自閉症児にご褒美表は使用しやすいか?〜ABAのトークンエコノミー〜

自閉症児に
- プリントができたらご褒美表にシールを一枚貼る。
- 片づけができたら丸を一つつける。
- 決めた行動ができたらカードを一枚渡す。
という対応を行うことがあります。
集めたシールやカードを
- お菓子。
- 動画。
- 玩具。
- 好きな活動。
等と交換できるようにします。
このように
決めた行動の後にご褒美とかえられる物=
トークンを渡し集めたら
ご褒美=好子と交換する方法を
トークンエコノミー(システム)
と呼びます。
トークンエコノミーは
行動を増やしやすい方法です。
一方で生活の自然な流れとは
関係のないシールや点数によって子供を
行動させようとする方法でもあります。
そのため家庭での利用は
十分考慮しなければなりません。
目次
1.トークンは交換することで価値を持つ
トークンとして使われる物には
- シール。
- カード。
- スタンプ。
- 丸印。
等があります。
ただしシールを貼っただけでは
トークンエコノミーを使用しているとは
限りません。
例えば
- シールを五枚集めたら動画を見られる。
- カードを三枚集めたらお菓子を得られる。
- 十点たまったら特別なおもちゃで遊べる。
という交換条件がある場合に
シールやカードが
トークンとして機能します。
2.一次性好子は学習しなくても価値を持ちやすい
子供にとってのご褒美=好子には
- 一次性好子
- 二次性好子
があります。
一次性好子は無条件性好子と
呼ばれることもあり
生まれながらに好子として
働く物です。
例えば
- 食べ物
- 飲み物
- 睡眠
- 身体的な快適さ
等です。
ただし食べ物や飲み物であれば
必ず好子になるのではありません。
- 直前に十分食べた。
- 同じ物を何度も得た。
- その物を現在は選ばない。
という条件では好子としての価値が
低くなることがあります。
3.二次性好子は他の好子と組み合わせて価値を持つ
二次性好子は条件性好子と
呼ばれることもあります。
最初から価値を持つのではなく
- 一次性好子。
- 自然な活動。
- 社会的な反応。
等と繰り返し組み合わせられることで
好子として働くようになります。
例えば
- 褒め言葉
- 笑顔
- 拍手
- 点数
- シール
- お金
等です。

4.トークンは二次性好子である
トークンは代表的な二次性好子です。
支持好子と交換できることで
価値を持ちます。
支持好子とはトークンを集めた後に
交換できる物や活動です。
例えば
- トークンを五枚集める。
- お菓子と交換する。
- 動画を見る。
- 玩具を使う。
という場合シールやカードが
トークンです。
お菓子や動画が支持好子です。
複数の好子と交換できるトークンは
般性条件性好子と
呼ばれることもあります。
5.自然な強化随伴性とは異なる
生活の中ではある行動をすると
自然に次の結果が起こることがあります。
例えば
- 靴を履くと外へ出られる。
- 着替えると次の活動へ進める。
- 食器を運ぶと食事が終わる。
- 掃除をするとその場所を使いやすくなる。
という関係です。
このように行動とその後の好ましい結果が
生活の中で直接つながっている状態を
自然な強化随伴性と呼びます。
トークンエコノミーでは
- 着替える。
- シールを得る。
- シールを集める。
- 動画と交換する。
という不自然な流れを新しく加えます。
その結果
外出の準備として着替えるのではなく
シールを得るために
着替える状態になることがあります。
トークンをなくした時に
行動も減るのであれば
生活の自然な結果によって
行動しているとはいえません。
6.自分の生活に関する行動には原則として使わない
- 勉強。
- 家事。
- 服の着替え。
- 歯磨き。
- 食器の片づけ。
- 外出の準備。
等は子供自身の生活に
必要な行動です。
これらの行動へ毎回
ご褒美を必要はありません。
例えば着替えでは
- 着替えたら外出できる。
- 着替えたら登園準備が終わる。
- 入浴後に着替えたら寝室へ移動できる。
という自然な結果を使います。
家事であれば
- 机を拭いたら
食事を終了し離席できる。 - 洗濯物をかごへ入れたら入浴ができる。
- 玩具を片づけたら次のおもちゃを出したり新しい活動を始められる。
という流れにします。
勉強も
- 決めた課題を終える。
- 終わったことを確認する。
- 次の生活行動へ進む。
という固定した順番を作ります。
7.初期には効果が出やすい
トークンエコノミーを始めると
- 行動を始めるまでの時間が短くなる。
- 課題量が増える。
- 拒否が減る。
- 親の声かけが減る。
具体的なルールが決まり
