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自閉症児の行動を上達させる〜ABAのシェイピング〜

自閉症児に新しい行動を教える時には
最初から完成した行動を
求めてもできないことがあります。

例えば

  • 静かに10分間椅子へ座る。
  • 相手に聞こえる声で挨拶する。
  • 読める文字を書く。
  • 美容室で散髪が終わるまで座る。

という行動です。

現在は数秒しか座れない子に
最初から10分間座ることを求めると
途中で席を立つ可能性が高くなります。

このような場合は
現在できている行動から始めて
少しずつ目標へ近づけます。

この方法をシェイピングと呼びます。

目標に近づく行動を強化し
少しずつ強化する基準を
変えていきます。

1.シェイピングは行動を少しずつ目標へ近づける方法

シェイピングではまず
最終的に教えたい行動の基準を決めます。

その上で子供が現在できている行動を
確認します。

例えば最終目標が
静かに前を向いて10分間椅子へ座る
だったとします。

現在の子供が

  • 大声を出さない。
  • 前を向く。
  • 足を机の下へ置く。
  • 椅子から立たない。

という条件で5秒間座れるなら
そこから始めます。

5秒間座る行動が安定したら
10秒→10分へ伸ばします。

少しずつ目標へ
近づけることが重要です。

2.チェイニングとは教える対象が違う

シェイピングとチェイニング
どちらも行動を段階的に
教える方法です。

しかし教える対象が違います。

チェイニングは複数の異なる行動を
順番につなげる方法です。

例えば手洗いなら

  1. 洗面所へ行く。
  2. 水を出す。
  3. 石けんをつける。
  4. 手をこする。
  5. 水ですすぐ。
  6. タオルで拭く。

という異なる行動を
つなげます。

一方、シェイピングは一つの行動の精度を
少しずつ高める方法です。

例えば

  • 座る時間を長くする。
  • 声を聞き取りやすくする。
  • 文字の形を正確にする。
  • 親から離れて歩く距離を伸ばす。
  • 一人で行う部分を増やす。

という形です。

  • 複数の行動をつなげるのがチェイニング
  • 一つの行動を目標へ近づけるのが
    シェイピング

です。

3.最終目標を観察できる行動で決める

シェイピングを始める前に
最終目標を決めます。

この時に

  • 落ち着いて行動する。
  • きちんと挨拶する。
  • 集中して勉強する。
  • 上手に遊ぶ。

という曖昧な目標にはしません。

何ができたら目標達成なのかを
観察できる形で考えます。

例えば

  • 前を向いて10分間椅子にすわってお絵描きや本読みをする。
  • 相手を見て「おはよう」と言う。
  • 10分間で計算問題を5問解く。
  • 友達に「貸して」と言って許可が得られたら「ありがとう」と伝えて物を借りる。
  • 子供が自分から親の手を握り親が手を話さない限り手繋ぎを続ける。

という形です。

目標が曖昧だと具体的なステップを
作りづらいです。

4.現在できている行動を確認する

最終目標を決めた後は子供が現在どこまで
できるかを確認します。

例えば文字を書く場合です。

  • 鉛筆をグリップがあれば正しく持てる。
  • 線を引ける。
  • 丸を書ける。
  • 見本を見て文字らしい形を書ける。
  • 一部が正しい文字を書ける。
  • 見本と同じ文字を書ける。

