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自閉症児に伝わる指示の出し方は?絵カードは使ったほうがよい?

(出典:illustAC

 自閉症スペクトラム障害児は、他の子供と同じように指示を出しても従ってくれないことが多く、親は困ってしまいます。自閉症児は定型発達児と比較すると丁寧に教えたりする必要があります。今回はその方法と注意点を解説していきます。

指示をする時に考慮すべき自閉症児の特徴は

(出典:PhotoAC

  そもそも、指示場面において考えなければならない自閉症児の特性は何でしょうか。以下がポイントです。

1.人に興味がない
そもそも人に興味がないということが自閉症の特徴の一つです。指示を出す人の顔を見ることが困難であり、それにより注目することも困難になります。

2:20~2:41

 このように、なかなか指導者のほうを見なかったり、顔の前で物を振ったりしないと注目が取れなかったりします。この場面はお菓子やおもちゃといった子供にとってのご褒美(好子)を使用してもこの状態ですので、ご褒美が出ない集団への指示や音声指示はより注目が取れづらくなります。また、例え親が子供の両肩を持って指示を出しても目は見てくれないでしょう。

2.静止し続けることが難しい
 大人の手助けなしに起立や着席の継続が難しいです。起立や着席をし続けさせようとすると、その時点で怒ったり泣いたりします。

3.外界の刺激を取り入れづらい
 自閉症児には大抵、自己刺激行動というものが存在します。詳しい説明は下記ページを参照してください。

自己刺激行動があると2のように静止し続けることが難しかったり、親が声をかけても反応しなかったりということが起こる厄介なものです。

このように、自己刺激行動に没頭している時は親からの指示が通りづらいです。

4.言語理解の低さ
 これは自閉症児が親の指示を理解していない時に起こる問題です。指示を出しても動けなかったり、指示をそのままオウム返ししたりします。

 指示者は「何を食べたの?」と質問しているけれど、子供は大人が最後に言った言葉をそのまま繰り返しているだけです。

自閉症児に指示を出す時にNGとなる行動

(出典:illustAC

  では、自閉症児にNGとなる行動はどのようなものがあるでしょうか。以下がポイントです。

1.絵カードに頼る
 自閉症児に指示を出す時に、絵カードを使用することはよく使われる方法です。ですが、絵カードを使うときに考えなければならないことは

  • それは本当に効果があるのか(見せたら一人で行動できるのか)
  • 最終的に使用しなくてよいようにできるか
  • 絵カードを使うことで要求言語が出ることを阻害していないか

ということです。特に絵カードは漫然と使用されていることが多いため、絵カードを見せても大人が一緒に行動している、いつまでも使用し続けているということがあれば意味がない可能性があります。

18:26~18:48

例えば、この動画では絵カードを見せていますが、子供の目の前にカードを持っていかないと見ない、制止しないと勝手に違うところに行く、カードを見せた後で結局大人と手をつないで移動するということを行っています。これでは効果があるとは言えません。「最初は提示して段々と一人でできるようになっていくものだ」と考える人もいますが、残念ながらそのように無発語の自閉症児が段々と一人でやらせていくようにしていくという動画を見たことがありません。また、今の時代に絵カードというのはもう時代遅れです。タブレット、スマートフォンを使用していくという選択肢もあってよいと思います。

2.何度も何度も指示を出す
 これは、指示に従わない時に何度も話かけるということです。。ですが、この方法の問題点は、子供が行動を起こすまでに出していた指示は全て無視していたことになりますし、様々な指示が出ますので混乱する要因となります。。結果として、一回で指示に従うということを困難にします。

3.子供に親がついてまわる
 指示を出したにも関わらず親が子供について回る、特に手をつないで行動させたり、できなければすぐ手伝う方法はトータルタスクプレゼンテーション(全課題提示法)と呼ばれる方法です。以下のように定義されます。

全課題提示法とは.最初の行動から最後の行動までを同時的に形成していく方法である.最初Jの行動から最後の行動までを順次遂行させていき,そのR1-R5ごとに自発的に生起しない場合(SD→R→SR成立していない場合)には,プロンプトを提示しながら形成をはかっていく

