自閉症児にノリノリで行動してもらうために〜ABAの高確率指示連鎖〜

自閉症児に指示を出した時に
- 簡単な指示には従う。
- 好きな活動に関係する指示には従う。
- しかし苦手な指示には従わない。
ということがあります。
例えば子供が
- 手を上げて。
- タッチして。
- コップを渡して。
といった簡単な指示には
すぐに従えるとします。
一方で
- プリントをやって。
- 歯を磨いて。
- おもちゃを片づけて。
という指示では
動かないことがあります。
このような場合に
従う可能性の高い指示を
数回続けて出した後に
従う可能性の低い指示を出す方法を
高確率指示連鎖(行動モメンタム)
と呼びます。
例えば
- 名前を言って。
- 1+1は。
- 鉛筆を持って。
と簡単な指示を出しそれぞれに従えた後に
今練習中の課題を「一問解いて」
と指示します。
指示に従う行動を
続けて起こした流れを利用して
普段は従いにくい指示にも
従いやすくする方法です。
目次
1.高確率指示とは従う可能性が高い指示である
高確率指示とは
親が簡単だと思う指示ではありません。
子供が実際に高い確率で従える指示です。
例えば
- 手を上げて。
- お名前は。
- コップを渡して。
- 一枚めくって。
- 立って。
等です。
例えば十回指示を出した時に八回以上
すぐに従えている指示であれば
高確率指示として
使いやすい可能性があります。
ただし八回という数は
絶対的な基準ではありません。
その子が普段から安定してできていること
が重要です。
2.低確率指示とは普段従いにくい指示である
低確率指示とは指示を出しても
行動する可能性が低い指示です。
例えば
- 遊びを終わって。
- 歯を磨いて。
- プリントを始めて。
- 服を着替えて。
- 片づけて。
等です。
ただし指示に従わない理由が
- 行動の方法を知らない。
- 指示の意味が分からない。
- 課題が難しすぎる。
という場合は
高確率指示連鎖だけでは
解決できません。
まず子供が
その行動を一人でできるか
確認します。
できない行動であれば
技能を教える必要があります。
できる行動なのに
指示を受けた時に始めない場合に
高確率指示連鎖を使用します。

3.簡単な指示の後に難しい指示を出す
高確率指示連鎖では
子供が従いやすい指示を
2〜3回程度出します。
例えば
- 手を上げて。
- 机を触って。
- 鉛筆を持って。
という指示です。
子供がそれぞれの指示に
従ったことを確認してから
「プリントを一問解いて」
と低確率指示を出します。
流れは
- 高確率指示。
- 高確率指示。
- 高確率指示。
- 低確率指示。
となります。
指示に従う行動が続いている間に
低確率指示を出します。
4.チェイニングとは異なる
高確率指示連鎖という名前から
複数の行動をつなげていく
チェイニングと同じ方法に
見えることがあります。
しかし目的が違います。
チェイニングでは
- 靴を脱ぐ。
- 靴をそろえる。
- 荷物を置く。
- 手を洗う。
という一連の行動を順番につなげます。
高確率指示連鎖では
- 手を上げる。
- タッチする。
- コップを渡す。
という簡単な指示の後に
普段従いにくい指示を出しますが
行動に関連性はないです。
高確率指示連鎖の目的は
一連の技能を作ることではなく
低確率指示へ従いやすくすることです。

