自閉症児にこぼした水を自分で拭くことを教える

自閉症児へ家庭療育を行う時に
- 飲み物をこぼした机を拭く。
- 洗面台の周りに飛んだ水を拭く。
- 水遊びの後に濡れた場所を拭く。
等を教えることがあります。
ダスターを渡して「拭いて」と伝えると
手を動かしてはいるものの
水が残っていることがあります。
同じ場所だけを何度も拭いたり
水のない場所を拭いたりして
最後は親が仕上げている場合もあります。
今回は机を濡らしている少量の水を
自分で拭き取る練習を扱います。
以下の具体的な進め方は
家庭療育としての私の提案です。
目次
1.水分を取ることと汚れを落とすことを分ける
机を拭く場合も
何を取り除くのかによって
使う道具や動作が変わります。
例えば
- 水分を取る時は、乾いたダスターやティッシュ等を使う。
- 汚れを落とす時は、ウェットティッシュや湿らせた台拭き等を使う。
と分けます。
水分を取る練習なのに
濡れたウェットティッシュを使っていると
拭いた後も机に水分が残ります。
反対に乾いたティッシュで水分を取れても
食べ物の汚れやべたつきまで
落とせたとは限りません。
今回は清潔な水を使い
水分を拭き取ることだけに絞ります。
汚れを落とすことや
机を衛生的にするための清掃は
今回の方法とは別に教えます。
2.ペナルティーとして拭かせることに注意する
水をわざとこぼした時や唾を吐いた時に
子供に拭かせる方法があります。
しかし親がペナルティーとしてさせても
逆に問題行動を強めてしまう
可能性があります。
例えば、拭かせる際に
- 水遊びが好きで水を塗り広げることが好き。
- 唾も自分で机に塗りたくったりする。
- 水を拭かせても一向にも問題行動が減らない。
という結果が生じる場合です。
それらが子供にとって
行動を繰り返すきっかけになれば
わざと水をこぼすことや唾を吐くことが
増える可能性があります。
拭かせたから問題行動が減るとは考えず
その後の行動が減っているかを見ます。
また、うっかり水をこぼしたことを
一律に問題行動として
扱う必要はありません。
今回の練習は
問題行動へのペナルティーとしてではなく
生活に必要な動作を教える
手順を考えます。
3.濡れている場所に道具を当てて水を取る
まずは、水で傷まない机に
少量の水を使用します。
子供が扱いやすい大きさの
乾いたダスターやティッシュを使います。
「水を拭いて」と伝えたら
最初から親が手伝うのではなく
どこまでできるかを見ます。
確認するのは
- 水を紙で吸い取れているか。
- 拭ききれていなければ新しい紙に変えているか。
- 乾いた状態まで拭けているか。
- 拭き終わったら「できた」と言えているか。
です。
水を押し広げてしまう場合は
ダスター等を水の上に置き
押さえて吸わせる見本を見せます。
紙がそれ以上水を吸えない状態では
新しい物に替え流ことを教えます。
2021年のYavuzの研究では
自閉症のある子供3名に
動画の見本を使って机拭きを教え
全員が目標とした動作を習得しました。
研究では、濡れた布で清掃することと
乾いた布で水分を拭き取ることを含む
一連の作業を教えています。
4.最後は乾いた紙で水が残っていないか確認する
子供が拭き終えたら
ティッシュ等の乾いた紙を使って
水分が残っていないか確認します。
見た目では水が分かりにくくても
乾いた紙を軽く当てると
紙が濡れることがあります。
紙が濡れたら
「ここにまだ水が残っているね」と
その場所を子供に示し
もう一度拭いてもらいます。
拭き直した後は
新しい乾いた紙や、紙の乾いた部分で
再度確認します。
終わりの基準は
何回手を動かしたかではなく
確認した紙に水が付かないことです。
最初は親子で確認し
慣れてきたら子供自身も
乾いた紙で確かめられるようにします。
5.拭き直した後は、新しく水を用意して確認する
親が濡れた場所を指さした後に拭けても
自分でその場所を見つけて
拭けるようになったとは限りません。
拭き残しを直した後は
霧吹き等で机に少量の水を用意し
もう一度拭いてもらいます。
この時は、最初から親が
濡れた場所を指ささず
「水を拭いて」と伝えて
子供がどうするかを見ます。
つまり
- 子供が拭く。
- 乾いた紙で確認する。
- 水が残っていれば、場所を示して拭き直してもらう。
- 再度確認し、水分が取れたことを確かめる。
- 霧吹き等で新しく水を用意し、もう一度子供だけで拭けるかを見る。
という流れです。
新しく水を用意するのは
教えたことを最初から一人でできるか
確かめるためです。
こぼしたことへのペナルティーとして
繰り返し拭かせることとは違います。
6.道具の準備と片付けもつなげる
水分を拭き取れるようになったら
道具を取りに行くことと
使った後に片付けることも教えます。
例えばティッシュを使う場合は
- 決めた場所からティッシュを取る。
- 水分を拭き取る。
- 乾いた紙で残りを確認する。
- 使ったティッシュをゴミ箱に捨てる。
という流れです。
ダスターを使う場合は
使用後に置く場所を決めておきます。
最初から洗うことや絞ることまで
一度に教える必要はありません。
水分を取ることができてから
子供ができる動作をつなげていきます。
少量だからティッシュ、大量だからタオル
のような使い分けは子供の知的レベルに
よっては難しいと思います。
その場合は
「タオルを使ってね」等と
親が道具の指定をするようにしましょう。
実践例
机に霧吹きで少量の水を用意し
乾いたダスターで拭き取る練習です。
子供はダスターを持って動かせますが
水が残っていても終えてしまいます。
- 水で傷まない机、清潔な水を入れた霧吹き、乾いたダスター、確認用のティッシュを用意する。
- 親が机の一部に少量の水を吹き掛け、「水を拭いて」と伝える。
- 子供が濡れた場所を確認し、ダスターで拭き取るかを見る。
- 拭き終えたら、乾いたティッシュを軽く当てて水分が残っていないか確認する。
- 水が残っていたら、その場所を示して子供に拭き直してもらい、再度乾いた紙で確認する。
- 水分を取れたら、霧吹きで別の位置に少量の水を用意し、今度は場所を示さずに拭けるか確認する。
- 一人で水分を取れたことを短く褒め、自分でできた部分と必要だった手助けを記録する。
水がなくなったように見えることと
実際に水分を拭き取れたことを
分けて確認します。
乾いた紙を使って結果を確かめながら
親が仕上げなくても
子供が自分で水分を取れることを目指します。
参考文献
Mehmet Yavuz 2021年。
The Effectiveness of Video Modeling in Teaching the Skill of Wiping a Table to Children with Autism Spectrum Disorder
Kahramanmaraş Sütçü İmam Üniversitesi Sosyal Bilimler Dergisi, 18(1), 246–261.
DOI 10.33437/ksusbd.630995。
机拭きの課題分析は252ページ。
Wayne W. Fisher、H. A. Chris Ninness、
Cathleen C. Piazza、Jamie S. Owen-DeSchryver 1996年。
On the reinforcing effects of the content of verbal attention
Journal of Applied Behavior Analysis, 29(2), 235–238.
DOI 10.1901/jaba.1996.29-235。
叱責による注目と問題行動の関係について。
資料とリンクの確認日 2026年10月28日。
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