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自閉症児が利用すべきは保育園?幼稚園?公的療育の上手な利用方法は?

(出典:PhotoAC

 自閉症スペクトラム障害児を持つ親にとって、保育園/幼稚園を利用するのか、それとも発達障害児向けの施設を使うかは多いに迷うところだと思います。どれを利用することが望ましいのでしょうか?

それぞれの施設の特徴

 まずはそれぞれの施設の特徴を見ていきましょう。

 排泄のスキル

着替えのスキル

着席し続けるスキル

他児と一緒に移動するスキル

食事を食べるスキル

指導者の音声指示に従うスキル

1.保育園

(出典:PhotoAC

 保育園は以下のような長所、短所があります。

 このように集団で長期間、長時間預かってくれるということが最大の長所で反対に地域によって入りづらいということが最大の短所だと考えられます。


2.幼稚園

(出典:illustAC

 幼稚園は以下のような長所、短所があります。

 保育園に比べて、学習面に力を入れているという長所がある一方で、保育時間/期間が短かったり、指導者の問題行動への対応が保育園よりも低かったり、障害を理由として入園しづらかったり問題行動を原因として退園させられたりすることがが短所です。

3.公的療育

 (出典:illustAC

 集団指導の公的療育における長所、短所は以下の通りです。

 公的療育では、子供の問題行動に対してクレームがつかず、親子ともにストレスを感じない環境であるという長所がある一方、子供の成長をそもそもあまり目指さず問題行動を止めなかったり、保育園/幼稚園の時間が削られたりといった短所があります。また、施設間の指導方針が一貫性がないため、公的療育で必ず教えられるスキルといったことがない状態にあります。

それぞれの施設職員の特徴

(出典:illustAC

 では、指導者の質という観点から考えるとどうでしょうか?自閉症児に対する日常生活における指導力の高さのポイントは、以下のように考えます。

1.大人数を指導しているか
一人当たり大人数を指導している指導者ほど、様々な子供を指導しているので、自閉症のような問題行動を起こす子供でも指導できる可能性が高いです。

2.長時間指導しているか
 長時間指導している指導者は短時間の指導しかしていない指導者よりも能力が高いです。なぜなら、長時間集団の子供を指導するスキルは時に子供の行動を制御することが必要となるからです。

3.幅広い年齢を指導しているか
 いろいろな年代の子供を指導することで、柔軟な指導スキルが形成されます。

4.様々な能力の子供を指導しているか
 様々な能力の子供を指導することは、指導の柔軟性が上がり、指導スキルが高まることとなりますので、重要なポイントです。

 それを踏まえて、公立/民間保育園、公立/民間幼稚園、公的療育の指導者レベルを平均化すると以下のようなランキングになります

 このように、幅広い年齢及び様々な能力の子供を、長時間、集団で指導している保育園の指導者が一番能力が高い傾向にあります。一方、短時間、一人当たりの指導人数の少なさから公的療育の指導者のレベルは低くなりがちです。

保育園、幼稚園、療育で身に付けるべきスキルとは

(出典:PhotoAC

 次に、自閉症児に対して保育園、幼稚園で教えられるスキルと教えられないスキルは何でしょうか?

 このように、自閉症児は、集団での行動は身に付きやすいですが、言語能力やお箸の使い方といった細かいスキルは、保育園や幼稚園の生活だけでは獲得が難しいでしょう。

 一方、公的療育で身に付けられるスキルは何なのでしょうか?残念ながらこれといってありません。なぜならカリキュラムや指導方法が一貫しておらず、現場の人間にゆだねられている現状があるからです。もちろん、保育園や幼稚園も指導にばらつきはありますが、公的療育ほどではありません。公的療育のメリットは、保護者が見学することで子供の能力を客観的にみられることだと思っています。

保育園、幼稚園、公的療育はどのように利用することがよいか

(出典:PhotoAC

 以上のことから考えると、自閉症児は保育園、幼稚園、公的療育はこのような条件で利用を考えるとよいです。

1.可能な限り早期に預ける
 幼いうちに預ければ預けるほど、適切行動の形成は容易になっていきます。ですから、可能であれば保育園、難しければ、一時預かりやプレ幼稚園等を利用して集団行動への参加機会を作っていったほうがよいです。また、障害に関わらず早期に集団行動へ入れることは子供にとっては集団行動の練習機会が増え、親はストレスが減るのでよいことです。

2.長時間預ける
 長時間預けるほど、適切行動の獲得が期待できます。ご家庭での療育は帰宅後の時間で十分です。現に、私のサービスを利用されている方の9割は保育園に長時間預けています。長時間の保育を利用しているから適切行動が身につかないといったことはありません。

3.加配はできるだけ使わない
 加配の先生がいると、自閉症児の子供だけ、特別扱いされることが増え、公的療育と同じような対応になってしまうことがあります。子供に攻撃行動、脱走行動といった危険行動がある場合は、加配の先生が必須とされてしまうことがありますが、可能な限り加配の先生は利用しないようにしましょう。

4.言語訓練は家庭で実施する
 言語訓練は保育園、幼稚園、公的療育で指導されるものではありません。保育園、幼稚園はあくまで集団行動のスキル、日常生活のスキルに限って教えてくれるものと考えましょう。

5.問題行動は家でも解決を目指す
 保育園/幼稚園の先生方の指導だけでは自閉症児の適切行動の獲得が難しい場合があります。そういった場合は、保育園、幼稚園にすべてを任せるのではなく、ご家庭でも練習をして問題解決を目指していきましょう。

6.公的療育の利用日数は少なめに
 前述の通り、公的療育に通う日数が多いと保育園/幼稚園での集団行動の場面が減らされてしまいます。ですが、まったく公的療育に通わないと、医療との連携が切れたり、同じような問題を抱える保護者との情報交換の機会がなくなってしまいます。ですから必要最低限の利用にしましょう。

 以上を踏まえ、おすすめの保育園と幼稚園、公的療育の利用方法は以下の通りです。
1.可能な限り保育園、難しい場合は幼稚園
 保育園のほうが保育時間が長いので可能であれば早期から保育園を利用します。難しければ3年保育の幼稚園の利用を考えましょう。幼稚園は延長保育が可能なところ、夏休み等の長期休暇がないところを選ぶとよいです。

2.公的療育の利用は週1回以下
 公的療育は週1回の利用で十分です。保育園/幼稚園の行事等がある場合はそちらを優先しましょう。公的療育に保護者が参加している時は、子供の行動を観察することによって集団での行動の問題を考える時間にしましょう。

まとめ

(出典:PhotoAC

 自閉症児が公的療育をあまり使わずに保育園、幼稚園を利用することに関しては現場の先生や療育の指導員が反対することが多いです。ですが、上記のように無理をしてでも通わせたほうが子供にとっても保護者にとっても適切な行動を教えることができます。周囲の意見に左右されず、子供にとって最大の利益が得られるためにどこに通うべきかをしっかりと考えるようにしましょう。保育園/幼稚園の選び方のポイントは下記ページを参照してください。

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