この中のどこまで
できているかを確認します。

最初の基準は成功率が
ほぼ100%のことにします。

無理なく習慣化することを
目指すからです。

慣れてきたら徐々に基準を上げます。

5.時間を伸ばすのは最後にする

シェイピングでは最初に時間だけを
伸ばさないようにします。

例えば最終目標が

静かに前を向いて10分間椅子へ座る。

だったとします。

最初に

大声を出してもよい。

横を向いてもよい。

足を机の上へ載せてもよい。

という条件で
10分間座ることだけを
教える方法には注意が必要です。

10分間座れるようになった後に

静かにする。

前を向く。

足を机へ載せない。

という条件を加えると
課題が急に難しくなります。

その結果
10分間続けることができず
座る時間を短くして
教え直す必要が出てきます。

そのため最初に
完成した行動の基準を
全て決めます。

大声を出さない。

顔と体を前へ向ける。

足を机の下へ置く。

椅子から立たない。

最初はこの条件を
全て満たした状態で
5秒間座ることを目指します。

5秒間できたら10秒。

次に20秒。

30秒。

1分。

3分。

5分。

10分。

というように
最後に時間を伸ばします。

質の低い行動を
長時間続けさせるのではありません。

目標となる行動を
短時間だけ行わせます。

正しい行動が安定した後に
時間を伸ばします。

時間以外にも

文字の正確さ。

発音の明瞭さ。

姿勢。

視線の方向。

声の大きさ。

道具の使い方。

等の基準があります。

先に完成した行動の形を作り
最後に持続時間や回数を
増やしていきます。

6.一度に変える基準は一つにする

シェイピングでは一度に複数の基準を
変えすぎないようにします。

例えば挨拶を教える時に

  • 相手を見る。
  • 聞き取れる声を出す。
  • 正しい言葉で言う。
  • 自分から言う。

を一度に求めると難しくなります。

  1. 最初は相手の方向を見る。
  2. 次に相手を見て発声する。
  3. その次に相手を見て「おはよう」と言う。
  4. 最後に親の指示なしで自分から挨拶する。

というように変えます。

一度に変えるのは

  • 距離。
  • 回数。
  • 正確さ。
  • 声の大きさ。
  • 自立度。

等のうち一つにします。

時間を伸ばす場合も
他の基準を満たせる状態を作ってから
時間だけを変えます。

7.できる基準から始める

シェイピングは
失敗させ続ける方法ではありません。

子供が現在できる行動を
強化するところから始めます。

例えば子供が
美容室の椅子へ
5秒しか座れない場合です。

最初から5分間座らせるのではなく
まず5秒間座ったら終了します。

5秒間座ることが安定したら
10秒へ伸ばします。

10秒が安定したら
20秒へ伸ばします。

少し難しいけれど
成功できる基準にします。

成功がほとんどない場合は
基準を上げすぎています。

その場合は
一つ前の基準へ戻します。

8.基準を上げるのは行動が安定してから

一回できただけですぐに基準を上げると
次の段階で失敗しやすくなります。

同じ条件で何度か成功できてから
次の基準へ進みます。

例えば椅子へ30秒間座る練習なら

  • 別の日にもできる。
  • 一回でできる。

という状態を確認します。

安定したら
次は1分へ伸ばします。

基準を上げた後に失敗が続く場合は
子供が怠けているのではありません。

基準の上げ方が急過ぎた
可能性があります。

9.新しい基準へ進んだら前の基準だけを強化しない

最初は小さな基準の行動を強化します。

しかし新しい基準へ進んだ後も
前の基準だけを同じように強化し続けると
行動が伸びにくくなります。

例えば要求時に最初は子供が
何でも良いので自発的に声を出して
アイコンタクトをしたらクリアとします。

その後

  1. 大きな声を出したらクリア。
  2. 「ちょうだい」と言えたらクリア。
  3. 「おかしちょうだい」と言えたらクリア。

のように段々と難しくしていきます。

ただし急に難しくして
失敗が続く場合は
一つ前の基準へ戻します。

問題行動が起きたから
その場で基準を下げるのでは
ありません。

次の練習を始める前に
基準を見直します。

10.自然な結果を強化として使う

シェイピングでは
少しずつ目標へ近づいた行動を
強化します。

ただし生活行動に対して
毎回不自然なご褒美を
使う必要はありません。

  • 美容室の椅子へ座ったら椅子から降りられる。
  • 歯みがきで口を開けたら歯みがきが終わる。
  • 着替えが進んだら外出できる。
  • 片づけたら次の遊びへ進める。

