自閉症児が教えていない組み合わせにも答えられる?〜ABAの刺激等価性〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に
- 物の名前を聞いて写真を選ぶ。
- 写真を見て文字を選ぶ。
- 文字を見て必要な物を選ぶ。
等を教えることがあります。
これまでのマッチングの記事では
音声、実物、写真、文字を
対応させる学習について説明しました。
例えば子供が
「靴はどれ?」と聞かれて
靴の写真を選べるとします。
さらに同じ質問を聞いて
くつという文字も
選べるようになりました。
この二つを教えた後に
くつという文字を見せると
靴の写真を選べることがあります。
文字と写真を合わせる練習は
直接行っていません。
それでも、それまでに学習した関係から
新しい組み合わせに
答えられるようになることがあります。
ABAでは、このような関係のうち
反射性、対称性、推移性という
三つの性質を満たすものを
刺激等価性(stimulus equivalence)
と呼びます。
行動分析学事典では
見本合わせで一部の関係を教えた後に
直接教えていない関係が成立することが
説明されています。
目次
1.見た目が違うもの同士でも関係が成立する
例えば
- 靴の写真。
- くつというひらがな。
- 靴という漢字。
は見た目が違います。
同じ写真を二枚並べて
同じものを選ぶ課題とは異なり
形だけを比べても
対応するものは分かりません。
そこで最初に靴の写真を見て
くつという文字を選ぶことを教えます。
次にくつという文字を見て
靴という漢字を選ぶことを教えます。
この二つを教えた後に靴の写真を見て
靴という漢字を選べるかを確認します。
ここが直接教えていない関係です。
ただし
教えた二つの課題ができただけで
刺激等価性が成立したとは判断しません。
教えていない組み合わせでも
正しく対応させられるかを
確認する必要があります。
2.順番を逆にしても答えられることが対称性
例えば
- 靴の写真を見せる。
- 子供が、くつという文字を選ぶ。
という関係を教えたとします。
次に、見本と選択肢を入れ替えます。
- くつという文字を見せる。
- 子供が靴の写真を選ぶ。
この逆方向の課題はまだ教えていません。
それでも正しく選べることを
対称性と呼びます。
写真を見て文字を選ぶことと
文字を見て写真を選ぶことを
最初から両方教えていた場合は
どちらも直接教えた行動です。
逆方向を教えていない段階で
できるかを確認する点が違います。

3.間にあるものを出さなくても答えられることが推移性
例えば
- 靴の写真を見て、くつという文字を選ぶ。
- くつという文字を見て、靴という漢字を選ぶ。
という二つの関係を教えます。
その後
- 靴の写真を見せる。
- 子供が靴という漢字を選ぶ。
ことができるかを確認します。
この時は間にある、くつという文字を
見せていません。
それでも写真と漢字を
正しく対応させられることを
推移性と呼びます。
親が毎回写真、ひらがな、漢字の順に
見せて答えへ誘導すること
ではありません。
写真から漢字を選ぶ課題だけを出して
一人でできるかを見ます。

4.同じもの同士を対応させることが反射性
例えば他の刺激との対応を学習した
くつという文字を見本にします。
選択肢にも
くつという同じ文字を入れます。
その文字同士を合わせる練習を
直接行っていなくても
同じ文字を選べることが反射性です。
これは
同じ文字を合わせる課題を
繰り返し練習して
できるようになったという意味
ではありません。
ここでもその組み合わせを直接教えずに
できるかを確認します。
刺激等価性ではこの反射性と
対称性、推移性を考えます。

