自閉症児に教えた行動を忘れさせないために〜ABAの維持〜

自閉症児に新しい行動を
教えた時に
- その日はできた。
- 何日か続けてできた。
- しかし時間が経過するとできなくなっていた。
ということがあります。
一度習得した行動が
時間を空けた後も続くことを
維持と呼びます。
新しい行動は一度できるようになれば
終わりではありません。
- 1秒後。
- 10秒後。
- 1分後。
- 次の日。
- 一週間後。
- 一か月後。
と時間を空けても
同じ行動ができるかを確認します。
ただし全ての行動を
定期的に確認する必要はありません。
毎日の生活で使う行動なら
生活の中で自然に
繰り返すことができます。
維持のために特別な確認が必要なのは
- 日常で使用する機会が少ない学習スキル。
- 注射や歯科治療等の医療を受けるスキル。
が中心になります。
目次
1.維持は時間が経過しても行動が続くこと
維持とは一度習得した行動が
一定時間の経過後もできることです。
例えば子供が新しい計算方法を
覚えたとします。
- 教えた直後に解ける。
- 10分後にも解ける。
- 次の日にも解ける。
- 一週間後にも解ける。
- 一か月後にも解ける。
という状態なら
行動が維持されていると考えます。
一方で教えた直後には
正解できても翌日には解き方を
忘れている場合は
まだ維持されていません。
一度の成功では維持とは見做されません。
2.般化と維持は確認する条件が違う
般化は人、場所、物等が変わっても
同じ行動ができることです。
維持は時間が経過しても
同じ行動ができることです。
例えば家でできる行動を
園でも行うことは
場面般化です。
一週間後も同じ行動が
できることは維持です。
違う教材でも正解できることは般化です。
同じ課題を
一か月後も正解できることは維持です。
人や場所等の条件を
変えて確認するのが般化。
時間を空けて確認するのが
維持です。

3.最初は一日の中で短い時間を空ける
新しい行動を教えた直後から
一週間後まで
確認しないのではありません。
最初は一日の中で
短い時間を空けて
確認します。
例えば新しい課題に
正解できた場合です。
- 正解した直後に
同じ課題を一人で行わせる。 - 1秒後に再度確認する。
- 10秒後に確認する。
- 1分後に確認する。
- 10分後に確認する。
という形です。
最初から長い時間を
空けるのではなく
短い時間を空けても
正解できることを確認してから
徐々に間隔を伸ばします。
4.できたら時間を伸ばし、間違えたら前の間隔へ戻す
時間を空けても正解できた場合は
次の確認までの間隔を伸ばします。
- 1秒後に正解できたら10秒後。
- 10秒後に正解できたら30秒後。
- 30秒後に正解できたら1分後。
- 1分後に正解できたら3分後。
という形です。
反対に間違えた場合は
さらに長い時間を
空けてはいけません。
例えば1分後には正解できたけれど
3分後に間違えた場合です。
- 正解を再度教える。
- プロンプトなしで正解させる。
- 再び1分程度の短い間隔で確認する。
という形に戻します。
間違えたら最後に成功していた
時間間隔へ戻します。
前の基準で安定してから
もう一度時間を伸ばします。
5.最終的には一か月空けてもできることを目指す
一日の中で
時間を伸ばせるようになったら
- 次の日。
- 三日後。
- 一週間後。
- 二週間後。
- 一か月後。
と確認の間隔を
伸ばしていきます。
一か月に一回の確認でも
正解できる状態になれば
維持については
大きな問題がないと考えられます。
ただし一か月後に
間違えた場合は再度
- 一週間後。
- 三日後。
- 翌日。
等の最後に成功していた
確認間隔へ戻します。
再度安定してから
一か月後の確認を行います。
6.日常で使う行動は生活の中で維持する
毎日の生活で使う行動は
特別に維持確認を
行う必要がありません。
例えば
- 服を着る。
- 靴を履く。
- 手を洗う。
- 食器を運ぶ。
- 必要な物を要求する。
- 片づける。
等です。
毎日の生活で
必ず行う場面を作れば
行動をすること自体が
維持の確認になります。
例えば食後に
食器を運ぶことを
維持したい場合です。
毎食後に必ず
一つの食器を運ばせます。
週に一回だけ
練習時間を作るのでは
ありません。
毎日の生活の中で
自然に繰り返します。
日常生活で使う行動は
練習として別に行うより
必ず使う環境を
作る方が維持されやすくなります。
7.使う機会がない課題を教える必要があるか考える
新しい行動を教える前に
- この行動を日常で使う機会があるか。
- 教えた後に自然な結果が得られるか。
を考える必要があります。
例えば
- 色の名前。
- 形の名前。
- 物の名前。
- 大きい、小さい等の概念。
等を教える場合です。