という自然な結果を使います。

「決められたことが終わったら好きなことができる」
ということでも立派なご褒美として
機能します。

親が具体的に褒めることも
強化として働く場合があります。

11.プロンプトを使った場合は一人でもう一度行わせる

シェイピング中に
子供が行動できない場合は
プロンプトを使うことがあります。

  1. まず待つ。
  2. 言語プロンプトを出す。
  3. 見本を見せる。
  4. 必要な場面では身体プロンプトを使う。

という形です。

ただしプロンプトによって
行動できた場合は
そのまま終わりにしません。

もう一度同じ基準で
一人で行えるか確認します。

例えば親が見本を見せて
丸を書けた場合です。

その後に新しい紙を出して
子供一人で丸を書かせます。

一人でできた時に
その基準を習得した可能性が
高くなります。

12.問題行動の後に基準を下げない

子供が課題中に

  • 泣く。
  • 寝転ぶ。
  • 物を投げる。
  • 席を立つ。

という行動をした後に基準を下げると
問題行動によって課題が簡単になる
と学習する可能性があります。

例えば3分間座る約束だったのに
泣いた後に30秒で終了すると
泣けば座る時間が短くなる
と子供が学習するかもしれません。

いつもはできている課題にも関わらず
開始してすぐに機嫌が悪くなった場合は
できるまでやり直すことが理想です。

ただし安全を確保できない程の
自傷、他害、破壊行動がある場合は
家庭だけで無理に続けません。

専門家へ相談し
課題設定や対応方法を
見直す必要があります。

13.できるだけ客観的な指標で記録する

シェイピングでは子供の行動が目標へ
近づいているかを記録します。

この時に

  • 上手にできた。
  • 以前よりきれいになった。
  • 声が聞き取りやすくなった。
  • 落ち着いて座れた。

という親の印象だけで
評価しないようにします。

できるだけ数字や
第三者でも判断できる基準を使います。

例えば着席なら

  • 何秒間座れたか。
  • 何回やり直したか。
  • 着席時に課題をできたか。

等を記録します。

文字を書く課題なら

  • どのくらいの時間で書けたか。
  • 枠からはみ出さずに書けたか。
  • 何文字書けたか。
  • 間違えていないか。
  • 文字の画像をAIへ読み取らせ正しい文字として認識されるか。

等を確認します。

実践例

美容室で散髪をする間
椅子へ座れない子の場合です。

子供は美容室へ入れますが
椅子へ座ると
すぐに立ち上がっていました。

親や美容師が

  • 「座っていて」
  • 「すぐ終わるよ」

と何度も声をかけても座り続けることは
できませんでした。

最終目標を散髪が終わるまで椅子へ座る
だけにはしません。

散髪に必要な行動を具体的に決めます。

  • 顔と体を前へ向ける。
  • 椅子から立たない。
  • ケープをつけて抵抗しない。
  • 髪を切られている時に頭を動かさない。
  • 大声を出さない。
  • バリカンを頭に当てても抵抗しない。

この条件を満たしたまま
散髪が終わるまで座ることを
最終目標にします。

美容室を利用することは
レベルが高いのでまずは
家でカットすることを目指します。

最初に現在できる行動を確認します。

  • 椅子へ5秒間座る。
  • ケープを巻く

ここまではできました。

そこで最初の基準を

  • ケープを巻く。
  • 前を向く。
  • 椅子から立たない。
  • 大声を出さない。
  • この条件で5秒間椅子へ座る。

にします。

5秒間座れたら
椅子から降りられるようにします。

これは椅子へ座ると
短時間で嫌な活動が終わる
嫌子による強化です。

5秒間座ることが安定したら

  1. 10秒間座る。
  2. 20秒間座る。
  3. クシでとかす
  4. クシでとかしハサミを見せる。
  5. クシでとかしハサミを髪に近づける。
  6. クシでとかしハサミで髪を挟む。
  7. クシでとかしハサミで髪を少し切る。

というように進めます。

一度に

  • 長時間座る。
  • 髪を切る。
  • ドライヤーを使う。

を全て求めません。

一つの基準を安定させてから
次へ進みます。

家で全く問題なく切れるようになったら
美容室で切ることに挑戦しても
よいでしょう。

外では問題行動が起きても
止めることが難しいため
スマホやお菓子を使うことで
難易度を下げても構いません。

メルマガをしています。

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