を見せる。
という流れです。
着席や起立は癇癪の代わりに
要求を伝える行動ではありません。
子供のモチベーションが高い場面で
- 大人の指示を聞く。
- 決められた行動をする。
- 行動後に要求へ応じてもらう。
というコンプライアンスを
教えるために使います。
6.一人でクールダウンできるようになってから先行条件操作を止める
先行条件操作は要求時の癇癪を
一時的に防ぐ方法です。
先行条件操作を行っている間に
要求時のコンプライアンスを高めます。
このように要求が通らない場面でも
一人で感情をコントロールすることを
できるようになってから先行条件操作
をやめます。
7.待つことと断られることを一緒に教える
適切に要求できることと
要求がすぐに通らなくても
待てることは
別の行動です。「動画」と言えたとしても
動画をすぐに見られない時に
待てるとは限りません。
適切な要求と一人でのクールダウンが
安定してから「ちょっと待ってね」
と一旦断る練習を行います。
待っている間に
- 大声を出す。
- 親を叩く。
- 泣き続ける。
という癇癪が起きた場合は
その要求には応じません。
癇癪が起きなかった場合は
しばらく待った後に要求を通します。
待つ行動が増えた後は毎回
要求を通すのではなく時折
要求を叶えるだけにします。

8.言葉で促さず待つプロンプトを使う
子供が欲しい物を見ている時に
- 「何て言うの」
- 「ちょうだいでしょ」
- 「貸してって言って」
と毎回促すことがあります。
この対応を続けると
大人からのヒント=プロンプトが出るまで
要求しない状態になりやすくなります。
そのため要求を教える時は
言葉のプロンプトを
基本的には使用しません。
- 欲しい物を見せる。
- 子供の近くにいる。
- 大人は何も言わずに待つ。
という待つプロンプトを使います。
発声とアイコンタクトが安定してから
シェイピングによって
- 声。
- 単語。
- 短い文。
へ基準を上げます。
9.般化しない時は家庭での基準を上げる
- 母親には要求できるが父親には要求できない。
- 家庭では言えるが園では物を取る。
ということがあります。
このような場合はまずは家庭で
- 最も指示を聞く大人。
- 最も要求を教えやすい大人。
に対しての基準を上げます。
実践例
子供が動画を見たい時に
- 親の腕を叩く。
- 端末を親から取り上げる。
- 大声を出す。
という行動をしていました。
親は問題行動が続くと
動画を見せることがありました。
観察すると
- 端末が見えるところに置いてある。
- 子供が親を叩く。
- 親が動画を見せる。
という流れが繰り返されていました。
動画を見れることが
問題行動の機能になっている
可能性があります。
最初に先行条件操作を行います。
- 動画を見ない時間は端末を見えない場所へ置く。
- 動画を見せる場合はタイマーで
自動的に切れるようにする。
その間に
コンプライアンストレーニングをします。
子供が動画を見たがる時に
着席練習を実施します。
子供が着席した後に
短時間動画を見せます。
着席が慣れてきたら起立課題も
実施します。
並行して要求の言葉を教える準備として
関わり遊びを行います。
- 親が子供を短時間くすぐる。
- 一度くすぐりを止め何も言わずに待つ。
- 子供が声を出し親の顔を見る。
- さらにくすぐる
発声とアイコンタクトによって
遊びが再開する経験を
繰り返します。
関わり遊びの中で
- 自分から発声する。
- 自分から親を見る。
という行動が増えた後に動画の要求時も
同様の行動ができるようにしていきます。
そこからシェイピングにより
適切な言葉にしていきます。
- 「あ」
- 「ど」
- 「どうが」
- 「動画見たい」
というように徐々に練習します。
メルマガをしています。





