ブログ

自閉症児の癇癪行動にどう対応する?無視できるシチュエーションは?

(出典:PhotoAC

 自閉症スペクトラム障害児の親にとって、子供の癇癪は時に平穏な日常生活に支障をきたすほど大きな影響を与えます。その対応に関して、「子供の行動を一切無視をする」ということは一般的な方法の一つとして使用されています。では、実際に効果があるのでしょうか。今日は自閉症児の癇癪を無視する方法について解説していきます。

自閉症児の癇癪はいつ起きるか

  そもそも自閉症児の癇癪はいつ起きるのでしょうか?以下のパターンが考えられます。

 このような時、もしくはこれらが複合した場合に癇癪が起こります。この中で自閉症児に多いのは、1と3です。ですが、一番あると厄介なのは4です。4は前後の条件と関係なく起こってしまうことが多いからです。

自閉症児支援に使用される”無視”とは?

(出典:illustAC

  自閉症児の支援方法としては、計画的無視と呼ばれる方法があります。以下のように定義されます。

計画的無視(planned ignoring )が起こるのは、不適切な行動をしたらそれを条件として短期間、社会的強化子(通常、注目や、身体接触や、言葉による交流) を除去する場合である。計画的無視が前提とするのは、タイムイン場面が強化的であり、それ以外のすべての正の強化の源泉は除去される可能性があるということである。操作の点から見れば、計画的無視は、特定の時間、組織的に個人から目をそらす、沈黙したままでいる、どんな交流もしないことが含まれる可能性がある(Kee, Hill & Weist, 1999)。無視は、非侵入型なタイムアウト手続き(nonintrusivetime-out procedure) であり、タイミングよく迅速に適用できる長所がある。例えば、薬物更生の集団療法のセッションで、クライエントの女性が、お金を盗んで麻薬を買うことに魅力を感じると話し始めたとしよう。その時点で、グループのほかのメンバーが、目と目を合わせることを止め、彼女の言葉に一切応答しなくなり、彼女のコメントがグループの話題と一致するまでそれを続けるとすれば、計画的無視が実施されたことになる。

『応用行動分析学』P.598~P.599(クーパー、明石書店)

 このように、計画的無視は、不適切な行動をしたら支援者が注目を与えないことで問題行動を消していくことを目指します。

文献による自閉症児に計画的無視が使用できる条件

(出典:PhotoAC

計画的無視の適用できる例は文献によると以下のように説明されています。

1 .その行動は体の不調や痛みの表現ではありませんね→はい
2.その行動は発達過程の“遊び”ではありませんね→はい
3.わかりやすい指示を出していますね?与えている課題は子とともにとって難しすぎませんね→はい
4.かまってもらいたいとき、要求があるときどのようにすればよいか、伝えていますね→はい
5.その行動は注意引きや要求の不適切な手段ですね→はい
→計画的な無視を開始しよう

『お母さんの学習室』P.106(山上敏子、二瓶社)

 定義と合わせてまとめると、計画的無視が使用できる条件は以下の通りです。

 この条件ですと自閉症児の場合、大抵の場合は他者の注目がご褒美として機能しないので①の条件でYesにならないことがあり、実質的には計画無視を使用することが難しいです。また、⑥のスキルが身についていたらそもそも計画的無視を必要としないレベルになります。このように、計画的無視を言葉が話せていないような自閉症児に使うことは不可能に近いことであることがわかります。

自閉症児に対してなぜ無視が使えないか

(出典:illustAC

 自閉症児に対する計画的無視は上記のように使用条件に当てはまることがそもそも難しいということを説明しましたが、それ以外にも問題があります。

 このように、自閉症児の場合は計画的無視が失敗した場合のリスクが非常に大きいので、実施することはお勧めしません。

自閉症児の癇癪行動はどう対応したらいい?

(出典:illustAC

  では、自閉症児の癇癪行動にはどう対応したらよいでしょうか。まずは泣くことへの対応は3つに分けられます。

 ここでは、自閉症児の症状としては少ない親の注目を得るための癇癪行動への対応は説明しません。この問題の解決方法は以下のページを参照してください。

 では、それぞれの対応を見ていきましょう。

1.癇癪行動が機能しないように要求物を与えない
 これは、子供がお菓子やゲームを要求してきてもそれを与えないことにより癇癪行動を消していきます。ただし、要求物を与えないと子供の癇癪行動が長時間続いてしまうので、そのような場合は以下の方法を使用します。

 計画的無視とは違い、要求には応じないけれど無視はせずに抱っこや声掛けをするという対応を取るので、子供が落ち着きやすくなります。この対応だけでも自閉症児の日常的な癇癪は減少します。

 また、問題行動が少ない自閉症児には無視が使用できます。使用できる場合は、以下の条件の時です。

 このような条件を満たしている子供は、癇癪行動を無視しても行動が悪化しづらいので使用できます。無視のルールは以下の通りです。

  このように、自閉症児の癇癪行動を無視しても子供が自分で気持ちを切り替えられるようになると

  • そもそも泣くことがとても減る
  • 泣いても切り替えが早くなる

というメリットがあります。ですから、最終的にはこの方法で癇癪行動に対応したほうが良いです。

2.癇癪行動を無視し、行動を強制する
 ここでは、癇癪行動を無視して行動を強制させます。ですから、自閉症児から物を取りあげようとしている時に癇癪行動が起きても無視して取り上げ、お風呂に入ることを抵抗する自閉症児に対しても行動を強制することが癇癪行動を消していきます。この時のポイントは以下の通りです。

  このように、できるだけ子供の癇癪行動を起こす機会を減らし、癇癪行動が起こっても体を持って行動を強制することで気持ちを切り替えさせます。この方法は、すぐに癇癪行動が減っていくのでおすすめです。

3.落ち着いて取り組める遊びを教える
 気持ちの安定に難がある自閉症児は、落ち着いて取り組める遊びをそもそも有していない可能性が高いです。このような場合、他に選択肢がないから癇癪行動が起こるため、着席して静かに遊べる遊びを教えていきます。この方法はコンプライアンストレーニングについてのブログで説明していきます。

まとめ

(出典:PhotoAC

  このように、無視は自閉症児の癇癪行動全てに対して使用できるわけではないので注意が必要です。子供の癇癪行動が起きる時はその機能に注目して対応することで必ず良くなっていきます。癇癪行動は年々酷くなっていくと行きつくところは家庭内暴力です。できるだけ年少のうちに改善できるようにしていきましょう。

Back

お問い合わせ