犯罪と発達障害に関して
(出典:PhotoAC)
定期的に起こることですが、殺人事件を起こした犯人が自閉症スペクトラム障害という診断を受けていたということがニュースで取り上げられていました。
こちらの記事にエビデンスベースドの説明が書かれていました。
犯罪白書によれば、平成27年度の刑法犯の検挙人員総数は、約24万人であるのに対し、そのうちの精神障害者数は約4,000人にすぎない(発達障害のみのデータはないので、精神障害者全体を見るしかない)。
厚生労働省の患者調査によれば、わが国の精神障害者は約390万人いる。また、同じく厚生労働省のデータによれば、平成26年度に医療機関を受診した発達障害者は、約19.5万人である。
これらの数字をもとに単純に計算すると、一般の人が犯罪を犯す割合(精神障害者を除いたわが国の人口全体のうち、精神障害のない刑法犯の割合)は約0.2%であるのに対し、精神障害者が犯罪を犯す割合(精神障害者全体のうち、精神障害刑法犯の割合)は、約0.1%にすぎない。
一方、「言ってはいけない~残酷すぎる真実~」ではこのように書かれています。
イギリスで、1994年から3年間に生まれた5000組の双子の子どもたちを対象に、反社会的な傾向の遺伝率調査が行われた。それによると、「冷淡で無感情」といった性格を持つ子供の遺伝率は30%で、残りの70%は環境の影響だとされた。この「環境」には当然、子育ても含まれるだろうから、これは常識的な結果だ。
次いで研究者は、教師などから「矯正不可能」と評された、きわめて高い反社会性を持つ子供だけを抽出してみた。その結果は、衝撃的なものだった。犯罪心理学でサイコパスに分類されるような子供の場合、その遺伝率は81%で、環境の影響は2割弱しかなかった。(P29)
南カリフォルニアの小学校に通う9歳の双子605組(1210人)を調査したところ、教師が問題行動ありと評価した場合の遺伝率は40%、親による評価では47%、本人の評価では50%で大きな違いはなかった。
(中略)教師、親、本人の三者ともが「反社会的」と評価した子供だけを抽出してみた。(本人も含め)誰からも暴力性や異常性が顕著と見なされた子供の反社会的行動は、遺伝率96%という驚くべき数字が示された。(P32)
殺人事件を犯すような場合は、反社会的行動が強いため、上記のような遺伝の影響が大きいとすることが妥当であると考えられます。ですが、それは自閉症スペクトラム障害のような発達障害の診断名とは違い、あくまで親の犯罪率との比較です。ですから、上記のような研究結果があるからといって自閉症スペクトラム障害が犯罪率が高いということはないと言えます。