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子供が「自閉症で一生話せません」と言われたらどうすればいい?

(出典:PhotoAC

 子供に発達の遅れが見られると、医師や心理士の診断を受けることとなります。発達障害と診断される流れは以下の記事を参照してください。

 医師や心理士には発達検査や直接観察を元に、診断名を出します。『自閉症スペクトラム障害』、『自閉症スペクトラム障害の疑い』と診断名と公的療育を利用することをお勧めされる他、以下のようなことを言われることが多いです。

  • これから発達が追いつくことはありえません。
  • 普通の子供と思わないほうがよいです。
  • 脳の障害だから一生治らないです。
  • 治療法はありません。

 これら全ては親にとって大変ショッキングな言葉です。ですが、最も親に絶望を与える言葉は

「この子は一生話せません」

と言われてしまうことです。特に医師に言われてしまうと、ショックは大きいと思います。本日はこの言葉は正確なのか、どう対処していけばよいかを説明していきます。

診断名を受けた時点で生涯にわたる発達を予測することは可能か

(出典:看護Roo

 前述の通り、自閉症と診断されると「一生話すことができない」と言われることがあります。まずは、自閉症と診断されるのは何歳ぐらいが多いのでしょうか?

日本の診療データを使用して ASD の診断年齢を種別に検討した.結果,解析対象者(7,779 名)の診断年齢は平
均 7.3±4.3 歳,最頻値 3.0 歳,中央値 6.0 歳であった.

日本における自閉症スペクトラム障害の診断年齢―種別の検討―,2018

最も診断されることが多い時期は3歳ということでした(最頻値)。論文で説明されていますが、これは3歳児検診のスクリーニングにより発見されたケースが多いためとされています。診断名がついた時の年齢が高い子供はコミュニケーションの遅れなどはあるものの、話す能力等は持ち合わせているため、時期が遅くなったと推測されます。

 では、3歳の時点で将来の発達を予測することは可能でしょうか。「3歳 無発語」で論文を調べてみます。

  全てではありませんが、言語訓練の論文がかなり含まれています。他にも様々な論文で3歳以降で無発語の状態から発語を教えることに成功しています。例えばこちら。

ABAの方法の一つ、PRTの解説動画です。こちらでは以下のようにPRTの言語訓練の効果を説明しています。

  これを見ると、確かに3歳以前に開始すると発語を出せる可能性が一番高いですが、3歳~5歳にスタートしても、82.5%あります。つまり、これは3歳までは無発語の状態の子供が発語が出るようになったということです。5歳以降でも20%の確率で話せるようになっているので、3歳までに話せないからといって一生話せないと言い切れるわけではないことが分かります。ただし、ここでは発語が出せるとは説明されていますが、定型発達児者と同じような流暢性で話せるようになることを保証している訳ではないのは注意すべき点です。ですから、「一生話せない」と言っていた者の前に有意味発語が出せるようになってから面談しても「でもまだすらすらと話せないじゃない」といったクレームを受けることがありますが、「一生話せない」訳ではなかったので、今後は何を言っても信用に値しない言葉だと思います。

