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自閉症児に場面で異なるルールを教える〜ABAの弁別〜

前回は一つの場面で覚えた行動を
違う人や場所でも使う
般化について説明しました。

しかし全ての場面で
同じ行動をすればよいわけでは
ありません。

例えば

  • 赤信号では止まる。⇔青信号では道路を渡る。
  • 自分のおもちゃは自由に使う。⇔他者のおもちゃは許可を得てから使う。
  • 朝は「おはよう」と言う。⇔帰る時は「さようなら」と言う。

というように条件によって行動を変える
必要があります。

周囲の条件を見分けて
条件に合った行動をすることを
弁別と呼びます。

弁別では

  • どの条件で行動するのか。
  • どの条件では行動しないのか。
  • どの行動を使うのか。

を教えます。

1.弁別は条件に応じて行動を変えること

弁別とは人、場所、物
時間、言葉等の違いに応じて
行動を変えることです。

例えば子供が飲み物を飲む場合です。

  • 自分の水筒ならそのまま飲む。
  • 親の飲み物なら「飲んでいい?」と確認する。
  • 店の商品なら会計が終わるまで飲まない。

同じ飲み物でも
誰の物か、どこにある物かによって
必要な行動が変わります。

条件に合った行動を
選べるようになった時に
弁別できたと考えます。

2.般化と弁別は両方必要

般化は条件が変わっても
同じ行動を使うことです。

弁別は条件の違いに応じて
行動を変えることです。

例えば子供が

  • 母親。
  • 父親。
  • 先生。
  • 他児。

に「貸して」と言えるようになることは
人物般化です。

一方で

  • 他者が使っている物には「貸して」と言う。
  • 自分の物はそのまま使う。
  • 容器を開けてほしい時は「開けて」と言う。

という使い分けは弁別です。

最初に一つの行動を
色々な場面で使えるようにします。

その後に場面に合った行動へ
分けていきます。

3.新しい行動は習得済みの行動と組み合わせて教える

新しい弁別を教える時は

  1. 習得済みの行動。
  2. 新しく教える行動。

の順番で行います。

例えば「あ」を読める子に
新しく「い」を教える場合です。

最初に「あ」を見せて
正しく読めるか確認します。

「あ」を正しく読めた後に
新しい「い」を教えます。

「あ」を間違えた場合は
「あ」の復習をします。

習得済みの課題が
再び安定するまでは
新しい「い」へ進みません。

新しい行動を増やした結果
以前できていた行動が
できなくなったのでは
意味がありません。

4.似ている行動を連続して教えない

似ている物や行動は
見分けることが難しいです。

例えばひらがなの

  • 「は」と「ほ」。
  • 「ぬ」と「め」。
  • 「わ」と「れ」と「ね」。

等です。

似ている文字を続けて教えると
混同する可能性が高くなります。

「は」を教えた直後に
「ほ」を教える必要はありません。

例えば

  1. 似ている文字の片方である「は」を教える。
  2. 似ていない文字である「を」を教える。
  3. 「は」が安定してから「ほ」を教える。

という順番にします。

似ている物を教える時間を
可能な限り離します。

「は」を十分に習得してから
「ほ」を加えることで

新しい「ほ」を覚えながら
既に覚えた「は」と
見分ける練習ができます。

5.親が違いを説明しても弁別できるとは限らない

子供が似た文字を間違えると

  • 「ね」はここが丸くなっている。
  • 「れ」には丸がない。
  • 「は」は右側が丸い。
  • 「ほ」は横線が一本多い。

等と説明したくなります。

しかし親が違いを言葉で説明しただけでは
弁別できるようにならないことが
多いです。

そのような指摘で見分けられるのであれば
最初からできる子供だからです。

親が違いを長く説明するより

  • 似ている事柄を連続して教えない