5.基軸行動や行動カスプとは確認する内容が違う
以前の記事では
一つの学習から変化が広がるものとして
基軸行動と行動カスプを説明しました。
基軸行動では一つの行動を教えた結果
直接教えていない他の行動まで
変化することを見ます。
例えば自己開始を教えた結果
要求だけでなく
報告や質問を自分から始める行動も
増える場合です。
行動カスプでは行動の習得によって
新しい環境や学習機会へ
接触できるようになることを見ます。
例えば電車に乗れるようになり
それまで行けなかった場所で
新しい経験ができる場合です。
刺激等価性では
写真、文字、音声等について
教えていない刺激同士の関係が
成立するかを見ます。
教えたこと以外へ変化が広がる点は
似ていますが
全てを同じ現象として扱いません。
6.教える場面と確認する場面を分ける
例えば、くつという文字を見せて
靴の写真を選ばせる時に
親が先に靴の写真を指さしたとします。
子供は正しく選べました。
しかし、これでは文字と写真の関係が
教えずに成立したかは分かりません。
親の指さしを見て
選んだ可能性があるからです。
未指導の関係を確認する場面では
まず答えを示さずに行わせます。
できなければ、その後に教えます。
記録でも
- 教えずに一人でできた。
- ヒントがあればできた。
- 正解を教えた後にできた。
を分けます。
『行動分析学事典』でも
指導前にできることを確認し
一部の関係を教えた後で
未指導の関係を評価する流れが
説明されています。
7.できなければ必要な関係を直接教える
文字と写真を合わせられない時は
先に教えた課題が
安定しているかを確認します。
例えば
- 音声を聞いて写真を選ぶ。
- 音声を聞いて文字を選ぶ。
という二つの課題のうち文字を選ぶ方が
まだできていないかもしれません。
親のヒントがある時だけ
正解している場合もあります。
この状態なら
まずできていない課題を教えます。
先に教えた課題ができていても
新しい関係が成立しない場合は
その関係を直接教えます。
例えば
- くつという文字と靴の写真の対応を教える。
- 一度教材を下げて選択肢の位置を変える。
- もう一度文字を見せる。
- 今度は子供一人で写真を選ばせる。
とします。
教えていないのにできることを待って
分からない問題を
何度も繰り返させる必要はありません。
8.生活で必要な行動につながるかを考える
刺激等価性を利用できても
全ての教材で写真、ひらがな、漢字を
そろえて教える必要はありません。
靴を使った例も
関係を説明するためのもので
靴という漢字を全ての子供へ
教えることを勧めるものではありません。
以前の社会的妥当性の記事と同じように
家庭では教えた後に
生活で何ができるようになるかを
考えます。
例えば持ち物の文字を見て
必要な物を選べるようになれば
外出準備に使える可能性があります。
ただし写真を選べることと
実物を探してカバンへ入れることは
同じ行動ではありません。
文字と写真の課題ができた後は
実際の準備でも
使えるかを確認します。
実践例
自閉症児が
- 水筒。
- 連絡帳。
- 筆箱。
を準備する練習をしています。
現在は親が名前を言えば
それぞれの写真を選べます。
しかし文字を見て
対応する写真を選ぶことは
まだできません。
そこで最初に
音声を聞いて文字を選ぶことを教えます。
- 親「水筒はどれ?」
- 子供が水筒という文字を選ぶ。
連絡帳や筆箱についても
同じように教えます。
音声だけを聞いて
それぞれの文字を選べるようになったら
文字と写真の対応を確認します。
- 親が水筒という文字を見せる。
- 写真の中から対応するものを選ばせる。
- 子供が水筒の写真を選ぶ。
この時、親は
「水筒はどれ?」とは言いません。
言ってしまうと文字ではなく音声を聞いて
写真を選べてしまうからです。
親の音声や指さしがなくても
文字を見て写真を選べるかを確認します。
文字と写真の組み合わせを
直接教えていない段階でできたなら
新しい関係が成立したことを示す
手がかりになります。
その後は文字の持ち物表を使い
実物を選んで
カバンへ入れる練習へ進めます。
できない部分があれば
その行動を追加で教えます。
家庭では
教えた課題を増やすことだけでなく
既にできるようになった関係を確認し
まだ必要な部分へ
練習の時間を使います。
参考文献
日本行動分析学会編
行動分析学事典
丸善出版、2019年
刺激等価性の基礎、328〜331ページ
刺激等価性の応用、482〜485ページ
Murray Sidman
Equivalence Relations and Behavior: An Introductory Tutorial
The Analysis of Verbal Behavior
25巻、5〜17ページ、2009年
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