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自閉症児の問題行動を機能させない方法〜ABAの消去とは〜

強化とは行動の後に
特定の結果が起きることで
その行動が増えることです。

消去とは今まで行動の後に
得られていた結果をなくして
その行動を減らす手続きです。

例えば子供が大声で泣いた後に
親からお菓子をもらっていた場合は
大声で泣いても
お菓子を渡しさないようにします

しかし消去は問題行動を
単に計画的無視することでは
ありません。

子供が何を得るために
問題行動をしているのかを調べて
その結果を得られなくすることが
消去です。

問題行動の目的が注目なら
問題行動に注目を与えません。

目的が有形物の獲得なら
問題行動の後に物を渡しません。

目的が活動からの逃避なら
問題行動が起きても
予定した活動を中止しません。

消去は弱化と比べて
行動の減少が緩やかです。

さらに消去を始めると
問題行動が一時的に強まる
消去バーストが起きやすいです。

そのため消去を始める前に

どの行動を減らすのか。

行動後に何を得ているのか。

消去バーストに対応できるか。

代わりに何を教えるのか。

を決めておく必要があります。

1.消去と弱化は別の手続き

消去と弱化は
どちらも問題行動を減らすための
手続きです。

しかし行動を減らす方法が違います。

消去では
今まで問題行動によって
得られていた好きなこと=好子を
得られなくしたり
避けられていた嫌なこと=嫌子を
避けられなくしたりします。

弱化では
問題行動の後にその場に関係ない
嫌なこと=嫌子を与えるか
好きなこと=好子を取り上げることで
行動が減ります。

例えば子供がスマホを要求して
大人を叩く場合です。

これまで暴力後に
スマホを渡していたとします。

どんなに子供が親を叩いても
要求しているスマホを渡さない。

これは消去です。

問題行動によって
今まで得られていた結果を
得られなくしています。

一方で子供が大人を叩いた後に

  • 今遊んでいるおもちゃも取り上げる。
  • 5分間遊びの場から離れさせる。

という結果を加える場合は弱化です。

問題行動の後に
新しいペナルティーが
加わっているからです。

別の例としてお風呂に入れようとすると
癇癪が起きる場合です。

怒っても気にせず子供をお風呂に
連れて行く場合は消去です。

暴れてもすぐにお風呂に連れて行くことで
嫌いなことを避ける時間を減らします。

怒って暴れた場合に
しばらく座らせる場合は弱化です。

問題行動の後に
面倒な結果を加えています。

消去は問題行動をしても
今までの目的を達成できない。

と教える手続きです。

弱化は問題行動をすると
新しい面倒な結果が起きたり
または持っていた好子がなくなる
と教える手続きです。

弱化は比較的早く
行動が減ることが多いです。

一方で消去は減少が緩やかで
消去バーストが起こりやすい
という違いがあります。

2.消去は計画的無視と同じではない

消去は無視(計画的無視)であると
説明されることがあります。

しかし計画的無視が使えるのは
親や周囲から注目を得ることが
目的の問題行動です。

例えば親が電話をしている時に
子供が大声を出すとします。

親がその度に電話を止めて「静かにして」
「今話しているから待って」
と何度も注意している場合は
親の反応が大声を
強化している可能性があります。

この場合は大声に対して
親が反応しない計画的無視が
消去になる可能性があります。

一方でおむつ交換を嫌がるケースです。

子供がおむつ交換を嫌がって暴れたら
落ち着くまで待つ計画的無視をすると
逆に暴れることが強化されます。

親からの注目ではなく
嫌いなことの開始を遅らすこと=逃避が
目的だからです。

この場合は暴れないように
さっとおむつ交換することが
消去になります。

3.消去を使える行動は限られている

消去を使えるのは
問題行動後の結果に
他者が関係しておりなおかつ以下の機能
の行動です。

代表的なものは

  • 有形物獲得行動。
  • 注目獲得行動。
  • 逃避行動。

です。

  • 有形物獲得行動では親がおもちゃ、お菓子、スマホ等を渡すことが結果になっています。
  • 注目獲得行動では親が注意する、話しかける近づく等が結果になっています。
  • 逃避行動では親が活動を中止する
    活動の開始が延期される等が結果になっています。