  • 正解が安定したら似た物を加える。

という方が効果的です。

違いは説明して
理解させるのではなく
正解と不正解の経験を通して
見分けられるようにします。

6.一度に変える条件は一つにする

弁別を確認する時に

  • 人。
  • 場所。
  • 物。
  • 言葉。
  • 提示方法。

を一度に変えると何が原因で間違えたのか
分からなくなります。

例えば文字を読む場合です。

最初は同じ場所と教材で
文字だけを変えます。

それができたら
文字の大きさを変えます。

次に書体を変えます。

その後に教材を
カードから本へ変えます。

一つの条件を変えて
正解できるかを確認します。

できなかった場合は
一つ前の条件へ戻します。

7.場面ごとのルールを理解できない時は全て同じルールにする

本来は場面によって
行動のルールが変わります。

例えば抱きつく行動なら

  • 母親には抱きついてよい。
  • 父親にも抱きついてよい。
  • 先生には抱きつかない。
  • 他児には抱きつかない。

というルールが考えられます。

しかし子供が

  • 誰にはよいのか。
  • 誰にはいけないのか。

を弁別する子が難しい場合があります。

母親への抱きつきを許可すると
先生や他児にも
見境なく抱きつく場合です。

このような子供には

  • 全て許可する。
  • 全て禁止する。

のどちらかに統一します。

このように0か100かのルールにすると
比較的理解が楽になります。

あとは

  • 戦いごっこをすると見境なく周りの人を叩くようになったので禁止した。
  • ハサミで紙を切ることを教えると本も切るようになったので止めさせた。

等があります。

前述の例では他者へ抱きつくことで
安全や対人関係上の問題が
起きるのであれば

親を含めて
抱きつきを全面的に禁止する方が
良いです。

就学までは多めに見て就学以降は一切を
禁止することなどが考えられます。

8.正しい条件で行動した時に強化する

弁別のためには正しい条件で
正しい行動をした後に
適切な結果が起きる必要があります。

例えば子供が
親のおもちゃを借りる場面です。

勝手に取った場合は
そのまま遊ばせません。

おもちゃに触らず「貸して」
と言えた場合に
おもちゃを貸します。

この場合

  • 他者の物には勝手に触らない。
  • 適切に要求する。
  • 許可を得てから使う。

という行動が
おもちゃを使える結果によって
強化されます。

一方で自分のおもちゃなら
「貸して」と言わせず
そのまま使わせます。

条件ごとに結果を変えることで
弁別が進みます。

9.間違えた直後に目的の結果を与えない

子供が間違った行動をした後に
正しい行動を言わせて
すぐ要求を叶える方法には
注意が必要です。

例えば子供が
他者のおもちゃを勝手に取った後に

親が「貸してと言って」
と教えます。

子供が「貸して」と言ったため
すぐにおもちゃを貸したとします。

この場合

  1. 勝手に取る。
  2. 親から言語プロンプトを受ける。
  3. 「貸して」と言う。
  4. おもちゃを使える。

という一連の行動が
強化される可能性があります。

勝手に取った場合は
その試行では貸しません。

物を元の場所へ戻します。

勝手に人のものを触らなくなってから
「貸して」と言う行動を教えます。

10.過剰般化が起きてから弁別を教える

新しい言葉を教えた直後は
色々な場面で
同じ言葉を使うことがあります。

例えば

  • 物が欲しい時。
  • 容器を開けてほしい時。
  • 手伝ってほしい時。

全ての場面で
「ちょうだい」と言う場合です。

これは過剰般化と呼ばれる現象です。

初期段階では
大きな問題ではありません。

子供は覚えた言葉を
自分から使おうとしています。

まず覚えた言葉を使うことを増やします。

「ちょうだい」を
自発的に使えるようになってから

  • 物が欲しい時は「ちょうだい」。
  • 容器を開けてほしい時は「開けて」。
