自閉症児に一連の行動を教える〜ABAのチェイニング〜

自閉症児に生活行動を教える時には
- 「着替えて」
- 「片づけて」
- 「準備して」
と伝えるだけでは
行動できないことがあります。
大人には一つの行動に見えることでも
実際には複数の行動がつながっています。
例えば着替えには
- 着替える服を出す。
- 今着ている服を脱ぐ。
- 下着を正しい向きに着る。
- 上着を正しい向きに着る。
- ズボンを正しい向きに履く。
- 脱いだ服をかごへ入れる。
という行動があります。
これらの行動を
順番につなげて教える方法を
チェイニング=行動連鎖化と呼びます。
子供ができない時に
親が全部代わりに行うのでは
ありません。
一連の行動を小さく分けて
- 親が行う部分。
- 子供が一人で行う部分。
を決めます。
子供が一人で行う部分を少しずつ増やし
最終的に一連の行動が
できる状態を目指します。
チェイニングは基本的に指示があれば
子供一人でできる行動であるけれど
順番ややることを覚えていない時に
使います。
目次
1.最初に行動を小さく分ける
一連の行動を教える時は
最初に行動を細かいステップに分けます。
これを課題分析と呼びます。
例えば帰宅後の支度なら
- 玄関へ入る。
- 靴を脱ぐ。
- 靴をそろえる。
- 上着を脱ぐ。
- 上着を掛ける。
- かばんを机の上に置く。
- 洗面所へ行く。
- 手を洗う。
というように分けます。
一つの行動であったとしても
細かく分けることは可能です。
例えば靴を履く場合も
- 玄関に座る。
- 左の靴を持つ。
- かかとを広げる。
- つま先を入れる。
- 足を押し込む。
- かかとを直す。
- 右の靴を持つ。
- 左と同様に履く。
- 立ち上がる。
という行動があります。
子供がどこで止まるのかを
観察できる程度まで小さく分けます。
それができたら現時点で
子供がどこまでできるかを確認するため
実際に一人で行動をさせてみます。
今の子供のレベルによって
行動のステップをさらに細かくしたり
簡単なのでステップを荒くしたりします。
2.前から教える方法がフォワードチェイニング
一連の行動を
最初の部分から順番に教える方法を
フォワード(前向き)チェイニング
と呼びます。
例えば食事の準備なら
- 手を洗う。
- 食器を受け取る。
- 自分の席に食器を置く。
- 椅子を出す。
- 椅子に座る。
- 箸を持つ。
- 「いただきます」と言う。
という行動があります。
最初は子供に手を洗う行動だけを
一人で行わせます。
その後の行動は親が手伝います。
手を洗う行動を覚えたら2食器を受け取る
を教えていきます。
このように最初の行動から
一つずつ増やします。
フォワードチェイニングは行動の始め方を
教えたい時に使いやすい方法です。
自分から活動を始められず
親の指示を待つ子を改善しやすいです。
3.最後から教える方法がバックワードチェイニング
一連の行動の
最後の部分から教える方法を
バックワード(後ろ向き)チェイニング
と呼びます。
例えば上着を着る場合です。
- 親が上着を準備する。
- 親が袖へ腕を通す。
- 親が上着を肩まで上げる。
- 親が「ファスナー閉めて」と指示を出す。
- 最後に子供がファスナーを上げる。
という形から始めます。
ファスナーを上げる行動が
できるようになったら
- 親が袖へ腕を通す。
- 子供が上着を肩まで上げる。
- 子供がファスナーを上げる。
という形にします。
フォワードチェイニングでは
子供が最後の行動までを行うため
即活動の終了へつながります。
行動終了後に即時に褒めて行動を強める
即時強化が使いやすかったり
習慣化された行動の前に
習慣化されていない行動を足すと
習慣化されていない行動も
習慣化していくというプレマックの原理
が使いやすかったりします。
また新たに教える行動が
一番最初に来るので行動を忘れづらい
というメリットもあります。
このようなメリットから最後の行動から
の方が教えやすい場合が多いです。
4.最初から全てやらせる方法トータルタスクプレゼンテーション
一連の行動を毎回最初から最後まで
子供に行わせる方法があります。
これをトータルタスクプレゼンテーション
(全行程法)と呼びます。
子供ができる部分は一人で行わせ
できない部分には
親が手伝い=プロンプトを出します。
例えば手洗いなら
洗面所へ行くところから
タオルで拭くところまで
毎回全て子供に行動してもらいます。
ただし
子供が止まる度に
親が代わりに行う方法には
注意が必要です。
- 子供が止まる。
- 親が続きを行う。
という流れを繰り返すと
止まれば親がしてくれる
と学習する可能性が高いです。
こうなると毎回異なるポイントで間違い
いつまでも行動を覚えないこと
があります。
5.それぞれの方法の違い
フォワードチェイニング
バックワードチェイニング
トータルタスクプレゼンテーションの
