自閉症児が途中で止まる行動の難易度を下げる〜ABAの反応努力〜

自閉症児へ家庭療育を行う時に
- 遊んだおもちゃを箱へ戻す。
- 脱いだ服を洗濯かごへ入れる。
- 読み終えた本を棚へ戻す。
等を教えることがあります。
片付ける場所は分かっているのに
おもちゃを持ったまま動かなかったり
箱の前まで行って止まったり
することがあります。
この時は
片付けという指示が分かるかに加えて
実際にしまうまでに
どのような動作が必要かを確認します。
例えば同じおもちゃをしまう場合でも
- 開いている箱に入れる。
- 留め具を外して、ふたを開けて入れる。
- 離れた場所にある箱まで運んで入れる。
では必要な動作が違います。
行動するために必要な力や
移動距離等に関わる負担を
反応努力といいます。
行動分析学事典の543ページでも
行動の選ばれ方に関わる要素として
反応努力が取り上げられています。
私の家庭療育では
反応努力を減らす方法を
一時的な先行条件操作として使います。
最終的には元の環境に戻し
その条件でも自分でできることを
目指します。
そのため、反応努力を減らす方法を
必ず取り入れるわけではありません。
元の環境へ戻す練習まで考えた上で
最初から反応努力を減らさずに
教えることも選択肢に入れます。
以下の進め方は
この方針に沿った家庭療育としての
私の提案です。
目次
1.片付けのどこで止まるかを見る

まずは片付けができないとまとめず
どこまでできているかを見ます。
ふた付きの箱へ
おもちゃをしまう場面なら
- おもちゃを拾う。
- 箱まで運ぶ。
- 留め具を外す。
- ふたを開ける。
- おもちゃを入れる。
- ふたを閉める。
という動作があります。
箱まで運べているのに
留め具を触ったところで止まるなら
そこを取り出して確認します。
- 留め具の外し方が分かっているか。
- 自分の力で外せるか。
- おもちゃを持ったまま開けようとしていないか。
等です。
両手を使えば開けられても
片手におもちゃを持っているために
開けられない場合もあります。
その場合は、おもちゃを一旦置いてから
箱を開ける方法を教えます。
留め具の外し方そのものが分からないなら
その動作を教える練習が必要です。
反応努力を減らすだけで
まだできない動作まで
身につくわけではありません。
2.反応努力を減らす場合は一つずつ変える
一時的に反応努力を減らす場合は
どの条件を変えるかを決めます。
例えば
- 箱のふたを外しておく。
- 留め具をかけずに、ふたを置いておく。
- 収納場所を近づけて、運ぶ距離を短くする。
等です。
最初から全部を変えずまず一つを変えて
子供の行動を見ます。
箱のふたを外す場合は
片付ける物や箱の位置はそろえて
自分で入れられるかを確認します。
2013年のWilderらの研究では
自閉症児1名を含む子供3名に
おもちゃを箱へ入れるよう指示しました。
箱までの距離が30センチの場合と
3メートルの場合を比べると
3名とも近い条件の方が
指示に従う割合が高くなりました。
その後、距離を段階的に延ばす手続きも
検討されています。
ただし、一部の条件では
食べ物による強化も併用されています。
距離の調整だけで全て解決した
という研究ではありません。
家庭で使う場合も
近くならできたところで終わらず
元の場所まで運べるようにすることを
見据えて進めます。
3.親がした部分と子供がした部分を分ける
環境を変えた後は
子供が自分で行う機会を作ります。
親がふたを開けた上で
おもちゃも拾って箱へ入れてしまうと
子供がどこまでできるか分かりません。
ふたを開けて準備したなら
おもちゃを拾って入れる部分は
子供が行えるかを見ます。
必要な時には
短い説明や見本等の
プロンプトを使います。
その場合も
- 追加の声掛けなしで入れた。
- 箱を指さした後に入れた。
- 親が一つ入れて見せた後に入れた。
を分けて確認します。
箱に全部入ったという結果だけで
一人で片付けられたとは判断しません。
ふたを外した状態でできたなら
確認できたのは
開いている箱へしまえることです。
ふたの開け閉めを含む
元の片付けができたわけではありません。
4.元の環境へ戻す手順を決めておく
反応努力を減らす時には
何ができたら次の段階へ進むかも
決めておきます。
