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自閉症児に服の前後を確かめて着ることを教える

自閉症児へ家庭療育を行う時に
自分で服を着ることを
教えることがあります。

頭や腕を通すことはできても
前後が逆になっていたり
親が向きを直して渡さないと
正しく着られなかったりします。

着替えのたびに親が直していると
子供が服の向きを確認する機会が
なくなっている場合もあります。

ただし、服によって絵柄やタグの位置
首元の形などが異なります。

全ての服の前後のパターンを
教え尽くすことは難しいため
服の内側に共通のマークを付けて
確認できるようにしても構いません。

今回は、Tシャツを着る場面で
前後を確認し向きを整えてから着ることを
どう教えるかを説明します。

以下の具体的な進め方は
文献の考え方をもとにした
家庭療育としての私の提案です。

1.親がどこまで準備しているかを見る

まずは、普段の着替えで
親が何をしているかを確認します。

服を引き出しから出し前後をそろえて広げ
頭を入れる場所まで開けて渡しているなら
子供がしているのは、その後の動作です。

その状態で着られても
服の前後を自分で判断できているとは
限りません。

最初に、親が向きを整えた服なら
一人で着られるかを見ます。

それでも頭や腕を通せない場合は
着る動作を教える必要があります。

向きを整えてあれば着られるなら
次に、前後を確認する部分を教えます。

行動分析学事典の466〜468ページでは
複雑な行動を細かな動作に分け
それぞれの習得状況を確認する
課題分析が説明されています。

今回なら、前後を見分けること
着やすい向きに整えること
実際に着ることを分けて見ます。

服が裏返しになっている場合は
それを直すことも別に教えます。

前後の確認を練習する時は
最初は親が裏返しを直した服を
用意します。

2.服の内側に共通のマークを付けてもよい

前側だけに絵があるTシャツなら
絵を手がかりにして
前後を確認できることがあります。

しかし、絵が背中側にある服や
前後の両方にある服もあります。

タグについても全ての服で
同じ位置にあるとは限りません。

一枚ずつ前後の見分け方を教えることに
時間をかけるのであれば
子供が確認するための共通のマークを
付ける方法も使えます。

例えば、Tシャツの前側の裾の内側に
同じマークを付けます。

着ている時には外から見えず
子供が着る前に
裾をめくって確認できる位置にします。

服によって付ける側を変えず
マークのある側が前だと教えます。

この方法なら、服ごとに
絵柄やタグの位置を覚える代わりに
同じマークを探して確認できます。

2023年のFosterらの研究でも
服を着る動作を教わっていても
向きを間違える自閉症のある生徒3名に
目印を付けた衣服を使いました。

公開要旨では、3名とも正しい向きで
着られる割合が上がり
その後も技能を維持した2名では
目印を段階的に減らせたと
報告されています。

研究では目印を減らしていますが
家庭で内側のマークを使う場合は
必ず取り除くことを
目標にする必要はありません。

マークを使って子供が自分で着られるなら
その方法を続けても構わないと考えます。

3.マークを見つけた後に、向きを整えて着る

マークを指させても
そのまま正しい向きで着られるとは
限りません。

前側が分かった後に
自分が着られる向きへ整えることも
教えます。

例えば服を持ち上げた時に
向きが分からなくなるなら
一度机や床へ広げます。

裾の内側にあるマークを確認したら
その側が体の前側にくるように
服の向きを整えます。

親が向きを直す見本を見せた場合は
次に子供にも同じ動作をしてもらいます。

その後で頭や腕を通して着ます。

マークを正しく見つけられるのに
着る途中で向きが変わってしまう場合は
持ち方や着始めるまでの動作を
確認します。

4.裏返しを直すことは別に教える

前後が逆になっていることと
服が裏返しになっていることは
別の状態です。

前後を見分けられるようになっても
裏返しを自分で直せるとは限りません。

裏返しを直す練習では服のどこを持ち
どの部分を引き出せばよいかを
実物を使って教えます。

親が服を使って見本を示し
子供が同じ動作をできるかを確認します。

袖の部分で止まるなら
内側に入った袖を引き出す動作を
取り出して練習します。

袖の一部を直せたことと
服全体の裏返しを直せたことは
分けて確認します。

裏返しを直せるようになったら
表に戻した後にマークを確認し
向きを整えて着る流れにつなげます。

5.マークを残したまま親の声掛けを減らす

最初は
「内側のマークを見て」と声を掛けたり
マークを指さしたりして構いません。

ただし毎回同じ声掛けをしていると
親に言われてからでないと
マークを確認しません。

やり方が分かってきたら
服を用意して「正しい向きに置いて」
と伝えた後、親はマークを指ささず
子供が自分で確認するかを見ます。

正解しても間違えても子供が「できた」
と報告してから「確認しよう」と言って
服をめくってマークの位置を
一緒にチェックします。

このように

  1. シャツを正しい位置に子供に置かせる
  2. 確認する
  3. 正しければ着替え正しくなければ位置を修正してから着替える

の順番で行っていきますが
シャツを正しく置くことが習慣化したら
着替え終わった後にマークを確認する
だけで十分です。

実践例

前側の裾の内側に
マークを付けたTシャツを使います。

子供は、親が向きを整えて渡せば
頭と腕を通して一人で着られます。

今回は、自分でマークを確認し
向きを整えて着ることを目指します。

  1. 入浴後の着替えで、親が裏返しを直したTシャツを用意する。
  2. 初めは裾の内側のマークを示し、マークのある側が体の前側にくることを教える。
  3. 子供が服を広げ、裾をめくってマークを確認する。
  4. 子供が普段着られている向きへ服を整え、実際に着る。向きを直せない場合は、親が見本を示す。
  5. 正しい向きで着られたことを確認し、できたことを短く褒める。
  6. 次の着替えでは、すぐにマークを指ささず、自分で確認して着られるかを見る。
  7. 自分でできた部分と、声掛けや見本が必要だった部分を記録する。

裏返しを直す練習は別に行い
できるようになったら
着替えの流れへ加えます。

全ての服の特徴を覚えることにこだわらず
服の内側のマークを使いながら
自分で前後を確認して着られることを
目指します。

参考文献

日本行動分析学会編 2019年。
行動分析学事典
丸善出版。
課題分析、466〜469ページ。
各動作の習得状況の確認は466〜468ページ。
連鎖化と手助けを減らす説明は470〜471ページ。

Hannah G. Foster、Tyler-Curtis C. Elliott、
Kevin M. Ayres 2023年。
Using a Tag as a Stimulus Prompt to Increase Correct Dressing Orientation
Research and Practice for Persons with Severe Disabilities, 48, 203–214.
DOI 10.1177/15407969231205849。
研究内容は出版社が公開する要旨で確認。

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