それぞれの特徴は次の通りです。

6.子供が止まってから親が代わりにしない
一連の行動の途中で子供の行動が止まると
親が手伝ったり(プロンプト)
残りを行ったりすることがあります。
例えば着替えで
- 子供がズボンを持つ。
- 途中で寝転ぶ。
- 親がズボンを履かせる。
という流れです。
これを繰り返すと
- 途中まで子供が行う。
- 子供の行動が止まる。
- 親が終わらせる。
という行動が
増える可能性があります。
子供の行動が止まった場合は
身体プロンプトを使って
すぐに次の行動をさせます。
ただし身体プロンプトを使った場合は
再度子供一人で行動をやり直させます。
7.適切行動の後には強化を行う
チェイニングでは行動を分けるだけでなく
適切行動の後に強化を行うまでが
セットです。
例えば手洗い後には
- リビングへ行って遊べる
- おやつを食べられる。
- 夕食を始められる。
という自然なご褒美=好子があります。
このように最終的に活動が終わって
次の行動へ進めることが
自然な強化になるように
行動を教えましょう。
一方チェイニングで生活行動を教える時に
- 一つ行動する度にお菓子を渡す。
- スマホを見せる。
- シールを渡す。
という行動とは関係のない
不自然なご褒美を使うと
短期的には行動が増えやすいです。
しかし行動を覚えた後に
毎回お菓子やスマホが
得られるわけではありません。
そのため最初から不自然なご褒美は
使わない方が良いのです。
自然なご褒美=好子による強化が
使いにくい子の場合も
- 同じ時間。
- 同じ場所。
- 同じ順番。
で行動を繰り返し
行動の習慣化を目指します。
8.問題行動が起きた後に担当を減らさない
子供が一連の行動中に
泣いたり寝転んだりすると
- 今日は疲れているから。
- 時間がないから。
- かわいそうだから。
と子供が行う部分を
減らすことがあります。
しかし問題行動が起きた後に
担当を減らすと
- 泣けば親がしてくれる。
- 寝転べば行動が減る。
と学習する可能性があります。
子供が行う量は行動を始める前に
- 今日はズボンだけ履く。
- 今日は服を一枚だけかごへ入れる。
- 今日はおもちゃを三つだけ片づける。
というように決めます。
問題行動が起きた後に
その場で減らしません。
一方、行動を始める前に
子供が不機嫌であったりした場合は
そもそも行動をさせようと
しなくて良いです。
- 行動が始まる前の不調はそもそも行動させない
- 行動が始まった後の不調は行動させる
というルールにしましょう。
9.一連の行動ができたら指示をまとめる
行動を教え始めた時は一つの指示で
一つの行動をさせます。
- 「上着を脱いで」
- 「ハンガーへ掛けて」
- 「かばんを置いて」
- 「手を洗って」
という形です。
それぞれの行動が
できるようになったら
指示をまとめます。
「はい、やって」
という一つの指示で
- 上着を脱ぐ。
- 上着を掛ける。
- かばんを置く。
- 手を洗う。
という行動を
続けて行わせます。
これがチェイニングによって
行動がつながった状態です。
親が毎回次の指示を出し続けると
子供は親の指示を
待つようになることがあります。
一つずつできるようになったら
親の音声指示の回数を減らし
一連の行動へつなげます。
実践例
洗濯物を畳んで
引き出しへ入れる行動を
教える場合です。
これまでは親が
洗濯物を子供の前へ置き
「自分の服を片づけて」
と伝えていました。
しかし子供は
洗濯物を触った後に
別の場所へ行ったり
服を一枚だけ持って
止まったりしていました。
親はその度に
- 「畳んで」
- 「引き出しに入れて」
- 「まだ残っているよ」
と声をかけていました。
最後は親が
残った洗濯物を
片づけていました。
まず洗濯物を片づける行動を
小さく分けます。
- パンツを一枚取る。
- パンツを畳む。
- 畳んだパンツを持って立つ。
- 引き出しまで運ぶ。
- 引き出しを開ける。
- 服を入れる。
- 引き出しを閉める。
この子は服を畳むことが
まだ難しかったため
最初から親子の役割を決めます。
- 親が子供の服だけを分ける。
- 親がパンツを畳む。
- 子供が畳んだパンツを持つ。
- 子供が引き出しまで運ぶ。
- 子供が服を入れる。
- 子供が引き出しを閉める。
という形です。
最初は最後の行動に近い
- 服を引き出しへ入れる。
- 引き出しを閉める。
という部分から
子供に行わせます。
これはバックワードチェイニングです。
親が畳んだパンツを子供へ渡します。
「パンツを持って」と言っても
子供がパンツを持たない場合は
身体プロンプトで親がパンツを持たせ
「そうだね」と言ってから
パンツを再度置いて「パンツを持って」
と伝えてさっと子供が服を持てるまで
やり直しします。
できるようになったら他の衣服を
持たせるなどします。
メルマガをしています。