ご褒美が機能するため開始直後には
とても効果的な方法に
見えることがあります。
しかし最初に効果が出やすいことと
長期間使い続けることが
可能であることは別です。
8.好子の飽和化によって効果が下がる
トークンは最終的に
- お菓子。
- 動画。
- 玩具。
- 好きな活動。
等と交換します。
同じ好子を繰り返し使用すると
子供が十分に得たことで
価値が下がることがあります。
これを飽和化と呼びます。
例えば最初は動画を見るために
トークンを集めていた子供でも
毎日長時間動画を見ていれば
動画を得るために
行動する可能性が下がります。
すると親は
- 動画の時間を長くする。
- 新しいお菓子を追加する。
- 高価な玩具と交換する。
という形で
条件を良くしやすくなります。
この対応を続けると行動を維持するために
好子を強くし続ける必要があります。
一次性好子である食べ物も
二次性好子である動画や玩具も
繰り返し得れば
価値は基本的には下がります。
また支持好子の価値が下がると
それと交換するトークンの価値も
同時に下がります。
短期的には効果があっても
長期的には飽和化によって
効果が下がる可能性が高いです。
9.連続強化・間欠強化・定率強化・不定率強化を分ける
行動の後にどのような頻度で
好子を得られるかによって
強化の方法が変わります。
代表的な方法には
- 連続強化。
- 間欠強化(定率強化、不定率強化)。
があります。
連続強化とは正しい行動が起こるたびに
毎回強化する方法です。
例えば
- プリントを一問解くたびにゲームをさせる。
- 玩具を一つ片づけるたびにお菓子を一つ渡す。
という方法です。
正しい行動の直後に
毎回ご褒美=好子を得られるため
何をすればよいのかを
教えやすくなります。
そのため連続強化は新しい行動を
教え始める時に効果が出やすい方法です。
間欠強化とは正しい行動が起きても
毎回は強化せず
一部の行動だけを強化する方法です。
定率強化と不定率強化は
間欠強化の一つです。
定率強化とは決められた回数の行動後に
強化する方法です。
例えば
- 三問解いたら動画を見る。
- 玩具を五つ片づけたらお菓子を得る。
- トークンを十枚集めたらゲームをする。
という方法です。
必要な行動の回数は
事前に決められています。
不定率強化とは強化されるまでに必要な
行動の回数が毎回変わる方法です。
例えば平均五回の行動で
強化するとしても
- 二回目で強化される。
- 七回目で強化される。
- 六回目で強化される。
というように強化されるまでの回数が
一定ではありません。
次に何回行動すれば好子を得られるのか
子供には予測できません。
家庭でよく使われる
- 行動するたびにトークンを一枚渡す。
- 五枚集めたら好子と交換する。
というトークンエコノミーでは
トークンを毎回渡す部分は
連続強化と考えられますが
五枚集めて支持好子と交換する部分は
定率強化です。
10.癇癪での要求を時々通すと不定率強化に近くなる
子供が欲しい物を得るために
- 大声を出す。
- 泣き続ける。
- 床へ寝転ぶ。
- 親を叩く。
- 同じ要求を繰り返す。
という行動をすることがあります。
親が癇癪中の要求を
- ある時は断る。
- ある時はすぐに通す。
- 何度も要求した時だけ通す。
- 長時間続いた時だけ通す。
という対応にすると
子供は癇癪を起こせば
いずれ要求が通ると学習する
可能性が高いです。
これは要求を繰り返した回数が
一定でないまま時々要求が通っているため不定率強化に近い状態になります。
代表的な不定率強化がギャンブルです。
いつご褒美=好子が出るかわからないので
大人でもハマってしまうのです。
11.定率強化では強化後反応休止が起こる
定率強化では決められた回数を行って
好子を得た直後にしばらく行動が
止まることがあります。
これを強化後の反応休止と呼びます。
例えば
- トークンを五枚集める。
- 動画を十分見る。
- 次のトークン集めを始めなくなる。
という流れです。
子供から見ると
既に好子を得た直後であり
次の好子を得るためには
再び複数回の行動が必要です。
そのため
- 交換した直後に次の課題を始めない。
- 休憩を長く求める。
- トークンの枚数が少ない間は行動しない。
- 交換に近づくと急に行動が増える。
ということがあります。
トークンでは
ご褒美までの一回あたりの必要枚数を
- 少なめに設定する=連続強化に近くご褒美の使用量が増え飽きる可能性が上がる(好子の飽和化)。
- 多めに設定する=強化後の反応休止が起こりやすくなり安定した行動が難しくなる。
というジレンマが発生します。

12.トークンによるモチベーションの維持は難しい