 幼少期の時点で一生話せない可能性が比較的高いのは

  • 声を発する部位の問題
  • 脳の言語をつかさどる部分の問題

といった器質的な問題に限られると思います。

なぜそのようなことを言うのか

(出典:illustAC

  このように、診断名を付けた時点では将来の予測が困難にも関わらず、なぜ診断名をつける者はそういったショッキングな言葉を使うのでしょうか。私は以下のように感じます。

  1. 診断名をつけることだけに特化しているから
    診断名をつける者は、実際の支援には携わっていないです。ですから、現時点での能力の評価はできますがどのように発達していくか、どのような支援をしていくべきかに関しては全くの無知です。診断名をつけるためだけに発達検査、行動観察をしているので子供の粗さがしをしがちです。例えば、発達検査ではできないこと、発達の遅れだけを説明してその子の得意なことを説明してくれません。また、ミニカーを並べて遊んでいるのを見るだけで「ほら、自閉症の特性が出ていますね」といったことを言います。私はこれらの方は、集団の中から問題のある子供だけを発見することはできないのではないかと考えます。つまり、子供の行動を客観的に判断しているわけではなく、発達相談に来ている子供だから遅れがあることが当然というスタンスでいる可能性が高いということです。
  2. 能力を向上させる方法を知らないから
    特に医師はABAを知りません。ですから、自閉症はあるがままを受け入れて発達の遅れ等はあきらめることと考えることが普通になっています。これは、公的療育でも同様です。その証拠に、発達相談をした時に「家で何をやればよいか」と聞いても具体的な支援方法は教えてくれず「いっぱい話しかけてください」「いろんな経験をさせてください」「視覚支援を使っていってください」といった漠然としたアドバイスしかくれません。

 つまり、まとめると診断名を受けた子供のその後の支援にほぼ関わっていないので、その後の子供がどうなろうが知ったことではないということです。自閉症児の親も、診断名をつける人は今後に高頻度で会う人ではないので基本的には何を言われても聞き流しておいてよいと思います。

医師に子供が一生話せないと言われたらこう考えよう

(出典:PhotoAC

 では子供が「一生話せない」と言われたらどのように考えたらよいでしょうか?私はこれをポジティブに考えるのであれば、「このままだとガンになりますよ」という脅し文句と同じ意味でとらえるのが良いと思います。つまり、がんに絶対になるわけではないけど今の時点で生活習慣を変えたほうが良いという意味です。同様に、子供の場合も「ほっといても話せるようになる可能性はゼロではないけれど現時点で療育を開始したほうが良い」ということです。確かに3歳まで無発語の状態はABA的にもすぐに療育を開始したほうが良いです。療育のベストタイミングは「2歳以降で行動の遅れに気づいた時点で」ということです。自閉症児の詳しい言語訓練法は以下の記事にまとめてあります。

 診断名とは、現状を表している言葉ではありますが、今後の一生を占うものではありません。診断を受けた時に言われた言葉にあまりショックを受けずに、できることを延ばしていこうとする姿勢が大切です。

一生話せませんと言われた後はどうすればよいのか

(出典:GAHAG

 では、「一生話せない」と言われた後はどうすればよいでしょうか?NGとなるのは勧められるままに子供を公的療育に連れていくことです。こうすると公的療育→特別支援学校→作業所の進路がほぼ決まります。これが必ずしも悪いわけではないですが、この流れですと子供のよりよい行動を引き出すことなく生活していくことになります。「障害を受け入れて生きていく」という考え方はまだまだ日本の療育でのメインの考え方です。子供の能力を伸ばすことは、親及び子供のQOLの向上につながります。子供もできることが増えるほど行動の自由度があがります。例えば、大声で叫んでしまう子供は室内の施設に連れていくことができません。泣いてしまう子供は新幹線に乗ることが難しいです。このように、定型発達児の子供であればできて当たり前の行動ができないことで行動に制限を受けてしまうことが多いのです。ですから、できるだけ子供の能力を伸ばしていけるようにしましょう。

 支援の中心となるのはABAです。身の回りにABAセラピストを探してどのように支援をしたらよいかを相談してみましょう。その時に

  • 日常の中での具体的な支援方法
  • 親支援の方法
  • 実現可能な目標の設定

ができるようでした、それは信頼できるセラピストです。指導を受けて子供の能力を伸ばしていきましょう。

まとめ

(出典:PhotoAC

 このように、子供に診断名をつける人は時に辛らつな言葉を親にかけてきますが、気にしないようにしましょう。彼らは、あなた方の大切な子供の将来に何ら興味がないのです。子供の将来のために必死になってくれる人、それは親です。親が考えて子供にとって一番幸せな人生が歩めるように支援を考えていきましょう。

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