これらは他者が子供が望む結果を
与えないようにすることで
消去を行えます。

一方で自己刺激行動は
行動そのものから刺激=ご褒美
を得ています。

  • 手をひらひらさせる。
  • 身体を揺らす。
  • 同じ音を繰り返す。
  • 指や物を見続ける。

等です。

自己刺激行動では
親が行動後の結果を
与えているわけではありません。

自己刺激行動の消去は原理的には
可能ですが基本的には使用しない
と考えた方が良いです。

4.有形物獲得行動では要求に応じない

おもちゃ、お菓子、スマホ等を
得るための問題行動では
問題行動後に要求を叶えません。

例えば子供がスマホを要求し
断られると大声で泣く場合です。

親が最初は断っても
泣き続けた後にスマホを渡すと

  1. スマホを要求する。
  2. 断られて大声で泣く。
  3. スマホを渡される。

という流れになります。

この場合の消去は大声で泣いても
スマホを渡さないことです。

ただし有形物獲得行動の消去では
子供に

  1. 要求を諦める。
  2. 自分で感情を落ち着かせる。

の2つを求めます。

感情コントロールがまだ未熟なうちは
要求には応じない一方で
親が落ち着くことを
手伝っても構いません。

  • 親の膝にのせる。
  • 歌を歌う。
  • 本人が受け入れる場合は
  • 抱きしめる。
  • 静かな場所で一緒に過ごす。

等です。

ここで重要なのはそこでの
スマホやお菓子等の要求は
叶えないことです。

親のボディータッチや声かけ
抱きしめることによって
子供が落ち着けるのであれば
使用して構いません。

5.注目獲得行動には計画的無視を使う

親の反応を得ることが目的なら
問題行動に対して
計画的無視を行います。

計画的無視とは
子供そのものを無視することでは
ありません。

問題行動に対してだけ
注目を与えない手続きです。

例えば子供が親の注目を得るため
わざと大声を出す場合です。

大声に対して

  • 子供を見る。
  • 注意する。
  • 説教する。
  • 近づく。
  • 身体へ触れる。

等を行わないようにします。

一方で適切な方法で注目を求めた場合や
問題行動を起こしていない時は
反応します。

  • 親の名前を呼ぶ。
  • 親の近くへ来る。
  • 「見て」と言う。
  • 肩を軽く触る。
  • 親が話し終わるまで待つ。

等です。

他者と話していると決まって邪魔したり
する子も多いので待てた場合は
誉める等して行動を増やしましょう。

ただし危険行動や物を壊す行動は
計画的無視してはいけません。

安全確保と弱化を
優先する必要があります。

6.逃避行動では予定した行動をなくさない

活動から逃げることが目的の
問題行動では
問題行動後に活動をなくしません。

例えば歯みがきの声かけ後に
子供が逃げるとします。

親が追いかけることを諦め
歯みがきを中止すると

  1. 歯みがきを伝えられる。
  2. 子供が逃げる。
  3. 歯みがきがなくなる。

という流れになります。

この場合は逃げる行動が
強化される可能性があります。

逃避行動の消去では
問題行動が起きても
予定していた行動を実施します。

逃避行動は

  • 散髪。
  • 洗髪。
  • 爪切り。
  • 歯みがき。
  • ドライヤー。

等の短時間で終わり
子供の嫌悪反応が強い活動で
起こりやすいです。

親が開始を伝えるとその時点から
暴れる行動が始まることがあります。

このような場合は開始時は伝えません。

  1. 子供の近くへ行く。
  2. 手を繋いだり抱っこして次の行動場所に連れて行く

という形にします。

例えばお風呂に入ることを嫌がるなら

  1. 「そろそろお風呂入るよ」と予告する
  2. お風呂の時間になったら抱っこや手繋ぎで連れて行く

という形です。

7.嫌悪反応が強い活動は別に慣れる練習をする

散髪、洗髪、爪切り
歯みがき、ドライヤー等では

  • 大声で泣く。
  • 強く逃げる。
  • 身体を反らす。
  • 物を投げる。
  • 他者を叩く。

等の強い嫌悪反応が
起きることがあります。

この場合は消去だけで
行動を続けようとすると
問題行動が強まりやすいです。

活動そのものに対する
慣れる練習が必要です。

例えば爪切りなら

  1. 爪切りを見せる。
  2. 爪切りを爪に近づける。
  3. 爪を一本だけ切る。
  4. 二本切る。
  5. 全て切る。

というように段階を分けます。

嫌悪反応が強い活動では
無理に一度で終わらせるより
練習場面を別に作ります。

8.消去は弱化より行動の減少が緩やかである

消去は弱化に比べて
問題行動の減少が緩やかです。

弱化では問題行動後に
嫌子が加わるか好子が取り上げられます。

子供の行動のリスクが高くなるので
行動が早く減ることがあります。

一方で消去では今まで得られていた結果を
得られなくするだけです。

問題行動に対して
新しいペナルティーが
必ず起きるわけではありません。

そのため子供は

  • 今日は要求が通らないだけか。
  • もっと長く続ければ通るか。
  • もっと強い行動なら通るか。

と問題行動を続けることがあります。

  • 同じ行動を何度も繰り返す。
  • 以前より長く続ける。
  • さらに強い行動を試す。
  • 別の方法で要求を通そうとする。

ということがあります。

