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自閉症児に違う遊び方を教える〜ABAのラグ強化スケジュール〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に

  • 積み木でいろいろな形を作る。
  • 粘土を丸めたり、細長く伸ばしたりする。
  • おもちゃを使った遊び方を増やす。

等の新しい遊び方を教えたい
と思うことがあります。

いくつかの遊び方を教えたのに
自分で遊ぶ時には
いつも同じことだけをする場合
があります。

例えば、積み木をいろいろな置き方が
できるのに関わらず
毎回横に並べるだけの場合です。

ただし、遊び方を覚えた後
その遊びをするかどうかは
最終的に子供が判断することです。

私の家庭療育では
親が提案する遊びに付き合えれば
よいと考えます。

普段から自分でいろいろな遊びを
選ぶことまでを
必ず目標にするわけではありません。

クーパーらの
応用行動分析学の1064ページでは
直前の反応や、決められた回数分の
過去の反応と異なる反応を強化する方法を
ラグ強化スケジュールとして
説明しています。

行動分析学事典の248ページにも
異反応強化手続きとして
ラグ・スケジュールが
取り上げられています。

今回は、直前の遊び方と違う行動を
強化する方法を扱います。

以下は、この考え方を使って
親の提案に応じて違う遊び方を試す
家庭療育としての私の提案です。

1.別の遊び方を既にできるかを見る

まずは、いつもと違うことを求める前に
その子供ができる遊び方を確認します。

積み木なら

  • 縦に積む。
  • 横一列に並べる。
  • 二つの土台に積み木を渡して橋を作る。

等です。

難しい場合は作り方を教えます。

親が見本を示し
子供が同じように作れるかを確認します。

見本が必要だった場合は
プロンプトがないとできない状態です。

見本を見ながら作れたことと
見本がなくても作れたことは
分けて考えます。

2010年のNapolitanoらの研究では
6〜10歳の自閉症児6名を対象に
積み木で作る構成の種類を増やすため
ラグ強化スケジュールが使われました。

そのうち4名には
プロンプトと追加の訓練
も行われていました。

研究では構成の種類が増えましたが
違う物を作るよう求めるだけの方法で
全員ができたわけではありません。

2.何が違えばよいかを決める

次に、どの部分が変われば
違う遊び方として扱うかを決めます。

例えば、積み木の配置を変えるなら

  • 縦に積んだ形。
  • 横一列に並べた形。
  • 橋の形。

を違う構成として扱います。

赤い積み木を青い積み木に替えても
同じ位置に同じように積んだなら
配置が変わったとは扱いません。

反対に、色の組み合わせを変える課題なら
色が変わることが目標になります。

何を教えたいかによって
見る部分が違います。

最初は、親子とも違いが分かりやすい
形を使います。

また、作っている途中の積み直しを
一回ずつ数えるのではなく
作り終えた構成を一回として比べます。

3.直前と違う形を作った時に褒める

今回は、直前に作った形と違えば
褒める方法を使います。

例えば、子供が積み木を縦に積んだ後
親が「今度は違う形を作ってみよう」
と提案します。

子供が横一列に並べたら
「今度は横に並べたね」
と、変わった部分を短く褒めます。

一方、再び同じように縦に積んだ場合は
違う形を作れた時の褒め言葉は
加えません。

この手続きでは
違う形を作ったかどうかによって
その後の親の対応を分けます。

親が毎回、作る形を変えて指示するだけで
ラグ強化スケジュールになる
わけではありません。

その後、親の提案に応じて
違う形を作る機会が増えているか(強化)
確認します。

増えない場合は

  • 別の形を一人で作れるか。
  • 何を変える課題なのか分かっているか。
  • 褒めることが、その子供の行動を増やしているか。

を見直します。

4.毎回初めての形を求めるわけではない

直前の一回と違う反応を強化する方法を
ラグ1といいます。

例えば

  1. 縦に積む。
  2. 横一列に並べる。
  3. 再び縦に積む。

という順番でも
それぞれ直前とは違っています。

三回目の縦積みは
一回目にも作っていますが
直前の横並べとは違うため
今回の条件に合っています。

一度作った形は二度と使えない
という課題ではありません。

ただし、この二つを交互に作れたことと
多くの遊び方が身についたことは別です。

縦積みと横並べだけを繰り返しているなら
確認できたのは
二つの形を切り替えられることです。

ほかの作り方も教えたい場合は
その形を作る練習を加えます。

直前よりさらに前の反応まで
比べる方法もありますが
家庭で必ず条件を難しくする必要はありません。

5.親の提案に付き合えればよいと考える

私の家庭療育では親が提案した時に
いつもと違う遊び方も試せることを
目指します。

例えば、普段は塔ばかり作っていても
親が横に並べる遊びを提案した時に
一緒に取り組めればよいと考えます。

具体的な形を指定されて作れた場合も
親の提案に付き合えたことは
確認できます。

別の遊び方ができることと
普段どの遊びを選ぶかは別です。

親は遊び方を教えたり提案したりしますが
その遊びを自分の楽しみとして
続けるかどうかは子供が決めます。

実践例

積み木の配置を変える練習です。

子供は、積み木を縦に積むことと
横一列に並べることが
既に一人でできるとします。

今回は、親の提案に応じて
直前と違う配置を作ることを目指します。

  1. 同じ形の積み木を用意し、最初に好きな形を一つ作ってもらう。
  2. 作り終えた形を親が記録し、次に使う積み木を用意する。
  3. 「今度は違う形を作ってね」と伝え、具体的な形は指定せずに待つ。
  4. 直前と違う配置を作ったら、「今度は横に並べたね」等と短く褒める。
  5. 同じ配置だった場合は、違う形を作れた時の褒め言葉は加えない。別の形を思いつかず止まるなら、必要に応じて形を指定したり見本を示したりする。
  6. 手助けを使った場合はその内容を記録し、次の機会には手助けを減らしても取り組めるか確認する。
  7. 作った形の順番と、親の提案にどのように応じたかを残す。

毎回、最後に作り終えた形を
次の比較対象にします。

参考文献

日本行動分析学会編 2019年。
行動分析学事典
丸善出版。
行動変動性。
異反応強化手続きの説明は248ページ。

ジョン・O・クーパー、ティモシー・E・ヘロン、
ウイリアム・L・ヒューワード著。
中野良顯訳 2013年。
応用行動分析学
明石書店。原著第2版の日本語訳。
ラグ強化スケジュールの説明は1064ページ。

Deborah A. Napolitano、Tristram Smith、
Jennifer R. Zarcone、Karen Goodkin、
David B. McAdam 2010年。
Increasing response diversity in children with autism
Journal of Applied Behavior Analysis, 43(2), 265–271.
DOI 10.1901/jaba.2010.43-265。

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