トークンを使用すると
- あと一枚。
- もう少しで動画。
と子供が積極的に取り組むこと
があります。
しかし長期間続けると
- 交換する好子に飽きる。
- 必要な枚数を多いと感じる。
- 交換直後に行動が止まる。
- トークンが少ない時は動かない。
- トークンのない活動を行わない。
という問題が起こります。
親は行動を維持するために
- 交換する物を変える。
- 必要な枚数を変える。
- 新しい好子を増やす。
- 交換時間を早くする。
という管理を
続ける必要があります。
ですがこれらの対応も根本解決には
なりにくくトークンの限界があります。
13.トークンを理解できる子ほど必要性が低い
トークンエコノミーを使うには
- トークンと好子の
交換関係を理解する。 - 今すぐ好子を得られなくても
待つ。 - 必要な枚数を理解する。
- 将来得られる結果を予測する。
- 決められたルールを覚える。
という能力が必要です。
これらを理解できる程度に
能力が高い子供は
- 言葉で約束を確認する。
- カレンダーで記録する。
- 自分で行動を振り返る。
- 決めた生活の順番を守る。
という別の方法も使用できます。
そのため
トークンをすぐに利用できる子供は
複雑なトークンエコノミーを
必要としないことがあります。
一方で
- 指示の理解が難しい。
- 行動と結果の関係を理解しにくい。
- 交換まで待てない。
- トークンの枚数を数えられない。
- 将来の好子を予測できない。
という子供ではトークンエコノミーの
仕組み自体の理解が難しいです。
トークンを理解できる子は
トークンがなくても教えやすい。
トークンを必要とするように見える子は
トークンを理解しにくい。
という矛盾があります。

14.トークン表を作ることを支援の目的にしない
子供が行動しない時に
- とりあえずシール表を作る。
- ポイントカードを渡す。
- ご褒美表を壁へ貼る。
という対応を行うことがあります。
しかし先に確認することは
- その行動を一人でできるか。
- 指示を理解しているか。
- 課題量が適切か。
- 必要な物がそろっているか。
- 生活のどの場面に組み込めるか。
- 行動後に自然に何が起こるか。
です。
行動をまだ習得していない場合は
- プロンプト。
- チェイニング。
- シェイピング。
等によって先に技能を
教える必要があります。
トークン表はできない行動を
できるようにする道具ではありません。
15.使用するなら能力の高い子に限定する
トークンに近い方法を
使用する場合は
- 記録の意味。
- 連続日数。
- 行動の基準。
- 過去との比較。
を理解できる子供に限定します。
ただし
- シールを集めてお菓子と交換する。
- 点数を集めておもちゃと交換する。
という複雑な交換制度は
原則として使用しません。
代わりに
- カレンダーへ丸をつける。
- できた日へシールを貼る。
- 親が短いコメントを書く。
- 連続した日数を確認する。
という自己記録に近い方法にします。
この時のシールは好子と交換するための
通貨ではありません。
できた事実を記録するための印です。
16.連続記録そのものを評価する
例えば
- 七日間人を叩かなかった。
- 十日間学校へ行けた。
- 一週間決めた時刻に起きた。
という記録をカレンダーへ残します。
- 記録を見ること。
- できた日数が増えること。
- 自分の変化を確認すること。
- 親から具体的に評価されること。
を利用して子供の行動を改善することを
目指します。
これは厳密にはトークンを集めて
支持好子と交換する
トークンエコノミーとは異なります。
実践例
中学生が朝決めた時刻までに
家を出る行動を記録する場合です。
子供は親に声かけされれば
- 時計を確認する。
- かばんを持つ。
- 靴を履く。
- 家を出る。
という行動を一人で行うことができます。
しかし日によって
- 動画を見続ける。
- 別の物を探し始める。
- 親が何度も言うまで出発しない。
ということがありました。
子供は
- カレンダー。
- 時刻。
- 連続した日数。
を理解できます。
そこで目標を
午前七時五十分までに自分で家を出る
と決めます。
決めた時刻までに家を出られた日は
カレンダーに子供が自分で丸をつけます。
親は丸の横へ
- 一回の声かけで準備できた。
- 今日は自分で時計を見られた。
- 五日連続(新記録!)
等と短く書きます。
できなかった日も過去の丸を消さず
その日は空欄にします。
翌日はまた
同じ時刻を基準に行動を確認します。
最終的にはカレンダーへ記録しなくても
決めた時刻を合図に
一人で家を出られることを目指します。
メルマガをしています。





