(ABC analysis)
自閉症スペクトラム障害児(以下、自閉症児)に対する有効な支援方法はABAです。ABAの解説は下記のページを参照してください。
ABAでは行動を前後の関係性から理解しようとします。例えば泣く行動の場合、その前後にどのようなことがあったかによって行動の機能を特定します。その時に、ABC分析という考え方をします。
目次
ABC分析とは
ABC分析(ABCぶんせき)(ABC Analysis)はABAの代表的な分析方法です。 三項(強化)随伴性と呼ばれることもあります。 上記のように、行動を3つに分けて分析をします。
それぞれの段階の注意点を説明していきます。
きっかけ(Antecedent)とは何か
きっかけは先行条件、先行事象、弁別刺激とも呼ばれます。きっかけでは行動の前にあったことを記録します。気を付けなければいけないのは何分前までという規定はなく、観察者が考える行動に影響を及ぼしたと考えられるきっかけを記録するということです。例えば、場所や時間、人等です。
このように、観察者の解釈によりきっかけの記入は異なります。わからない場合は、行動の前にあったことをわかる限り全て記録することがよいでしょう。
2.行動(標的行動)
ここでは増やしたい行動や減らしたい行動を記録します。ここでの注意点は死人(しにん)テスト(Dead Man’s Test)に気を付けて記録をすることです。死人テストとは以下のように説明されます。
O・リンズレイが1965 年に考案したとされる, 行動分析学において「行動」を識別する際に役立つ考え方で,「もし死人にでもできるなら,それは行動ではな い。そして,死人にできないのならそれは行動である」というもの。
はじめてまなぶ行動療法P.291
死人テストに気を付けて行動を書き換えると以下のようになります。
このように死人テストを意識して書き換えると①不適切な行動を適切な行動に書き換える②他の行動に書き換える③〇〇せずに〇〇するのように行動を足すといったことができます。
また同様に、行動の記述が適切かどうかを図るIBSOテスト(Is the Behavior Specific and Objective)があります。
1 その行動の生起回数を数えることができますか? 例えば、15 分中に、1時間の間に、 1日で何回であったか。あるいは、その行動の持続時間をはかることができますか? す なわち、その行動が1日に何回あるいは何分 だったと誰かに報告することができますか?(答えはいずれもイエスでなければならない)
2 行動変容の予定になっている標的行動を新任教師に説明したときに、新任教師は見なければならない行動を正確に見極めることができますか? すなわち、標的行動があったときに、子どもがその行動をしていると主確に見分けることができますか? (答えはイエ スでなければならない)
3 標的行動をより細かい要素に分解できますか? そして、それぞれの要素は元の記述よりも、より明確で観察可能ですか?(この答えはノーでなければならない)
はじめての応用行動分析P.53
3.結果(結果事象、後続事象)
結果は、きっかけと同様に観察者が行動に影響を及ぼしていると考える結果を記録します。よって、観察者によって結果の記録が異なります。
どの結果が行動に影響を及ぼしているかわからない場合、きっかけと同様に観察できた結果全てを記録することがよいです。
ABC分析のコツ
ABC分析のコツですが連続した個人の行動は分けずに書き、行動に影響を与えていることが予想されることを結果に書きます。例えばA(きっかけ)台所に行くB(行動)冷蔵庫を開けるC(結果)ジュースを飲むの場合は、ABが連続した個人の行動になるのでA(きっかけ)家にいる時B(行動)台所に行って冷蔵庫を開け、ジュースを出すCジュースを飲むのほうが分かりやすいです。 また、確認が使用がない行動や行動の理由は書かないようにします。
また、NGとなる表現とその回避方法は以下の通りです。
このように観察しても明確にわからない行動や理由等の記載は避けるようにしましょう。
ABC分析の長所
ABC分析の長所は以下の通りです。
1.行動の機能がわかる
現在の行動の機能が分かります。例えば、問題行動をABC分析した場合、なぜその行動をとるかという行動の理由が分かります。
2.対策が立てられる
行動の機能が分かると行動を消したり増やしたりするためめに対策を立てることができます。例えば、問題行動を減らすための対策が立てられます。
ABC分析の短所
ABC分析の短所は以下の通りです。
1.分析に主観が入る
前述の通り、きっかけや結果の記述に明確なルールはなく、観察者の判断によって記述が異なります。よって、観察者によっては全く違った分析結果になってもおかしくありません。
2.観察者にスキルがいる
きっかけ、結果の記載は観察者のスキルがなければ有効なものとなりません。トレーニングが必要です。
3.数量データを集めるものではない
ABC分析はあくまで行動の機能を明らかにするものであり、行動が増減しているかを計測するものではありません。ですから数をカウントする場合は、違う方法を利用する必要があります。
3.ABC分析に向かない行動がある
ABC分析は行動を前後の関係性から考えようとします。ですが、行動の中にはそのような関係性を考えても分析することが難しいことがあります。 例えば、癖等です。爪を噛む、性器をいじる、髪をいじるといった癖はきっかけに関係なく起こることがあります(自己刺激行動)。自己刺激行動に関しては以下のページを参照してください。
また、結果も不明なことが多いです。その場合、ABC分析の形では捉えられないです。観察によって判明することではないので断定できませんが、安心感を得られるといったことが結果にあると考えられます 。
ABC分析の例
では実際の例を見てみましょう。以下の行動を大声を出す行動を中心としてABC分析してみましょう。
お母さんにコーラとアイスクリームを断られたこと(夕食を残していたからダメと言われています)がきっかけ(A)で男の子は大きな声を出すという行動(B)をし、結果お母さんからアイスとコーラをもらって(C)います。ABC分析ができましたね。
なんとなくですが、大声を出すことによって男の子にメリットがあることが分かると思います。
まとめ
ABC分析を実施することによって理解しがたい自閉症児の行動の原因の多くは理解できるようになります。慣れれば非常に容易に実施できますので練習してみましょう。