靴のベロが靴の中に入らないようにするために(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 自閉症スペクトラム障害等の発達障害の子供の親にとって、靴選びは困難があります。靴紐を自分で結ぶことは難しく、靴のベロがある靴ですと靴の奥に入ってしまいがちです。

 そうすると結局靴の選択肢がベロも靴紐もないスリッポンになってしまいます。しかし、履き心地を考えると靴紐やマジックテープの靴も選べるほうがいいですよね。そこで一つの方法があります。

 例として、マジックテープをあげます。このまま足を通すとベロが内側に入ってしまいがちです。そこで一工夫。

 このように、マジックテープの隙間にベロを通してしまいます。デザイン的に可能な靴は限られますが、紐靴であればたいてい可能です。

 視点を変えるとこんな感じです。靴を子供が履けるようになるという根本解決ができるわけではありませんが、靴を履く練習をするまでのつなぎとしてはよい方法だと思います。ちなみに、この方法は私が考案したのではなく、ある支援学級の先生が実施していた方法です。よい方法はどんどん真似していきましょうね。

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優れた指導者はABAを知らずに使用している…訳ではない

(出典:PhotoAC

 よく効果を上げている先生やコーチなどの指導者はABAを使用している、ということを言う人がいます。例えば、

ということが説明されます。これは正しくありません。なぜなら結果論から解説しているだけだからです。効果を上げている指導者はABA的に効果を説明することはできたとしてもABAの見地から効果をあげそうな指導者を事前に予測することができるわけではないからです。

 この手法は、ABAとはアプローチが異なる精神分析のアプローチと似てしまっています。

不幸なことに、精神分析の説明はあまりに概説的であり、行動という行動はすべて説明できる。真に科学的な説明とはそんなものではない。科学的な説明は、多くの諸々の行動の中から特定の一つの行動を予見しなければならないはずである


Marx et al 1963

 ですから、結果のみを講評しているものではなく、今後どうなるかといった予測をはらんだものでなければあまり意味がない物になってしまいます。ABAの主な役割は結果事象の解説ではなく、支援効果の予測であることを忘れないでください。

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わかりやすいルール、わかりにくいルール

(出典:PhotoAC

 わかりやすいルールは、客観的判断が容易なルールです。子供に理解できるようにするには、どうすれば子供に理解できるかということを考える必要があります。例を見てみましょう。

 この場合、高く積まないの「高く」がどこまでなのかがわかりません。よって、子供にとってはわかりづらいルールとなっています。

 上の写真では、「オレンジの点線まで」という指定があります。これはわかりやすいルールです。ですが、肝心のルールの説明が小さい(笑)ルールの文字を大きくして絵でも示したらより分かりやすくなると思います。

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小学生以上は教えるスキルを絞ろう(自閉症療育)

 ABAでは、その使用する手法にもよりますが(DTT,PRT,VB等)、一つ一つ適切な行動を教えていくことを目指します。すべてのプログラムを就学までに終了し、普通級に所属することが一番なのですが、そこまで発達できない子供もいます。

 小学校に入学後は教える課題を取捨選択することが必要です。というのも、就学までに習得できなかったスキルは学習し続ければ獲得できるかもしれませんが、また長時間の学習を必要とする可能性が高いからです。

 また、小学校で学ぶスキルは大人であれば自身の学習経験を振り返っていただければ明白ですが一旦学んでも将来的に使用することがない知識も多いです。

 このように、将来使う可能性が低いスキル、学習内容は多くの時間を必要とするのであれば切り捨てることも必要です。

 例えば、

  • 四則演算ができなくても電卓を使えば問題がない
  • アナログ時計を読めなくてもデジタル時計が使用できれば問題がない
  • 漢字が書けなくても読めればよい
  • 黒板の板書を写さなくても写真で取れればよい

というように合理的に考えれば、かなりの学習は教える必要がなくなってきます。学習が困難な場合は、本当にそのスキルが将来的に必要かを考えましょう。

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言葉の遅れがある子供に幼児語は厳禁

(出典:PAKUTASO

 人間は本能というものがあります。例えば、上の写真の動物を呼ぶ場合、大人と話す時には「犬」と言うのに対して、子供に対して話しかける時は「わんちゃん、わんわん、犬さん」等と言うことが挙げられます。

