自閉症児の減っていた問題行動が別の場所で戻る〜ABAの復元効果〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に
- 親の腕を引っ張らずに、名前を呼ぶ。
- 使いたい物を奪わずに、貸してと伝える。
- 道具を投げずに、手伝ってと頼む。
等の適切行動を教えることがあります。
練習した場所では問題行動が減り
代わりの伝え方を使えていたにも関わらず
別の場所へ移ると
以前の行動が戻ることがあります。
この時、親の対応が間違っていた
家庭での練習が無駄だった
と判断する必要はありません。
行動分析学事典の242〜243ページでは
環境の変化によって
消去されていた反応が再び現れる現象を
復元効果と説明しています。
消去とは行動を維持していた結果を
その行動の後に与えなくする手続きです。
問題行動への対応を変えずにいても
場所等が変わったことで
行動が再び現れる場合があります。
私は、復元効果が起きたこと自体を
家庭療育の失敗とは考えません。
家でできるようになったことと
家以外でも同じようにできることを
分けて考える必要があるからです。
目次
1.前回の消去誘導性復活との違い
前回の消去誘導性復活では
代わりに教えた行動への強化が
得られなくなったことに注目しました。
例えば
親を呼べば応じてもらえていたのに
呼んでも応じてもらえなくなり
以前の叩く行動が戻る場合です。
今回の復元効果では
行動する場所等の変化に注目します。
代わりに覚えた伝え方には
引き続き応じていても環境が変わると
以前の問題行動が戻ることがあります。
以前その行動をしていた場所へ
戻った時だけでなく
消去を行った場所とは違う
新しい場所でも起こり得ます。
ただし家庭では、場所の変化と一緒に
親の対応や課題の難しさも
変わっていることがあります。
行動が戻ったという結果だけでは
どちらの現象かを判断できません。
2.家庭での習得と家庭外への般化を分ける
家で教えた行動が
別の場所でも使えるように広がることは
般化の一つです。
家で完璧にできるようになっても
園や学校、祖父母の家で
同じ行動を取るとは限りません。
家では自分から手伝ってと言えても
別の場所では言わずに
以前のように物を投げることもあります。
家庭でできるようになったことと
その行動が家庭外でも使えることは
別に確認する必要があります。
2018年のSainiらの研究では
家庭での行動を確認した後
療育施設で専門家が
適切な伝え方を教えました。
その後、保護者が家庭で
同じ治療手続きを実施すると
4人中3人で、復元効果と一致する
問題行動の再出現が見られました。
この研究では
場所と担当する大人の両方
が変わっています。
場所だけ、担当者だけの影響とは
分けて判断できません。
また、家庭外でできないことを
すべて復元効果と呼ぶべき
ではありません。
復元効果は消去によって減っていた行動が
環境の変化で再び現れる現象です。
単に新しい場所で覚えた行動を使えない
場合も般化の課題として分けて見ます。
3.場所と一緒に何が変わったかを見る
家で起きなかった行動が
祖父母の家で起きたとします。
この時は、場所の名前だけでなく
そこでの具体的な条件を確認します。
- 関わる大人が変わっていないか。
- 取り組む物や課題が難しくなっていないか。
- 待つ時間が長くなっていないか。
- 適切に要求しても応じてもらえていないか。
- 問題行動の後に要求を叶えていないか。
例えば、家ではブロックを渡して
手伝ってと伝えれば
親が必要な部分を外していたとします。
祖父母の家では、その伝え方に
気づいてもらえていないなら
場所だけでなく
要求した後の結果も変わっています。
また、投げた後にだけ
大人が手伝うようになっていれば
投げる行動が再び強化される可能性
があります。
環境が変わったことで行動が戻ったのか。
戻った後の対応によって続いているのか。
この二つを分けて見ます。
もう一つ多いのは
子供の適切行動を待たずに
子供の要求に答えてしまうことです。
子供がお菓子を持っただけで
あげてしまう場合は「ちょうだい」
と言う行動が強化されず
無言でお菓子を持ってくる行動が
強化されます。
4.親はまず家で問題なく過ごせることを目指す
私の家庭療育では
復元効果を起こさないこと自体を
目標にはしません。
親は、家庭療育に取り組む時には
家だけ問題を起こさなければよい
と考えるぐらいが
ちょうどよいと思います。
家以外の行動はどうしても
不確定要素が多くなるので
家で練習したとしても
必ず改善できるとはいえないからです。
そうは言っても
家での行動改善がされた場合は
それに伴い家以外での行動が改善すること
が多いので
家での行動改善を中心に
考えていきましょう。
実践例
子供が、つながったブロックを
親に外してもらう場面です。
以前は家でブロックを
無言で親に持たせると
親が外していました。
その後ブロックを親へ渡して
手伝ってと伝えることを教えました。
無言で渡してくることによっては
外してもらえなくなり
家では無言になることが減りました。
祖父母の家で遊んだ時
親は同じ対応を続けているのに
再び無言で祖父母にブロックを渡す
行動が復活しました。
この場合、家庭での練習が
失敗だったとは考えず
次のように確認します。
- ブロックを持ってきた時に子供はすぐに自分から親に「外して」と言えているか。
- ブロックを親に手渡す前に「外して」と言えているか。
- 親は無言で子供がブロックを渡してくる時に受け取らない等してヒントを与えていないか
復元効果を防ぐためだけに
祖父母の家でも同じ練習を
繰り返すことを目標にはしません。
このように外の行動でできない時は
家の基準を見直して練習をしますが
それでも改善しないこともあります。
ですが家で問題なく適切行動ができている
場合は気にしすぎることをやめましょう。
参考文献
日本行動分析学会編 2019年。
行動分析学事典
丸善出版。
消去後の反応再出現、242〜245ページ。
復元効果の説明は242〜243ページ。
Valdeep Saini、William E. Sullivan、
Emily L. Baxter、Nicole M. DeRosa、
Henry S. Roane 2018年。
Renewal during functional communication training
Journal of Applied Behavior Analysis, 51, 603–619.
DOI 10.1002/jaba.471。
メルマガをしています。





