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自閉症児が声掛けの後に動き始めるまでを見る〜ABAの反応潜時〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に

  • ズボンを履く。
  • 手を洗う。
  • 玩具を片付ける。
  • 宿題を始める。

等を教えることがあります。

子供が最後までできたとしても
親が声を掛けてから動き始めるまでに
長い時間がかかることがあります。

また何度も声を掛けてから動いた場合と
一回の声掛けで動いた場合では
必要だった親の手助けが違います。

指示などの刺激が提示されてから
決めた行動が始まるまでの時間を
反応潜時(response latency)
といいます。

The IRIS Centerの測定教材でも
この時間の測り方が説明されています。

この記事では
一回の課題の指示が終わってから
子供が行動を始めるまでの時間に
注目します。

1.始めるまでと始めた後を分ける

例えば親が「ズボンを履いて」と
言った場面を考えます。

指示が終わってから
ズボンへ手を伸ばし始めるまでを
今回測る反応潜時とします。

手を伸ばした後
ズボンを持ち、足を通し
腰まで引き上げる時間は
別に確認します。

  • なかなか始めないが、始めればすぐ履ける。
  • すぐ始めるが、足を通す動作に時間がかかる。

では練習する部分が違います。

以前説明した流暢性では
正確に素早く行動できることを
説明しました。

今回は行動を始めるまでに注目します。

測る時は毎回指示が終わったところから
同じ動作が始まるところまで
にそろえます。

2.指示を出す前に子供の注目を確認する

子供が別のことに注目している時に
離れた場所から指示を出しても
聞き取っていない可能性があります。

まず名前を呼び
親の方へ顔を向ける、返事をするなど
呼び掛けに反応したことを確認してから
短く指示を出します。

ここでいう一回の声掛けは
注目を確認した後に出す
課題の指示のことです。

聞き手行動の記事でも扱いましたが
指示を復唱できる子供には
内容を復唱させる方法も使います。

ただし、正しく復唱できたことと
言葉の意味を理解し
実際に行動できることは分けます。

また親が「何て言った?」と聞いたり
復唱後に「やって」と言ったりした場合は
追加の声掛けが入っています。

復唱の練習をしている時の記録と
一回の指示だけで行動を始める時の記録は
分けて残します。

3.再指示はプロンプトになることがある

子供が動かない時に
もう一度同じ指示を出すと
行動を始めることがあります。

この二回目の指示は
行動を助ける追加のヒントである
プロンプトとして
機能している可能性があります。

例えば

  1. 親がズボンを履くように指示する。
  2. 子供が動かない。
  3. 親が同じ指示をもう一度出す。
  4. 子供がズボンへ手を伸ばす。

という流れです。

この場合、二回目の指示から
動き始めるまでが短くても
一回の指示で始められたとは
判断しません。

最初の指示から動き始めるまでの時間と
再指示したことを記録します。

二回目の指示を出した時点で
時計をゼロに戻さないようにします。

指さしや見本を追加した場合も
その手助けを記録します。

最終的に確認するのは
追加の手助けがなくても
一回の指示から行動を始められるかです。

4.時間が長い理由を決めつけない

反応潜時が長いという記録だけでは
子供が拒否しているとは判断できません。

  • 指示を聞き取っていなかった。
  • 指示された行動のやり方が分からなかった。
  • 親からの追加の指示を待っていた。

等の可能性を分けて確認します。

例えばズボンを履かない場合も
ズボンを選ぶ、前後を確かめる
足を通す、腰まで引き上げる
という行動に分けます。

前後が分からず止まっているなら
始める速さより
前後を見分ける練習を先に行います。

また手を伸ばした後に止まるなら
開始までの時間は短くても
その先の動作に課題が残っています。

子供が助けを求めた時は
何に困っているかを確認し
その部分を手伝います。

5.時間のかかる活動では終了時間も示す

宿題や片付けのように
取り組む時間が長くなる活動では
始める指示とともに
いつ終わるのかも伝えます。

時計が分かる子供なら
終了する時刻を示します。

時計を読むことが難しい子供なら
残り時間を色の面積で示す
ビジュアルタイマーを使います。

タイマーの表示と終了の関係が
まだ分からない場合は
短い活動で、表示がなくなったら終わる
という経験から教えます。

決めた時間だけ取り組むなら
その時間になったら終了します。

タイマーが鳴っても
課題を追加して続けさせると
示した時間と実際の終わりがずれます。

終了時間を示したことで
取りかかり方が変わるかも確認します。
タイマーを使ったことは記録に残します。

6.一回の指示で始められる行動から練習する

最初は子供が一人でできる
短い行動を選びます。

まず普段の場面で
一回の指示から何秒で始めるか
どのような手助けが必要かを確認します。

始められた時には
「自分で始められたね」と
その行動に応じます。

その対応によって
一回の指示で始める行動が増えているかを
強化の考え方で確認します。

目標の時間は
普段の記録と生活上必要な時間から決めます。

一度短い時間でできただけで
習得したとは判断しません。

必要な手助けをしながら
別の機会に一回の指示でできるかを
繰り返し確認します。

始めなかった機会も記録に残します。

途中で練習を終えた場合は
観察した時間と、開始しなかったことを
記録します。

実践例

食後にコップを台所へ運ぶ場面です。

コップを持って運ぶ動作は
既に一人でできる子供を想定します。

今回練習するのは
親の指示を聞いた後
机の上のコップへ手を伸ばし始めることです。

  1. コップがいつもの位置にあり、子供が手を伸ばせる状態か確認する。
  2. 名前を呼び、子供が呼び掛けに反応したことを確認する。
  3. 親が「コップを台所へ運んで」と一回指示する。
  4. 指示が終わったところで時間を測り始める。
  5. 子供がコップへ手を伸ばし始めたところで計測を止める。
  6. 運び終えたら「運べたね」と応じ、開始までの時間と手助けの有無を記録する。

動かなかったため
コップを指さしてから始めた場合は
指さしのプロンプトありと記録します。

測っているのは
指示が終わってから
コップへ手を伸ばし始めるまでです。

台所まで運ぶ時間や
元の場所へ戻ってくる時間は
含めません。

参考文献

The IRIS Center
Behavior Assessment: Duration and Latency Recording
1〜2ページ。行動の定義、持続時間と反応潜時の測定。

The IRIS Center
Behavior: Duration and Latency Recording
最初の指示と再指示の後の反応潜時を確認する演習。

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