5.高確率指示の直後には短く強化する
子供が高確率指示に従ったら
- そうだよ。
- できたね。
等と短く褒めるだけで
特別なご褒美は使いません。
高確率指示一回ごとに
- 長い動画。
- 大量のお菓子。
- 長時間の遊び。
を与えると
低確率指示へ進めなくなります。
6.高確率指示は短時間で終わる行動にする
高確率指示として
- 部屋全体を片づけて。
- 服を全て着替えて。
- プリントを一枚終えて。
等の長い行動を使うと
低確率指示へ進む前に時間がかかります。
高確率指示は
- 一つ物を渡す。
- 簡単な質問に答える。
- 立つ。
等の短い行動にします。
一つの行動が
数秒で終わることが理想です。
また子供が既に一人でできる
行動であることは必須条件です。
7.拒否が起きてから使う方法ではない
子供が難しい課題=低確率指示を
拒否した後に
一度簡単なこと=高確率指示をしてから
戻ろうと高確率指示を
始めることがあります。
これを繰り返すと
- 難しい指示を拒否する。
- 簡単な指示へ変わる。
という流れが作られます。
高確率指示連鎖は低確率指示を出す前に
使用する方法です。
拒否が起きてから
- より簡単な条件。
- 新しい好子。
- 少ない課題量。
を提示する方法ではありません。
8.低確率指示に従わなくても条件を良くしない
高確率指示には従ったけれど
最後の低確率指示には
従わないことがあります。
この時に
難易度の変更をしてはいけません。
- 課題の量。
- 課題の難易度。
- 行動後の結果。
は最初に決めます。
低確率指示に従わない場合は
必要なプロンプトを使って
正しい行動をさせます。
その後同じ課題を
一人で行えるか確認します。
9.高確率指示に依存させない
毎回高確率指示連鎖を使うと
- 手を上げて。
- タッチして。
- コップを渡して。
という指示を出さなければ
歯磨きや片づけを
始められない状態になることがあります。
この場合は高確率指示がないと
低確率指示に従えない状態です。
ですが低確率指示は練習を繰り返せば
高確率指示になることが多いです。
そのような場合、もともと低確率指示で
扱っていた課題は高確率指示に
分類できるようになります。

10.高確率指示の内容も変える
毎回同じ順番で
- 手を上げる。
- タッチする。
- 鉛筆を持つ。
- 一問解く。
という流れにすると子供が一連の順番
そのものを覚えてしまうことがあります。
この場合
指示を聞かずに覚えた順番で
再生しているだけのことがあり
指示が無意味になります。
高確率指示は
- 使用する言葉。
- 行動の順番。
- 使う物。
- 指示する人。
をランダムで変えるようにしましょう。
11.モチベーションが高い場面から低い場面へ広げる
高確率指示連鎖も
強い好子がある場面だけで
使用して終わりにしません。
最初は
- 終わったら動画を見られる。
- 欲しい物を得られる。
- 好きな場所へ行ける。
等のモチベーションが高い場面で
使用することがあります。
指示に従う行動が安定したら
- 避けられない生活場面。
- 特別な好子がない場面。
- 親のタイミングで行う課題。
へ広げます。
例えば
- 外出前に靴を履く。
- 食後に食器を運ぶ。
- 入浴前に服を脱ぐ。
- 親が用意した課題を始める。
等です。
最終的には
- 強い好子。
- 複数の簡単な指示。
- 特別な準備。
がなくても必要な指示に従えることを
目指します。
実践例
歯磨きを始める指示に
従うことを教える場合です。
子供は一人で歯ブラシを持ち
歯を磨くことができます。
しかし遊んでいる時に「歯を磨いて」
と指示されても
- 聞こえないふりをする。
- 別の玩具を持つ。
- 部屋から離れる。
という行動をしていました。
最終的な目標を親が「歯を磨いて」
と一回指示した後に
すぐ立ち上がり洗面所へ移動すること
と決めます。
まず子供が
一回の指示で従いやすい行動を
確認します。
子供は
- 立って。
- タッチして。
- 走って。
という指示には従えていました。
歯磨きの時間になったら
親は子供の近くへ行きます。
- 子供が親を見たことを確認して「立って」と指示します。
- 子供が立ったら「そうだよ」と短く伝えます。
- 続けて「タッチして」と指示します。
- 親とタッチしたら「歯を磨いて」と一回だけ指示します。
- 子供が洗面所へ移動したら歯磨きを始めます。
子供が動かなかった場合は
高確率指示を何度も追加せず
親が子供の体を支え
洗面所へ移動させます。
洗面所に移動できたら再度元の位置に
戻って自分で洗面所に行けるまで
やり直します。
こうすることで洗面所にすぐ移動すること
ができやすくなっていきます。
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