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親の声掛けだけで自閉症児の適切行動が増える?〜ABAのルール支配行動〜

自閉症児に

  • 「道路には飛び出さない」
  • 「人の物は勝手に取らない」
  • 「動画は30分で終わり」
  • 「お菓子は一日一個」

等のルールを教えることがあります。

子供が「分かった」と答えたり
ルールを言葉で説明できたりしても
実際には守れないことがあります。

ABAでは「○○したら△△になる」等
行動と結果の関係を
言葉で示したルールによって
行動が変わることを
ルール支配行動(rule-governed behavior)
と呼びます。

例えば
「道路へ飛び出すと車にひかれるから止まりましょう」
と教えられ実際に車にひかれた
経験がなくても止まるという行動です。

自分で結果を直接経験していなくても
言葉によって行動を変えられることが
ルール支配行動の大きな特徴です。

ただしルールを説明すれば
その通りに行動できる
というわけではありません。

ルール支配行動を利用するには

  • 言葉を理解できる。
  • 大人の指示に従える。
  • ルールに沿った行動を実際に行える。

というスキルも必要になります。

1.ルールは行動と結果の関係を事前に伝える

ルールでは
どのような場面で何をすると
どのような結果が起きるのか
を事前に伝えます。

例えば

「玩具を片づけたら次の玩具を出せる」
であれば

  1. 玩具を片づける。
  2. 次の玩具を使える。

という関係です。

「20時になったらゲームを終わる」
であれば

  1. 20時になる。
  2. ゲームを終了する。

という関係です。

まだ結果を直接経験していなくても
ルールを聞いたことで
行動が変わることが
ルール支配行動の特徴です。

2.直接経験によって形成される行動とは異なる

ルール支配行動と
分けて考える必要があるのが
実際の結果を経験して
形成された行動です。

例えば

  1. 熱い鍋を触る。
  2. 熱い。
  3. 次から触らなくなる。

という場合です。

これは自分の行動の後に
起きた結果を経験することで
行動が変わっています。

一方で「この鍋は熱いから触らないで」
と教えられ一度も触らずに
避けられるのであればルールによって
行動しています。

ルールが使えると

  1. 交通事故。
  2. 火傷。
  3. 危険な高さからの転落。

等実際に経験させることが
できない結果についても
事前に行動を変えられます。

また

  • 勉強。
  • 健康管理。
  • 貯金。

等のように結果がかなり後になって
現れる行動にもルールを利用できます。

3.言葉を理解できない場合はルール支配行動を使いにくい

ルール支配行動を利用するには
大人から伝えられた言葉を
理解できる必要があります。

例えば
「道路へ飛び出すと車にひかれるから止まる」
というルールでは

  • 道路。
  • 飛び出す。
  • 車にひかれる。
  • 止まる。

という言葉だけでなく
自分がこれから行う行動と
その後に起きる結果の関係を
理解する必要があります。

そのため

  • 年齢が低い子供。
  • 知的障害がある子供。
  • 言葉の理解が難しい子供。

ではルール支配行動を
利用することが難しい場合があります。

言葉によるルールが
まだ利用しにくい子供では

先に実際の随伴性によって
行動を教えます。

その後言葉の理解が高くなったら

  • 「片づけたら次」
  • 「靴を履いたら外」

等の短いルールを加え言葉だけでも
行動できるか確認します。

ルール支配行動は全ての自閉症児に
同じように使えるわけではありません。

4.ルール支配行動にはコンプライアンスが必要になる

ルール支配行動と大人の指示に従う
コンプライアンス
密接に関係しておます。

例えば親が「玩具を箱に入れて」
と伝えた場合です。

子供が玩具を
箱へ入れなかった場合

  1. 指示の意味を
    理解していない。
  2. 意味は理解しているが
    指示に従っていない。

という二つの可能性があります。

しかし普段から

  • 「座って」
  • 「立って」
  • 「持ってきて」

等の簡単な指示にも
ほとんど従わない状態では

  • 理解できないのか。
  • 理解しているが従っていないのか。

区別することが難しくなります。

そのため複雑なルールを教える前に
コンプライアンストレーニングを
行います。

子供が一人でできる

  • 着席。
  • 起立。
  • 物を持ってくる。
  • 決めた場所へ置く。

等の簡単な行動で

  1. 大人が一回指示する。
  2. 子供が行動する。

という関係を先に作ります。

コンプライアンスが安定していれば
新しいルールで行動できなかった場合に

  • 言葉の理解の問題か。
  • ルールに従う行動の問題か。

を判断しやすくなります。

5.ルールを言えることと守れることは別である

子供に「道路に出る時は?」と質問すると
「止まる」と答えられることがあります。

しかし実際には道路へ近づくと
そのまま走り出すことがあります。

同じように
「友達のおもちゃを使いたい時は?」
と聞けば
「貸してって言う」と答えられても
実際には取り上げることがあります。

質問に正解することと
実際にルールへ従うことは別の行動です。

確認することは実際の場面で
適切な行動が起きたかです。

6.ルールは具体的で少なくする

ルールは実際に何をすればよいのか
分かることにします。

例えば

  • 「いい子にして」
  • 「ちゃんとして」
  • 「人に優しくして」
  • 「迷惑をかけないで」

では何をするのか明確ではありません。

代わりに

  • 「ここで止まる」
  • 「順番を待つ」
  • 「使いたい時は『貸して』と言う」
  • 「話す前に手を挙げる」