9.消去バーストが起きることを前提にする

今まで得られていた結果が
突然得られなくなると
問題行動が一時的に強まります。

これを消去バーストと呼びます。

例えば子供が泣けば
おもちゃを得られていた場合です。

親がおもちゃを渡さなくなると

  • 以前より大きな声で泣く。
  • 泣く時間が長くなる。
  • 床に寝転ぶ。
  • 物を投げる。
  • 親を叩く。
  • 自分の頭を叩く。

等の行動が起きることがあります。

子供は今までの方法で
要求が通らなくなったため
さらに強い行動なら
要求が通るかを試します。

消去バースト中に
親が要求を叶えると強い問題行動を
長く続ければ要求が通る
と学習する可能性があります。

このように強まった結果が
激しい自傷違いであることが
多いです。

10.危険な消去バーストには弱化で対応する

消去バーストによって

  • 自分を傷つける。
  • 他者を叩く。
  • 物を壊す。
  • 物を人へ投げる。

等の行動が起きた場合は
計画的無視を続けてはいけません。

安全確保を優先します。

  • 危険な物を取り上げる。
  • 他の子供を離す。
  • 壊れやすい物を片づける。
  • 必要に応じて場所を移す。
  • 問題行動に対して事前に決めた弱化を行う。

等の対応が必要です。

家族だけでの対応は難しいため
専門家と相談して
支援計画を作る必要があります。

11.消去で効果がない場合は弱化へ切り替える

消去を一定期間続けても
問題行動が減らない場合は
消去を諦めた方が良いです。

  • 問題行動後に安全で短時間の嫌子を加える。
  • 問題行動後に好子を一時的に取り上げる。
  • 同じ行動をやり直させる。
  • 自分が散らかした物を片づけさせる。

等の弱化へ切り替えます。

12.消去だけでは適切行動は増えない

消去によって問題行動が減っても
代わりの適切行動は
自然には増えません。

例えば子供が大声を出して
親の注目を得ていた場合です。

大声を出しても
親が反応しなくなると
大声は減る可能性があります。

しかし子供は

  • 親の名前を呼ぶ。
  • 自発的に何か話す
  • アイコンタクトをする

という行動を
まだ知らないかもしれません。

そのため問題行動が減った後に
代替行動を教えます。

物が欲しい場合は

  • 自発的に発声しアイコンタクトする
  • 要求を断られても怒らない

消去だけで終わらせず
適切行動を教えることが重要です。

13.問題行動直後に要求を叶えない

問題行動が起きた直後に
適切行動を言わせて
要求を叶える方法には注意が必要です。

例えば

  1. 子供がお菓子を欲しがり大声で泣く
  2. 親がすぐに「ちょうだいって言って」と教える。
  3. 子供が「ちょうだい」と言えたため
    すぐにお菓子を渡す。

対応をとったとします。

この場合

  1. 大声で泣く。
  2. 親のヒントをもらってから「ちょうだい」と言う。
  3. お菓子をもらう。

という一連の行動が
強化される可能性があります。

適切行動を教えることは必要です。

しかし問題行動直後に
要求を叶えると
問題行動が残りやすくなります。

最初に問題行動では
要求が叶わないことを教えます。

問題行動が起きていない場面で

  • 「貸して」と言う。
  • 「ちょうだい」と言う。

等の練習を行います。

14.家族の対応を統一する

消去では家族の対応を
統一することが理想です。

実際には子育て経験や体格等の
条件が異なるため
夫婦間でも統一は難しいです。

このような場合は

  • 夫婦が揃っている時は基準をあげて行動させる
  • 片親の時は環境で問題行動を防ぐ

と場面に応じて対応を柔軟に
変えることが必要です。

実践例

動画を追加で要求して
大声で泣く子の場合です。

これまでは動画を
一つ見る約束でした。

動画が終わると子供は「もう一回」
と要求していました。

親が断ると

  • 大声で泣く。
  • タブレットを引っ張る。
  • 床に寝転ぶ。

等の問題行動が起きていました。

親は早く泣き止ませるために
動画をもう一つ再生していました。

この場合

  1. 動画を追加で要求する。
  2. 断られて大声で泣く。
  3. 動画を追加で見られる。

という流れになっています。

そこで事前に

  • 今日は動画を一つ見る。
  • 終了後に追加はしない。
  • 泣いても動画は再生しない。
  • 物を投げた場合は遊びを5分間中断する。

というルールを決めます。

動画が終わった後に子供が泣いても
動画を追加しません。

これは今まで泣いた後に
得られていた動画を
得られなくする消去です。

ただし子供が一人で
落ち着くことまでを
求める必要はありません。

親は動画を追加しないまま

  • 「見たかったね」と短く伝える。
  • 本人が受け入れる場合は歌を歌ったりする
  • 抱きしめる。
  • 静かな場所で一緒に過ごす。

等の支援を行います。

癇癪が激しい内は

  • タブレットが自動的に切れるようにする。
  • 取り上げが難しいタブレットではなくテレビで動画を見せる。
  • そもそもタブレットを使わせない。

等で問題行動を防ぐことも有効です。

メルマガをしています。

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