自閉症児の問題行動は機能が一緒であれば全て同じとみなす〜ABAの反応クラス〜

自閉症児が動画を見たい時に
- 「動画」と言う。
- 親を見る。
- 親の手を引く。
- 大声を出す。
- 親を叩く。
等、複数の行動をとることがあります。
見た目は全く違う行動ですが
どの行動によっても動画を見る
という同じ結果を
得ている場合があります。
ABAでは共通して環境へ
同じ効果をもたらす反応のまとまりを
反応クラス(response class)
として考えます。
『行動分析学事典』では
個々の反応の形が多少違っていても
環境に対して共通の効果を持つ反応を
同じ反応クラスとして
扱うことが説明されています。
また同じ結果をもたらす複数の反応を
同じ反応クラスとして
考える説明もされています。
家庭療育では
- 大声。
- 叩く。
- 物を投げる。
等の問題行動をそれぞれ別として
考えるのではなく最終的に何を得るために
その行動をしているのか
を確認することが重要です。
目次
1.見た目が違っても同じ結果ならまとめて考える
例えば親に来てほしい子供が
- 「ママ」と言う。
- 親を見る。
- 親の服を引っ張る。
- 大声を出す。
- 物を投げる。
という行動をするとします。
それぞれの行動の後に
- 親が近づく。
- 話しかける。
- 一緒に遊ぶ。
という結果が起きているのであれば
見た目は違っていても
親からの関わりを得るという点では
共通しています。
そのため家庭では「叩く行動を減らす」
だけではなく叩く前後にどのような行動が
起きているかも確認します。
2.一つの問題行動だけを減らしても別の行動が残ることがある
例えば動画要求で
- 大声を出す。
- 親を叩く。
- 自分でスマホを取る。
という行動があるとします。
親を叩く行動だけを減らせたとしても
- 大声を出せば動画を見られる。
- 自分でスマホを取れば動画を見られる。
という状態なら動画を得るための
別の問題行動が残っています。
例えば支援前は
- 大声を出す。
- 親を叩く。
- 親が動画を見せる。
だったものが
支援後に
- 大声を出す。
- 自分でスマホを取る。
- 動画を見る。
へ変わっただけであれば
叩く行動は減っていますが
問題行動全体としては
十分に改善していない可能性があります。
一つの問題行動だけではなく
同じ目的で起きている
他の行動も確認します。
3.どの行動が一番効率よく目的を達成できているかを見る
同じ結果を得られる複数の行動があっても
全てが同じ頻度で
使われるわけではありません。
『行動分析学事典』では
機能的に等価な行動の中から
どの行動が選ばれるかには反応の効率性
が関係すると説明されています。
具体的には
- 行動するための負荷=行動の簡単さ。
- 強化の一貫性=常にご褒美を得られるか。
- 強化までの時間=ご褒美を得られるまでの時間。
等が影響します。
『はじめての応用行動分析』でも
より少ない労力でできより一貫して
より早く強化を得られる行動が
選ばれやすいことが説明されています。
例えば
- 子供が普通の声で「動画」と言う。
- 親はなかなか反応しない。
一方で
- 子供が親を叩く。
- 親がすぐ反応する。
- 動画を見せる。
という状態なら親を叩く方が
目的を達成しやすい行動になっています。
「言葉で言って」
と何度説明するかだけではなく
実際にはどの行動が最も効率よく目的を
達成できているかを確認します。
4.問題行動が強くなるほど条件を良くしない
家庭では
最初は普通に要求していたのに
要求が通らないと
徐々に行動が強くなることがあります。
例えば
- 子供が「動画」と言う。
- 親が反応しない。
- 子供が大声を出す。
- 親がまだ動画を見せない。
- 子供が親を叩く。
- 親が動画を見せる。
という流れです。
この対応を繰り返すと普通に要求するより親を叩くところまで行った方が
動画を見られる経験が増えていきます。
同じように問題行動が強くなった後に
- 動画を見る時間を延ばす。
- お菓子を追加する。
- 課題量を減らす。
- 外出予定を変更する。
- 親が長く関わる。
という対応をすると強い問題行動ほど
有利な結果を得ることがあります。
変更が必要な場合は
問題行動が起きた後ではなく
事前に条件を決めるようにします。
5.まず何のための行動なのか確認する
同じ大声でも
- お菓子を得る。
- 動画を見る。
- 親に来てもらう。
- 課題を終わらせる。
等、場面によって
結果が違うことがあります。
そのため大声という見た目が同じだから
毎回親が同じ対応をするとは限りません。
『はじめての応用行動分析』では
問題行動を置き換える行動は
元の問題行動と同じ機能を持ち
同じような強化を得られる必要があると
説明されています。=代替行動分化
家庭では
- 問題行動の直前に何が起きたか。
- 子供が何をしたか。
- 最終的に何を得たり避けたりしたか。
を確認します。
例えば
- 親が料理を始める。
- 子供が物を投げる。
- 親が料理を止めて近づく。
という流れなら親からの関わりを
得ることが問題行動の機能になっている
