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自閉症スペクトラム障害児が話せない理由及び言語トレーニング

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 言葉に遅れがある自閉症スペクトラム障害児の言語トレーニングはどのようにすすめていけばよいでしょうか。説明していきます。

自閉症児のみが言葉が遅れるわけではない

 言葉の遅れ自体は、自閉症スペクトラム障害の診断名に関係なく発生します。言語の遅れのみがある場合は、「発達遅滞」「知的障害」「言語障害」といった診断名がつきます。ですが、日本では基本的に言語に遅れがある時点で「自閉症スペクトラム障害の疑い」という診断がつくことが多いです。ですから「言葉の遅れ=自閉症スペクトラム障害」ということが一般的になっています。

なぜ自閉症は言葉が遅れるか

 ではなぜ自閉症スペクトラム障害児は言葉が遅れるのでしょうか。それはアイコンタクトを含めた自閉症スペクトラム障害児の特性が関連しています。自閉症スペクトラム障害児のアイコンタクトに関しては下記のページを参照してください。

 上記のように、自閉症スペクトラム障害児は、生まれつき

  • 他人の視線を参照しない=他人に興味がない
  • 他人の行動を自然に真似しない=他人に興味がない

という特徴があります。これらの症状があると、「他人からのほめ言葉や笑顔が好子(ご褒美)として機能しない」ということが起こります。これが言葉の獲得に深刻な問題を起こします。

基本的に人間の行動が増えるのは、

  1. 行動の結果、人にとって快な刺激を得られた場合
    行動の結果、お菓子、ビデオ、他人からの注目等、行動した者にとってご褒美となるような物・事(好子や強化子と呼ばれます)を得られた場合です。
  2. 行動の結果、人にとって不快な刺激を避けられた場合
    行動の結果、叱責、注射、騒音等、行動した者にとって嫌な物・事(嫌子や弱化子と呼ばれます)を避けられた場合です。

という2つのパターンがあります。言葉の獲得は1の原理を中心としてなされます。定型発達児の場合、以下のように言葉は発達していきます。

 喃語というのは通常赤ちゃんの時に見られる泣き声ではない、でも言葉にならない言葉です。映像で確認してみてください。

 言葉が発達すると相対的に泣いたりして要求する代わりに言葉で要求することが増えていきます。

 このように、言葉が発達すると泣くことよりも言葉で要求することのほうが難易度が低いため、段々と言葉が増え、泣くことが減っていきます。

 では、自閉症スペクトラム障害児の場合はどうでしょうか。

 このように、喃語を話しても親が褒めたり、注目したりすることが好子として機能しないため、喃語が消失するということがあります。この現象は折れ線現象と説明されます。

「セットバック」ともいわれる経過。 2 歳前後にそれまで見られたことばや対人行動が消失するエピソード。実際には それ以前から何らかの形で症状が存在し ている。小児自閉症*の子どもの親の15 ~37 % が報告している。主に生後18 ~36 か月ごろに見られ,75 % はその後, 改善 が見られる。言語の再獲得までの期間は 平均4 ~ 5 か月とされる。契機とされる ものは転居, 母親の入院, 弟・妹の誕生, 高熱などの身体病などであり,IQ の低 いケースが有意に多いとされる。

『自閉症スペクトラム障害辞典』P.18

 喃語に対して、親の注目が好子として機能しないと喃語は他の好子がないと消えてしまいます。ですが、時折ほめ言葉が好子として機能してないにも関わらず言語発達が見られる場合があります。その場合は、

  • 歌が好きで子供が勝手に真似をして歌いだすようになる
  • 繰り返し見ているテレビのセリフを子供が一人で繰り返すようになる

といったケースで言葉が自主的に増えていきます。ですが、自閉症スペクトラム障害児のほとんどの場合、喃語から発達しない、言葉が増えないという発達を辿ります。

 また、さらに厄介なのは言葉が発達しないままに成長していくと、要求手段が段々と悪化していくというケースが発生します。体が大きくなるにつれて他人を攻撃する、物を投げる、自傷行為をするといった場合に深刻性が増します。このような場合、安易に言葉で要求できないということが問題行動の継続要因の一つとなっています。

自閉症以外の言葉の遅れの原因

 自閉症スペクトラム障害児以外で言葉の遅れが発生する場合は、知的障害が原因であることが考えられます。このような子供の場合、親からの注目が好子として機能しているにも関わらず、喃語から言葉が発達していきません。これは、他人の音声を模倣する能力が低く、自然に言語を模倣していくことが難しい可能性が高いです。この場合も言語トレーニングをする必要があります。

