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自閉症児の減っていた問題行動が戻る〜ABAの消去誘導性復活〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に

  • おもちゃを取らずに、貸してと伝える。
  • 大声で叫ばずに、親を呼ぶ。
  • 物を投げずに、開けてと頼む。
  • 課題から離れずに、手伝ってと伝える。

等を教えることがあります。

代わりの伝え方を覚えたことで
以前の問題行動が減っていたのに
しばらくして戻ることがあります。

この時は子供の行動だけでなく
新しく覚えた伝え方をした後に
何が起きているかも確認します。

行動分析学事典の244〜245ページでは
ある行動が強化されなくなると
以前に強化されていた別の行動が
再び現れることを
消去誘導性復活と説明しています。

例えば、以前は親を叩くと
親が振り向いてくれていた子供が
親を呼ぶ方法を覚えたとします。

親が呼び掛けに応じるようになり
叩くことが減っていたのに
呼んでも応じてもらえなくなると
以前の叩く行動が戻ることがあります。

以前の問題行動に
再び同じ結果を与えていなくても
起こることがある現象です。

叩くことへの対応だけでなく
呼び掛けへの対応が変わっていないかを
見る必要があります。

要求を伝える練習だけでは
断られた時の対応まで身につきません。
待つことと、断られた要求を諦めることも
教えていきます。

1.再び起きた行動をすべて同じ理由にしない

行動を維持していた結果を
その行動の後に与えなくする手続きが
消去です。

以前扱った自発的回復も
減っていた行動が再び現れる現象です。

行動分析学事典の242ページでは
消去後に時間をおいて
反応する機会を作ると
再び行動が現れることが
説明されています。

今回見る消去誘導性復活では
代わりに教えた行動への強化が
得られなくなったことに注目します。

以前の問題行動と代わりの行動で
それぞれ何が得られていたか
最近、その結果が変わっていないかを
確認します。

叩くことが再び起きたという結果だけで
消去誘導性復活と
判断することはできません。

課題の量や難しさ、待ち時間等が
変わっていないかも見ます。

2.覚えた伝え方に応じられているかを見る

問題行動の減少だけを見ていると
代わりの行動への対応が
減っていることを見落とします。

例えば、子供が親を呼んでも
返事だけで終わり
必要な手助けをしていない場合です。

手助けを求めて呼んでいるなら
親が返事をするだけで
求めた結果が得られているとは
限りません。

まずは適切に伝えれば
要求が通る経験を作ります。
その伝え方が安定してから
すぐには通らない場面も教えます。

行動の後の結果によって
その行動が増えているかを
強化の考え方で確認します。

2009年のVolkertらの研究でも
自閉症や発達障害のある子供を対象に
教えた伝え方への強化を止めたり
急に得られにくくしたりした時に
以前の問題行動が再び現れる例が
報告されています。

ただし、全員に同じように
起きたわけではありません。pmc.ncbi.nlm.nih.gov

3.要求が通るようになったら一旦待つ

私の家庭療育では、要求が安定したら
練習対象にした遊びの要求にはその都度
「ちょっと待ってね」と伝え
一旦、すぐに応じることを止めます。

ここで扱うのはおもちゃや
おやつ以外のお菓子の要求等です。

水分、排泄、痛みや危険を知らせる要求を
断る練習にはしません。

最初は既に待てる短い時間から始めます。

その間に再度の要求や癇癪がなく
待てたら要求に応じます。

今すぐ叶えてもらおうと繰り返さず
一旦待てることを教えます。

難しい場合は感情のコントロールが
まだ下手な可能性が高いです。

並行して着席や起立等のクールダウンの
練習をします。

2014年のHanleyらの研究でも
要求の仕方を教えた後に
待つことや断りを受け入れる反応を教え
段階的に待つ場面を延ばしています。

ただし研究では、すぐに応じる機会も残しています。practicalfunctionalassessment.com

4.待てるようになったら時折断る

短い待ち時間に再要求や癇癪が出なくなり
別の機会にも待てるようになったら
時折要求を断る場面を作ります。

待つことだけを教えていると
待てば必ず要求が通るという経験
になります。

要求してもその時にはできないことも
教える必要があります。

例えば追加の遊びができない時は
「今日はもうおしまい」と短く伝えます。

待った後に応じるのか
今回は応じないのかを明確にします。

一度断った要求は
繰り返し頼んだり癇癪を起こしたりしても
そのために決定を変えて叶えることはしません。

その要求を諦められない場合も
要求には応じず落ち着くことを促します。

5.伝え方と断られた後の行動を記録する

記録では、問題行動だけでなく

  • 自分から適切に要求できたか。
  • 待つよう伝えたか、今回は断ったか。
  • 再要求や癇癪なく待てたか。
  • 断られた後に別の活動へ移れたか。
  • 親が最初に伝えた通りに対応したか。

を確認します。

断った後に癇癪が起きて
その要求を叶える対応が続けば
癇癪が再び強化される可能性があります。

行動が戻ったきっかけと
その後も続くきっかけを分けて見ます。

待つ時間を延ばすことと
要求を断る機会を増やすことを
一度に進めないようにします。

実践例

子供が、おもちゃの入った容器を
開けてもらう場面です。

以前は容器を投げると
親が拾って開けていました。

その後、容器を親へ渡して
「開けて」と伝えることを教え
投げることは減っていたとします。

まずは要求が安定したことを確かめ
次の順番で進めます。

  1. 子供が自分から「開けて」と伝えたら、「ちょっと待ってね」と応じる。
  2. 子供が既に待てる短い時間だけ待つ機会を作る。
  3. 再要求や癇癪なく待てたら、容器を開けて遊べるようにする。
  4. 再要求や癇癪によって予定を早めて応じない。難しい場合は落ち着くことを助け、待った後に応じる約束に沿って、安全に受け取れる状態で渡す。次の機会は待ち時間を短くする。
  5. 別の機会にも待てるようになったら、遊びを終了する場面等で、時折「今日はもうおしまい」と断る。
  6. 断った要求は叶えず、子供が別の活動へ移れるようにする。
  7. 適切な要求、待てたか、断りを受け入れられたか、親の対応を記録する。

待つよう伝えた場面では待った後に遊べます。
今回は終わりと伝えた場面では
要求を続けても遊びは追加しません。

自傷や他害が強まる場合は練習を続けず
安全を確保して、支援者と進め方を見直します。

参考文献

日本行動分析学会編 2019年。
行動分析学事典
丸善出版。
消去後の反応再出現、242〜245ページ。
自然回復は242ページ。
消去誘導性復活は244〜245ページ。

Valerie M. Volkert、Dorothea C. Lerman、
Nathan A. Call、Nicole Trosclair-Lasserre 2009年。
An Evaluation of Resurgence During Treatment with Functional Communication Training
Journal of Applied Behavior Analysis, 42, 145–160.
DOI 10.1901/jaba.2009.42-145。

Gregory P. Hanley、C. Sandy Jin、
Nicholas R. Vanselow、Laura A. Hanratty 2014年。
Producing meaningful improvements in problem behavior of children with autism via synthesized analyses and treatments
Journal of Applied Behavior Analysis, 47, 16–36.
待つことと断りへの対応を教える手続きは23〜24ページ。
DOI 10.1002/jaba.106。

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