 言葉の遅れが著しい自閉症スペクトラム障害等の発達障害児に対して上記のような幼児語は使用しないほうがよいです。なぜなら、言葉の遅れがある子供に対して、上記のように「わんわん、わんちゃん」のように教えてしまうと子供が言えるようになる頃には同学年の子供は「犬」と言っている可能性が高いです。つまり、言葉の遅れがある時点で「わんちゃん」から「犬」に変えることは二度手間になることがあるのです。

 同様に、父母の呼称も途中で変えてしまうことが大変なことがありますので、「パパ」「ママ」という呼び方よりは年齢が上がってからも使える「お父さん」「お母さん」という呼び方を優先的に教えたほうが良いです。

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家庭と家庭外の指導を比べる

(出典:PhotoAC

 ゴールデンウィークですね。皆様、満喫していますか。私は自営業なのであまり関係ありませんが…。

 夏休みや冬休み、ゴールデンウィーク等の大型連休になると家庭での療育の有効性を測ること(アセスメント)が可能になります。

  • 連休中に子供の癇癪が少なくなる→家庭での指導が家庭外での指導より厳しい基準である可能性が高い(もちろん、外でのストレスが減るからということもある)
  • 連休中に子供の癇癪が増える→家庭での指導が家庭外での指導より緩い基準である可能性が高い

ということで連休中に子供の行動が改善するような療育を目指していきましょう。

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親が親を支援することの危険性(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 昨今、自閉症スペクトラム障害児等の発達障害児を育てた先輩保護者が後輩保護者の相談に乗るサービスが多く実施されています。公的機関が主導して行っていることが多いので、大阪の図書館ではないですが私は財源削減の一種ではないかと勘繰ってしまいます。私は保護者が保護者を支援する方法には危険性が多くあると思います。

  1. 保護者は自分の子供しか接していないことが多い→自分の経験がすべてのように説明をします。これは、当事者や当事者家族が書いた本と同様に偏った考え方のことがあります。
  2. 保護者は悩みを共有することはできるが、支援のアドバイスはできるかわからないこと→療育を家庭内で専門的に行ってきた訳ではないケースがほとんどなので「そのうち自己刺激行動は消えるよ」「スケジュールの変更で泣いてしまうのはしょうがないよね」といった成長を諦めるような助言をする可能性があります。
  3. 自分の子供より能力が上の子供を持つ保護者に対しては敵対心を持つことがあること→発達障害児の保護者というのはやはり自分の子供と他人の子供を比べてしまいます。明らかに自分の子供より能力が上の場合、嫉妬心からきちんとしたサポートがなされないことがあります。同じような悩みを共有しているうちはいいですが、それが解決して大きな成長を見せたら途端に冷たくなるということはよく聞くことです。

 ということで、保護者による保護者のサポートは限定的なものに留めておくほうが良いと思います。本当に井戸端会議的な形でもよいのではないでしょうか。

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信号待ちの歩道ではどこで立ち止まらせるべきか

(出典:Photock

 赤信号で待っている時に歩道ではどこに立って待てばよいでしょうか。よく聞くのは「車に轢かれるから内側に入って」という指示です。どういった指示がわかりやすいでしょうか。

 ヒントは駅のホームにあります。

 駅のホームでは黄色い線(点字ブロック)より離れて電車を待つようにアナウンスが入ります。点字ブロックは実際のホームの端からかなり離れているということです。この場合、万が一転んだとしてもホームに転落する可能性は低いです。

 同様に歩道で待つ時も、ギリギリの位置で立っていたら何かの拍子に道路に飛び出てしまうかもしれません。万が一転んでも安全なようにセーフティーゾーンを設けていることが大切です。

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家事に対価は必要か(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 こんな記事がありました。

僕自身、お小遣いはもらっていませんでした。同級生にたくさんいたユダヤの裕福な家庭の子どもたちも、お小遣いはもらっていませんでした。経済的にゆとりのある家庭ほどお小遣いをあげていない、というのが昔から変わらない僕の印象です。

(中略)