等の具体的な行動として決めます。

また
ルールを増やし過ぎないことも重要です。

  • 走らない。
  • 触らない。
  • 立たない。
  • 大声を出さない。
  • 勝手に取らない。
  • 投げない。

等大量のルールを作っても子供も大人も
管理しにくくなります。

最初は少ないルールにして
2週間連続して守られたら
新たなルールを追加しましょう。

7.ルール違反が多い場合は先に違反をなくす

ルールを何度説明しても同じ違反が
繰り返されることがあります。

例えば

  • 勝手にスマホを取る。
  • 冷蔵庫からお菓子を取る。
  • 他児の玩具を
    取り上げる。
  • 椅子の上へ立つ。

という行動です。

この状態で

  • 「駄目だよ」
  • 「約束したよね」
  • 「ルールを守って」

と何度説明してもルール違反そのものを
繰り返し経験しています。

この場合は先に
ルール違反を起こさないようにします。

例えば

  • スマホを手の届かない場所へ置く。
  • お菓子を自由に取れないようにする。
  • 危険な使い方をする物は使わせない。

等です。

まず

  1. ルール違反をする。
  2. その結果目的を達成する。

という経験をなくします。

8.ルール違反をなくしてから適切な行動を教える

ルール違反を起こせない状態にした後に

ルールを教えます。

例えば親のスマホを
勝手に取る子供であれば

  1. 最初にスマホを取れない場所へ置き勝手にスマホを取る行動が起きない状態を作る。
  2. その間に着席、起立等のコンプライアンスを教える。
  3. 「スマホは勝手に取らない」というルールを教える。

という順番で教えます。

その上で

  • スマホが見えていても取らずに待つ。
  • 許可された時だけ使う。
  • 終了したら返す。

という行動を練習します。

順番は

  1. ルール違反をなくす。
  2. コンプライアンスを教える。
  3. ルールを伝える。
  4. 適切な行動を実際に行わせる。

です。

ルール違反を続けさせながら
言葉だけで修正しようとしないこと
が重要です。

9.ルールと実際の結果を一致させる

「プリント三問やったら動画を見よう」
と伝えたのに

  • 一問で動画を見せる。
  • 五問やらせる。
  • その日は動画を見せない。

という対応ではルールと実際の結果が
一致しません。

子供へルールを教える時は

伝えた条件=ルールと実際に起こる結果を
一致させます。

最初は子供が簡単に
達成できるルールにします。

例えば
「一問終わったら動画」から始めます。

安定したら二問、三問と基準を上げます。

ルール通りに行動すると実際に
伝えられた結果が起きるという経験を
繰り返します。

10.問題行動の後にルールを変更しない

親が「動画は30分まで」と決めた後に

  • 子供が泣く。
  • 大声を出す。
  • 親を叩く。

という行動をしたため「あと10分だけ」
と変更することがあります。

この対応を繰り返すと
最初に決めたルールよりも
問題行動を起こせば条件を変更できる
と学習する可能性が強くなります。

  • 動画を見る時間。
  • お菓子の量。
  • 課題量。
  • 外出する場所。

等を変更する場合はルールを伝える時に

問題行動が起きる前に変更します。

問題行動が起きた後に
子供にとって有利に
ルールを変更しません。

11.複雑な例外が理解できない場合は教えない

子供によっては同じ行動でも

  • この場所ならよい。
  • この人ならよい。
  • この時間ならよい。
  • 今日は特別によい。

という例外を
理解できないことがあります。

例えば

  • 家の椅子では立って遊んでよい。
  • 園の椅子では立ってはいけない。

という違いを理解できない子供では
椅子に立つ行動自体を
教えない方が簡単です。

同じように

  • 父親とは叩き合う遊びをしてよい。
  • 友達を叩いてはいけない。

という違いを理解できない場合は
人を叩く遊び自体を
行わない方が安全です。

12.ルール通りに行動できる子は自己管理へつなげる

言葉の理解が高く

  • 時間。
  • 予定。
  • 将来起こる結果。

を理解できる子供ではルールを自己管理へ
つなげることができます。

例えば
「20時になったらゲームを終了する」
というルールなら最初は
親から言われてゲームを終了します。

次に

  • 時計を見る。
  • 20時を確認する。
  • 自分で終了する。

というように最終的には
大人から毎回ルールを言われなくても
自分で確認して
行動できることを目指します。

実践例

子供は横断歩道へ近づくとそのまま道路へ
走り出すことがありました。

親から「道路では止まる」
と教えられており
「道路に出る時は?」と質問すると
「止まる」と答えることはできます。

しかし実際の場面では
止まりませんでした。

まず子供だけで
道路へ出られないようにします。

親が必ず

  • 子供と道路の間に立つ。
  • 手が届く距離を維持する。

という環境にして道路へ飛び出す行動を
実際に起こさせません。

その間に家庭等の安全な場所で

  • 「止まって」
  • 「来て」
  • 「座って」
  • 「立って」

等の簡単な指示へ従う
コンプライアンストレーニングを
行います。

一回の指示で「止まって」
に従えるようになった後に
道路でのルールを練習します。

  1. 親と一緒に歩く。
  2. 道路の手前へ来る。
  3. 親が「道路では止まる」と伝える。
  4. 子供が止まる。
  5. 左右を確認する。
  6. 親と一緒に渡る。

という流れです。

最終的には「道路では止まる」
というルールによって
実際に危険な経験をしなくても
道路の手前で
止まれることを目指します。

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