言語トレーニングをする前に必要な能力

 言語トレーニングをする間に必要な能力は2つあります。

1.癇癪を無くす
要求時に癇癪を起しているうちは言葉のトレーニングができません。

0:21~0:54

 このように言語による要求を教えようとしても泣く、大声を出すという行動が出ているうちは、言葉の獲得ができません。前述の通り、定型発達児であれば言葉のトレーニングと癇癪の減少がいっぺんに起きます。それは、言葉で伝えるほうが子供にとって簡単だからです。
 一方、自閉症スペクトラム障害児の場合は言葉の獲得のほうが泣くことよりも簡単なため、まずは泣くことを消さないと言葉にいつまでも移行しないのです。ですから、日常生活で泣くことがなくなってから適切行動である言語を教えるようにしなければなりません。

2.アイコンタクトトレーニング
 アイコンタクトをする効果は、
・相手の口の真似をするので発音がうまくなる
・自己刺激行動を止められるので、言語トレーニングに集中させることができる
ということです。詳しくは下記のページを参照してください。

自分から話すことを教えることが重要

 言語トレーニングというと、どうしても大人の言葉を子供に模倣させることをイメージする人が多いです。このような感じです。

0:31~1:00

 このような方法の問題点は、人の言葉の真似をすることは上手になりますが、

  • 自分からは他人に話しかけない
  • 要求などの言葉を覚えない
  • 「りんごいる?」等の問いかけもすべて真似してしまう

といったデメリットが多くあります。ですから、常に重視するのは、自分から他人に自発的に言葉で話しかけることです。私はこれを「自発発語」と呼んでおり、音声模倣と分けて重視しています。自発発語が増えると要求の時、困った時等に自分から他者に言葉で要求することができるようになりますので大変使えるスキルです。

言語トレーニングの手順

 自閉症スペクトラム障害児の言語トレーニングは以下の手順で行っていきます。この順番はアイコンタクトトレーニングと全く同じです。

  1. 自発発語を増やす
  2. 要求場面での自発発語(要求)を練習する
  3. 日常的に避けられない場面での自発発語(要求)を練習する
  4. 課題場面での言語トレーニングを実施する
  5. 要求以外での日常的な場面で自発発語を練習する

 このように、まずは要求場面で練習した自発発語を日常生活で子供にメリットがない場面でも使用できるように行動を広げていきます(行動の般化)。基本的には、自然環境下のトレーニング(Natural Environmental Training :NET)を中心に実施していくと無理なく実施できます。

1.自発発語を増やす
 この段階では、日常生活で発せられた全ての言葉を好子を用いて強めていきます。この場面で重要なのは
・独り言でも構わない
・無意味発語でよい
ということです。ただし、声であればなんでもよいかというとそうではなくて、奇声、裏声は除きます。なぜかというと、これらの声は要求言語としては不適切ですので一切強化しません。この段階を続けると、一時的に独り言がたくさん増えます。その段階のうちに次の段階に行きます。

2.要求場面での自発発語を練習する
 この段階では、要求する時に発語をすることを求めます。お菓子などを置いておき、子供が自発発語をした場合は子供にあげます。

~1:05

 このように、無意味であっても要求の時に発語ができたらご褒美をあげていきます。こうすることで無意味な言葉であっても話して要求することが増えていきます。

3.日常的に避けられない場面での自発発語(要求)を練習する
 これはいただきます等の日常的に避けられない要求場面で上記のように自発発語を教えていきます。そうすることで日常の中で必ず発語を出せるようになります。

4.課題場面での言語トレーニングを実施する
 これは、発音を直すといったことをお勉強場面で実施していく方法です。

この子も3歳までは無発語でした。ですが、トレーニングを重ねることで言葉を話せるようになりました。

 こうすることで、子供に特別なモチベーションがなくても言語トレーニングをすることが可能になります。大人の暇な時に練習することが可能になります。

5.要求以外での日常的な場面で自発発語を練習する
 これは要求場面以外での言葉を習慣化していく方法です。例えば、挨拶等が挙げられます。こうすることで子供は日常的に必ず言葉を使用することができます。

 このような手順で指導を行っていきます。生まれつき言葉が話せなかったら教えればよいだけですので安心してください。具体的な手法はまたブログで説明していきます。

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