玄関の掃除1回10円、家中のフローリングを雑巾がけしたら20円、風呂全体を掃除したら30円など、労働力に見合う対価を設定して、自分で稼ぐ喜びを味わいながらお金を手に入れたほうが、身につくことは圧倒的に多いでしょう。

 大人に限らず、人間は誰でもラクをしたい生き物です。1回の風呂掃除でもらえるお金は30円。ここが変わらないとすれば、どうしたら効率よく、短時間で風呂掃除を終えることができるかを考え始めます。それが、想像力や発想力といったクリエイティブな思考の源。実行して、うまくいかないところは修正して、試行錯誤しながら自分なりの“型”を生み出していくところに面白みがあるのです。
 労働の対価として得たお金を貯金箱に入れて貯めていけば、労働の重みを肌で感じることができるでしょう。電子マネーや仮想通貨など実際のお金を手にすることが減ってきている時代だからこそ、こういった原始的なやり方に価値が生まれます。


https://diamond.jp/articles/-/200257?page=2

 経済の仕組みを知るにはこの方法は優れているかもしれませんが、子供に自発的に家事をするようにさせるには不向きです。なぜなら

  • 多くの家事に対価を求めるようになる可能性が高い(「これ手伝ったら何円くれるの?」等)
  • お金がある時は家事をしないという選択をする可能性がある

からです。これはトークンシステムの問題点と同じです。ですから、私は家事は必ずしなければならない、その代わり自然な対価(好子)は必ずもらえる(食事の準備をしたら食事を食べられる等)というほうがよいのではないでしょうか。そうすれば自然強化の原理が働くので不自然な対価を使用しなくても行動が継続する可能性が高いです。

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家庭内療育で遊びながら教えることは可能か(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 家庭内療育では親がセラピストと同様に機能することが求められます。その中で遊びを通して教えることは可能でしょうか。

 遊びを通して教えることは何度も説明していますが、かなりのスキルが必要です。例えばこちら。

 これはPRTを提唱したKoegelのセラピーですが、子供が途中で癇癪を起こしていることがわかります(0:53~)。つまり、かなりセラピーに習熟した者でも子供の感情をコントロールすることは遊びだけでは難しいということです。

 「最初のセラピーだから」という指摘はあるかもしれませんが、このような激しい反応を見せられるとその時点で親は諦めてしまう可能性もあります。

 遊びで適切な行動を教えていくというのは子供に負担がかからないため理想的ではありますが、子供に負担を掛けないようにすると、簡単でできることに終始してしまう可能性があります。ですから、遊びは遊びで教え適切行動は身についてくれたらラッキーのような考え方でいるほうがよさそうです。

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形の見える支援にこだわっていませんか(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 日本の療育では特殊な道具を使った支援が多いように感じます。例えば、

  • パーテーション
  • 絵カード
  • 自立課題

等です。これらが一概にダメとは言いませんが、使い過ぎのように思えます。私はこれらを多用する背景には

「療育グッズを使うと、保護者に対して頑張ってる感が明確に出せる(専門的な支援をしているように見える)」

ということが関連しているように見えます。例えば、まだ何も知識がない人が絵カードを多用した教室に行けば、「ここは発達障害に対して専門的な支援をしている」と思うでしょう。それに対して絵カードを使用せずに声かけや指差し、指示の復唱といった保護者にはわかりにくいプロンプトを使用していたらどうでしょうか。成果をあげるまでは、「療育の場なのに特別なことは何もしてくれない」と保護者から不満が出るかもしれません。

 このようにならないためには、指導者は保護者に指導方針を的確に伝え、あえて療育グッズを使用していない理由を説明しなければなりません。療育者もスキルアップするために、形の見える支援にこだわるのをやめてみませんか。

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自分で環境を変えられなければ効果が薄い(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 自閉症スペクトラム障害等の発達障害児は適切な環境であれば能力を発揮します。例えば、自己刺激行動が出づらい環境であれば集中して取り組めます。

 ここでの注意点は、いつまでも周囲の人がおぜん立てをしてはいけないということです。例えば、上のような物が少ない環境で頑張れることは明らかですが、これをいつまでも大人が用意してはいけないです。そうすると、この環境でしか課題ができない可能性があります。もしこのような環境を子供が望んだら

  • 自分からこのような環境を作れること
  • このような環境があるところに移動して学習をすること(図書館の自習室等)