  • 貸して欲しい時は「貸して」。

と弁別を教えます。

先に行動を増やし
後から使い分けを教えます。

12.弁別できたかは習得済み課題と一緒に確認する

新しい課題だけに
正解できても
弁別できたとは限りません。

例えば「ほ」を
新しく教えた場合です。

「ほ」だけを見せれば
正解できるかもしれません。

しかし

  • 「は」と「ほ」を見分けられるか。
  • 「ほ」と「ぽ」を見分けられるか。
  • 以前覚えた「は」を間違えずに読めるか。

も確認します。

新しい課題の正解だけではなく
以前できていた課題が
維持されているかも確認します。

実践例

実践例

友達を遊びに誘った後に相手の返事に
合わせて行動を変える練習です。

子供は友達に「一緒に遊ぼう」
と誘うことはできました。

しかし相手が「いいよ」と答えた時も
「今は遊ばない」と断った時も
その後の行動が同じで
一緒に遊ぼうとしていました。

相手の返事に応じて次の行動を変える
弁別が必要です。

最初に教える流れを具体的に決めます。

  1. 「一緒に遊ぼう」と誘う。
  2. 「いいよ」と言われたら「ありがとう」と言う。
  3. 続けて「何して遊ぶ?」と聞く。
  4. 断られたら「また今度遊んでね」と言う。
  5. 断られた後は相手の物へ触らず離れる。

最初は親が友達役になります。
まず習得済みの「一緒に遊ぼう」
を一人で言えるか確認します。

言えない場合は誘う言葉を復習し
次の課題には進みません。

一人で誘えることを確認してから
新しい行動を教えます。

最初は親が「いいよ」と答えます。

子供が次の行動を知らない場合は
親が「ありがとう。何して遊ぶ?」
と正しい言葉全体を教えます。

子供に同じ言葉を言わせます。

その後もう一度最初から行います。

  1. 子供が「一緒に遊ぼう」と誘う。
  2. 親が「いいよ」と答える。
  3. 子供が一人で「ありがとう。何して遊ぶ?」と言う。

ここまでできたら一緒に遊びます。

次に断られた場合の行動を教えます。

  1. 子供が「一緒に遊ぼう」 と誘う。
  2. 親は「今は遊べない」と答える。
  3. 子供が何度も誘ったり親の物へ触ったりする前に「また今度遊んでね」と正しい言葉全体を教える。

子供が模倣できた後は
もう一度最初から行います。

親が断った後に子供が一人で
「また今度遊んでね」
と言えるか確認します。

言えた後は親から離れて
別の遊びへ移動させます。

この練習では

  1. 「いいよ」→「ありがとう」「何して遊ぶ?」
  2. 「今は遊ばない」→「また今度遊んでね」

という二つの流れを
見分けることを教えています。

最初から二つの返事を
ランダムに出すと
難しい場合があります。

最初は
「いいよ」の練習を安定させます。

その後に
断られた時の練習を行います。

それぞれできるようになってから

「いいよ」

「今は遊ばない」

を順番を変えて伝え
返事に合った行動が
できるか確認します。

親相手に安定したら
父親やきょうだい児でも
練習します。

最後に実際の友達へ「一緒に遊ぼう」
と誘います。

友達が「いいよ」と言ったら
「ありがとう」「何して遊ぶ?」
と言えれば成功です。

友達に断られたら「また今度遊んでね」
と言って離れられれば成功とします。

断られた後に何度も誘ったり
相手の物を取ったりした場合は

その場で制止するだけで長く叱ったり
何度も練習したりしません。

家庭で

  • 断られた時の言葉。
  • 相手から離れる行動。
  • 別の遊びへ移る行動。

を再度練習します。

弁別を教える時は
言葉を言えることだけでなく

  • 相手の返事を聞く。
  • 返事に合った言葉を使う。
  • 許可された場合だけ一緒に遊ぶ。
  • 断られた場合は相手から離れる。

までを一つの流れとして
教えることが大切です。

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