子供がその物に興味がなく
生活でも言葉を使う機会が
ほとんどない場合があります。
このような課題を
集中練習で教えたとしても
練習をやめれば
忘れる可能性が高くなります。
子供が日常で
全く使わないスキルなら
- そもそも今教える必要があるのか。
- 別の生活行動を優先した方がよいのではないか。
を検討します。
色や形の名前が
学習や生活で必要になるなら
教えて構いません。
しかし覚えること自体を
目的にするのではなく
生活や学習の中で
使う場面も作ります。
8.不自然なご褒美がないと続かない行動は見直す
新しい課題を教える時に
- お菓子。
- シール。
- スマホ。
- 特別な遊び。
等の不自然なご褒美を使用することは
効率的に学習するには
一定の効果があります。
しかしご褒美を
やめた途端に行動をする機会がなくなり
忘れるのであれば生活の中でその行動が
必要とされていない可能性があります。
日常で使う行動なら
- 着替えが終わったら外出できる。
- 手洗いが終わったら食事ができる。
- 片づけが終わったら次の活動へ進める。
- 要求したら必要な物を得られる。
という自然環境で良い結果=ご褒美を
得られるようになります。
自然なご褒美がなく
毎回特別なご褒美を
準備しなければ続かない行動は
教える優先順位を
再検討したり
ご褒美を使用しない方法で教えたり
した方が良いです。
9.維持確認が必要なのは学習スキルと医療スキルが中心
日常で毎日使う行動は
生活の中で維持されます。
一方で使う機会が
少ない行動は
定期的な確認が必要です。
代表的なものは
学習スキルです。
- 以前覚えた文字を読む。
- 以前覚えた計算をする。
- 以前覚えた漢字を書く。
- 文章問題の解き方を使う。
等です。
もう一つは
医療を受けるためのスキルです。
- 注射の時に腕を動かさない。
- 歯科治療で口を開ける。
- 粉薬を飲む。
等です。
医療を受ける行動は
毎日行うものではありません。
次の受診まで
何か月も空くことがあります。
そのためあまりにも時間が空くと
嫌がる反応が強まってしまうので
定期的な練習が必要になります。
10.アイコンタクトや発音等は定期的に修正する
自閉症児に教えて
一度できるようになった行動でも
定期的に崩れやすいものがあります。
例えば
- 自発的に相手を見る。
- 相手に聞こえる声で話す。
- 言葉を明瞭に発音する。
- 相手の方を向いて話す。
等です。
以前は相手を見て
要求していたのに少しずつ物だけを見て
要求するようになることがあります。
以前は聞き取れる声で話していたのに
徐々に声が小さくなることも
あります。
このような場合は
一度教えたから指導は終了した
とは考えません。
行動が崩れてきた時に
その都度以前の基準へ戻して
修正します。
11.同じ物や場所だけを使い続けない
維持は一つの行動を続けることだけでは
ありません。
新しい物や場所を
受け入れられる状態を
維持することも必要です。
- 毎日同じ服だけを着る。
- 毎回同じ道だけを通る。
- いつも同じ席へ座る。
- 同じ店にしか行かない。
という生活を続けると
違う条件が提示された時に
癇癪が起きやすくなる場合があります。
そのため定期的に
- 違う服を着る。
- 違う道を通る。
- 違う席へ座る。
- 違う店へ行く。
- 違う公園で遊ぶ。
等を経験する機会を作ります。
新しい場面でも
問題行動を起こさず
行動できる状態を
維持するためです。
毎回全く新しい場所へ
連れて行く必要はありません。
普段と少し違う条件を
定期的に入れるようにします。
12.生活の変化後は以前の基準を再確認する
- 夏休み。
- 冬休み。
- 体調不良。
- 進級。
- 引っ越し。
- 家族の生活時間の変化。
等があると
以前できていた行動が
一時的に低下することがあります。
以前の基準で失敗が続く場合は
最後に安定していた
短い間隔や簡単な課題へ戻します。
できる基準を再確認し
再び時間間隔を伸ばします。
実践例
アナログ時計の
「3時」を読む行動を
維持する場合です。
子供は時計の長い針が12
短い針が3を示している時に
「3時」と読むことを学習しました。
親が教えた直後には正解できました。
しかし一度正解しただけでは
維持されているか分かりません。
まず同じ時計を一度隠します。
1秒後に再度見せて「何時?」
と聞きます。
子供が「3時」と正解できたら
次は10秒空けます。
10秒→1ヶ月に段々と時間を伸ばします。
毎日3時に時間を聞けば維持は
問題がなくなりますが
あまりその時間に機会がないようであれば
意図的に時計アプリ等でチェックする
機会を設けた方が良いです。
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