『行動分析学事典』P.471 日本行動分析学会 丸善書店

 この方法の問題点は、いつまでも覚えない可能性があることです。ですから、親が手伝いながら全ての行動ができることより、一人で一部分の行動ができるほうが価値が高いです。

4.子供がアイコンタクトしやすいようにする
 親が子供がアイコンタクトしやすいように配慮することは意味がありません。それは、子供の目の前に親がいるか、もしくは親の目の前に子供の興味を引くものがあるだけです。例えばこの動画です。

9:13~9:43

 この動画では光がでるボールを指導者の目の前に持ってきてアイコンタクトをさせているように見えるだけです。実際は、親の目の前にあるボールを注視しているだけです。また、指示を出す場面では、子供の注意を引く物を毎回使用する訳にもいかないので応用が効かない限定的な方法です。

自閉症児に効果的に指示を出すためのポイント

(出典:PhotoAC

  では、親は自閉症児に対してどのように指示を出せばよいのでしょうか。以下がポイントです。

1.コンプライアンストレーニングを実施する
 自閉症児はコンプライアンスが高い(大人の指示に素直に従う)状態でなければ、指示が分からないので指示に従えないのか、指示に従う気がないのかがわからないです。これは発達検査でも同様で、まじめに発達検査をしていないからできていないのか、まじめに発達検査をしたとしてもできないかの区別ができないのです。ですから、まずはできることは必ずするようにトレーニングする必要があります。

2.アイコンタクトトレーニングを実施する
 アイコンタクトトレーニングを実施しなければ自閉症児は他者に対して注目することが難しいです。アイコンタクトトレーニングの方法は以下の記事で説明しています。

 実際にアイコンタクトトレーニングを実施すると、このように指導者とアイコンタクトして指示を聞くことができるようになります。

3.指示を限定する
 自閉症児に多数の指示を一度に教えるのは不可能です。ですから、単純な行動への指示から練習していくべきです。おすすめの指示は「座って」です。これは様々な場面で使用することが考えられるからです。一つの指示に対して完璧にできるようになったら次の指示に移行します。指導をまだしていない指示に関しては、子供の手を引っ張って教えるといった対応を取ることで指示に従えるようにします。

4.注目を取ってから指示を出す
 よくあるNGな方法としては子供に「〇〇君、手を洗ってきて」と指示を出すことです。これは子供の注目を取ることと、指示を出すことをいっぺんにしてしまっているため、子供は指示を聞き落とすことが多くなってしまいます。ですから、指示を出す時は、「〇〇君」と呼びかけ、親とアイコンタクトができてから「手を洗ってきて」と指示を出しましょう。そうするときちんと指示を聞くことができます。

5.単純な指示に統一する
 指示を出す言葉は一番一般的な、簡単な指示に統一します。例えば、着席指導をさせる時は「椅子に座って」と声をかけることが最も一般的です。ただ、この方法では常に指示を統一すればよいわけではありません。そうすると他の指示を出された時に指示に従うことができなくなります。「椅子に座って」が100%できるようになったら「席ついて」「着席」といった声掛けでも適切に行動ができるように教えていく必要があります。

6.音声指示を繰り返させる
 音声指示を出した後に自閉症児が全く指示を理解していないことがあります。たいていの場合は、「〇〇やってね」「はーい」か、「〇〇やっといてね」と言うだけになってしまいます。音声模倣能力がある子供の場合は、親の言ったことを「今何て言ったかを説明して」とそのまま子供に繰り返させるということが効果的です。これだと、子供が指示を聞き取れていない時は再度指示を出しなおすということができます。また、何回かこの方法を使用していると子供も指示を1回で聞き取ることが習慣になっていきます。

7.順番を決めさせる
 同じく話せる子供は、自分で行動の順番を決めることはモチベーションアップにはよいことです。例えば、勉強とおやつをどちらを先にするかといったことは選ばせても全く構いません。ただし、ルール違反があった次の日は親が順番を決めて、子供が嫌いな方の行動を先にさせるようにしましょう。

まとめ

(出典:illustAC

  自閉症児への指導は、絵カードの使用、音声指示を減らす等特別な対応が取られがちです。ですが、音声指示に従うことができれば集団への参加といったことが可能となります。マンツーマンだから指導できる方法に頼るのではなく、最終的には集団に入れていくことを考えて指導していきましょう。

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