可能性があります。
6.適切行動は問題行動より使いやすくする
適切な行動を教えたとしても
- 難し過ぎる。
- なかなか要求が通らない。
- 時々しか強化されない。
のであれば問題行動が
使われ続けることがあります。
『はじめての応用行動分析』でも
代替行動分化強化(DRA)で
教える行動について
- 適切な強化を安定して得られる。
- 最初は頻繁に強化される。
- 問題行動と同程度かそれ以下の労力でできる。
ことが重要と説明されています。
例えば大声なら簡単に出せる子供へ
最初から「動画を見せてください」
という長い文章を
求める必要はありません。
子供の現在の能力に合わせて
- 親を見る。
- 発声する。
- 「動画」と言う。
- 「動画見たい」と言う。
等、少しずつ難易度を上げます。
これは
シェイピングを利用した教え方です。
7.問題行動の直後に適切な要求を言わせない
例えば
- 子供が親を叩く。
- 親が「動画って言って」と促す。
- 子供が「動画」と言う。
- 親が動画を見せる。
という対応を繰り返したとします。
親からすると言葉で要求することを
教えているように見えます。
しかし実際の流れは
- 親を叩く。
- 言葉を言う。
- 動画を得る。
となっています。
適切な要求は
問題行動を起こした直後ではなく
問題行動が起きていない時に
別に教えます。
例えば
- 子供が親を見る。
- 子供が発声する。
- 「動画」と言う。
- 親が動画を見せる。
という経験を作ります。
8.一つの問題行動ではなく行動全体を記録する
家庭で「叩く行動が減った」
だけを見ていると別の問題行動が
増えていることを見落とします。
例えば動画要求なら
- 普通に要求した回数。
- 大声を出した回数。
- 親を叩いた回数。
- 自分でスマホを取った回数。
を分けて記録します。
例えば支援前が
- 普通の要求2回。
- 大声10回。
- 叩く5回。
- 勝手に取る3回。
だったとします。
支援後に
- 普通の要求5回。
- 大声2回。
- 叩く0回。
- 勝手に取る8回。
になったのであれば叩きは減っています。
しかしスマホを勝手に取る行動が
増えています。
一方
- 普通の要求10回。
- 大声2回。
- 叩く0回。
- 勝手に取る1回。
となっているのであれば
問題行動全体が減り適切な要求へ
変わっていることが分かります。
9.最終的には問題行動を使わなくても目的を達成できるようにする
問題行動を
一つずつ減らすだけではなく
最終的には問題行動を使う必要がない
状態を目指します。
『行動分析学事典』では
機能的に等価な適切行動を教え
望ましくない行動を
使わなくても済むようにする考え方が
機能的コミュニケーション訓練(FCT)
等に発展していることが
説明されています。
家庭では
- 問題行動によって目的を達成できる状態をなくす。
- 問題行動をしていない状態を増やす。
- 適切行動を少しずつ教える。
- 適切行動によって目的を達成できるようにする。
という順番で考えることができます。
一つの問題行動を
別の問題行動へ変えることが
目的ではありません。
必要な時には適切な方法で要求し
問題行動を使わなくても生活できることを
目指します。
実践例
子供は親が家事をしている時に
親へ来てもらうため
- 「ママ」と言う。
- 親を見る。
- 服を引っ張る。
- 大声を出す。
- 物を投げる。
という行動をしていました。
観察すると
- 子供が「ママ」と言う。
- 親は家事を続ける。
- 子供が服を引っ張る。
- 親は「待って」と言う。
- 子供が大声を出す。
- 子供が物を投げる。
- 親が家事を止めて子供へ近づく。
- 親が長く話しかけたり一緒に遊んだりする。
という流れが繰り返されていました。
この場合「ママ」と言うより
物を投げる方が親からの関わりを
早く確実に得られています。
そこでまず
- 大声。
- 服を引っ張る。
- 物を投げる。
という問題行動によって親から長く
関わってもらえる状態をなくします。
次に問題行動が起きていない時に
不定期に親が子供へ近づきます。
- 短く話しかける。
- 少し一緒に遊ぶ。
- くすぐって喜ばせる。
等関わりを行います(他行動分化強化)。
問題行動が減ってきた後に適切な要求を
少しずつ教えます。
例えば
- 親を見る。
- 発声する。
- 「ママ」と言う。
- 「来て」と言う。
というように子供の能力に合わせて
難易度を上げます。
適切な要求ができた時には可能な場面では
親が短時間関わります。
記録する時も
- 普通に要求した回数。
- 服を引っ張った回数。
- 大声を出した回数。
- 物を投げた回数。
を分けて確認します。
最終的には強い問題行動を使わなくても
必要な時に適切に要求できる状態を
目指します。
参考文献
日本行動分析学会編
『行動分析学事典』丸善出版
P.A.アルバート/A.C.トルートマン著
佐久間徹・谷晋二・大野裕史訳
『はじめての応用行動分析』二瓶社
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