というような行動が取れるように支援することが理想です。そうしなければいつまでも周囲の支援が必要になってしまいます。

 もしくは様々な環境でも能力を発揮できる能力でも構いません。私の場合は、環境を整えずに様々な場面でできるように働きかけていくことが多いです。そうすれば例えまだ経験していない環境でも柔軟に対応できるようになるからです。

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偉人が発達障害ではないかと考えることは意味がない


既成の概念を打ち破る仕事を成し遂げた天才たちをみると、普通の人とは大きく異なる精神構造をもっていた人がきわめて多い。これは数々の医学的データから明らかになっている。『天才と発達障害』(文春新書)では「創造性」「才能」がいったいどのようにして生まれてくるのかを、誰もが知る天才たちを具体的にあげながら、精神医学的見地から解き明かしている。


https://bunshun.jp/articles/-/11535

 説明ではフレディ・マーキュリーや進化論のチャールズ・ダーウィン等が発達障害の特徴があったとのべています。

 よく偉人は発達障害だったと主張することがあります。「エジソン・アインシュタイン〇〇」等は最たるものでしょう。これらは

  • 社会的に大きく成功した者の中で
  • 定型発達者とはかけ離れた性格、習慣、能力の部分にスポットライトを当てた

に過ぎません。人は多かれ少なかれ発達障害と同様の特徴を持ちます。ですから、イチローは自閉症スペクトラム障害といった話が出るのです。これは一種の栄光浴と関連していると思われます。栄光浴とは、偉大な人物との接点を上げることで自分の社会的地位を高く見せようとする行為です。例えば、ノーベル賞を取った日本人を大々的にニュースで取り上げるといったことです。「偉人も発達障害だから発達障害でも大丈夫」という論調はいかがなものでしょうか。

 発達障害が噂される偉人でも社会では尊敬されていることが多いです。つまり、圧倒的な成果を出せば日常的な問題は不問にされるのです。「発達障害だから素晴らしい」のではなく、「圧倒的な成果を上げていれば問題がない」と言うだけのことだと思います。

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楽しい遊びを教えるためにもまず学習を(自閉症療育)

(出典:PhotoAC

 自閉症スペクトラム障害等の発達障害児に遊びを教えることは時に難しいです。例えば以下のような症状がある場合です。

  • 子供から他者に自発的に働きかけることがほとんどない(アイコンタクトをしない)
  • 子供がおもちゃを適切に使用せず、手を振る、クルクルと回る、奇声をあげるといった行動を繰り返す(自己刺激行動)。

  このような子供に遊びを教えることは

  • 子供が喜ぶ遊びをさせなければいけない。
  • 子供の行動を制御しなければならない(自己刺激行動を制止するなど)。

と高いスキルが求められます。プロのセラピストや子供との遊びが得意な人では可能かもしれませんが、とても難しいです。こういった場合は、まずコンプライアンススキルを先に向上させることが効果的です。なぜかというとコンプライアンススキルが高い子供は自分が好きな遊びでなかったとしても参加してくれるからです。子供は面白いもので、強制的でも参加した遊びは好きになる可能性が高いです。つまり

  • 好きだからその遊びをするようになるのではなく
  • その遊びに参加したから好きになる

可能性があるということです。まずは、自分が好きではない遊びでも参加できるようなスキルを鍛えてみてはどうでしょうか。

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丸暗記と本質的理解との違い

(出典:PAKUTASO

 私は仕事で勉強を教える機会が多くあります。そこで重視していることが丸暗記にならない勉強法をすることです。

 例えば、3+1=4ということはある程度の知能を持つ子供であればすぐに覚えることができます。ですが、それは使えない、ただの暗記です。

 これが本質的に理解でき、使用できるためには例えば以下のような能力が必要となります。

  • 「りんごが3個、バナナが1個あります。全部で何個でしょう。」という文章題の問題を解く。
  • 「3+1=4」が答えになる文章題を作らせる。
  • 3+1=4をブロックで計算の確かめができるようにする。

 これらができていれば、本質的な部分を理解したといえると思います。学校ではそこまで細かく教えることが難しいので、セラピーではこれらを補っていくことを目指しています。

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