例えば、ふたを外して練習するなら
- 開いている箱へおもちゃを入れる。
- 留め具をかけていない箱で、ふたを開けて入れる。
- 留め具をかけた元の箱で、開け閉めまで行う。
という形で進めます。
留め具を外す動作がまだ難しければ
空の箱を使ってその部分を練習し
できるようになってから
片付けの流れにつなげます。
箱を近づけた場合は
自分で運べることを確認しながら
少しずつ元の場所へ戻します。
距離、ふた、片付ける量を
一度に元へ戻すと
どこで難しくなったか分かりにくいため
一つずつ変えます。
ここでは、元の道具を安全に扱え
必要な動作の習得を目指せることを
前提にします。
日数がたったから戻すのではなく
子供がその条件でできているかを
見ながら進めます。
5.最初から反応努力を減らさない方法もある
元の環境へ戻すことを前提にすると
一旦簡単にすることで
教える段階が増える場合もあります。
例えば、元の箱を使って
留め具の外し方を見せれば
子供が自分でできる場合です。
その場合は、ふたを外して練習してから
再びふたを付ける方法を
必ず通る必要はありません。
元の箱を使い
難しい動作を教えた上で
片付けの流れを練習することもできます。
導入する時は
- 一時的に負担を減らすことで、子供一人でできる活動を増やせるか。
- 元の環境へ戻すまでに、どのような練習が必要か。
- 元の環境のまま、必要な動作を教えられないか。
を考えます。
環境を変えた時の取り組みやすさ
だけでなく
元の環境でできるようになるまでを見て
方法を選びます。
6.環境を変えても進まない時は見直す
ふたを外しても
おもちゃを入れようとしない場合は
開けにくさだけが問題だったとは
考えられません。
例えば
- まだ遊びを終えたくない→行動の切り替えが苦手。
- 何をどの箱へ入れるか分からない→ルールの不理解。
- 片付ける範囲が分からない。
- 親が一つずつ指示するのを待っている→指示待ち。
等の可能性があります。
また、箱を近づけてできたとしても
移動が少なくなったことに加えて
箱が見つけやすくなった影響も
考えられます。
原因をすぐに決めつけず
どの条件で、どこまでできたかと
必要だった手助けを残します。
元の環境へ戻していく時も
同じように確認します。
実践例
ミニカーをふた付きの箱へしまう
ケースです。
子供はミニカーの収納場所を知っていて
拾って運ぶこともできます。
しかし、箱の留め具を外すところで止まり
毎回親が残りを片付けていたとします。
まず、留め具を外す動作ができるか
確認します。
元の箱で説明や見本を示せば
自分で開けられるなら
そのまま元の箱で片付けを教えます。
反応努力を下げる場合は
一時的にふたを外して次のようにします。
- 最終目標を、元の箱を開けてミニカーをしまい、ふたを閉めるところまでと決める。
- 始める前に同じ箱のふたを外し、出ているミニカーを全て片付けることを伝える。
- 子供が拾って箱へ入れるかを見て、できたことを短く褒める。
- 時間を置いてまたできるかを確認する。
- 並行して、空の箱でふたや留め具の操作を教える。
- ふたや留め具の操作ができたら元の状態の箱へ戻し、留め具を外すところから一人でできるかを確認する。
途中で難しくなった時は
止まった動作を取り出して教え
再び片付けの流れにつなげます。
ふたを外している間の成功と
元の箱での成功を分けて記録し
元の環境でも親の手助けなく
片付けられることを目指します。
参考文献
日本行動分析学会編 2019年。
行動分析学事典
丸善出版。
セルフコントロール、自己制御の応用。
反応努力と反応効率性については543ページ。
David A. Wilder、Anthony T. Fischetti、
Kristin Myers、Yanerys Leon-Enriquez、
Lina Majdalany 2013年。
The effect of response effort on compliance in young children
Behavioral Interventions, 28, 241–250.
DOI 10.1002/bin.1362。
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