自閉症児の問題行動を減らす分析法は?ーABC分析の活用法ー

子供が困った行動をした時、
- 「今日は機嫌が悪い」
- 「わざとやっている」
- 「急に怒り出した」
と感じることがあります。
しかし子供の行動は急に起きているように
見えてもその前に何かきっかけがあり行動後に目的である結果が起きていることが
多いです。
ABAでは子供が何をしたかだけでなく
- 行動の前に何があったか
- 子供が実際に何をしたか
- 行動の後に何が起きたか
を確認します。
これはABC分析と呼ばれます。
- Antecedent:A→行動のきっかけ/先行条件
- Behavior:B→子供の増やしたい行動か減らしたい行動
- Consequence:C→行動の後に起きた結果/後続事象
ただしABC分析では行動の何分前までを
きっかけとして書くのか
行動の何分後までを結果として書くのか
という明確な基準はありません。
行動の直前や直後だけでなく観察者が行動
と関係していると考えられる出来事を全て
記録する必要があります。
目次
1.困った行動だけを見ても理由は分からない
例えば子供が急に大声を出す場合、大声を
出したことだけを見てもなぜ起きたのかは
分かりません。
大声の前に
- テレビを消した。
- 宿題を出した。
- 好きなおもちゃを片づけた。
- 弟が近くに来た。
- 親が別の子供と話していた。
等の出来事があったかもしれません。
同じ大声でも宿題を出した時だけ
起きるなら宿題から逃げたい可能性が
あります。
親が他の子供と話す最中だけ起きるなら
親に注目してほしい可能性があります。
好きな遊びを終える時だけ起きるなら活動
の切り替えが難しいのかもしれません。
子供が大声を出したことだけを見て
「大声出したらだめ」「静かにして」
と対応しても効果的な支援には
なりません。
まずは何が起きた後に行動が出たのかを
確認します。
2.きっかけは直前の出来事だけとは限らない
ABC分析では行動の直前だけを見ればよい
というわけではありません。
例えば食事の時間に遊びをやめられず
癇癪を起こす子がいるとします。
17時に親が「ご飯だから終わりだよ」
と伝えた後に子供が泣き始めたとします。
この時17時の声かけだけをきっかけとして書くこともできます。
しかし実際には
- 16時50分に食事の予告があったか。
- 16時55分に遊びで負けていたか。
- 16時58分に親が遊びを手伝うのをやめたか。
- 前の食事から時間がかなりたっている→お腹が空いている可能性が高いか。
といった出来事が関係していることが
あります。
そのため行動の何分前までを見るかを
一律に決めることはできません。
観察者は今回の行動に関係していると
考えられる出来事をできるだけ具体的に
書きます。
ただし朝から夜までの全てを書く必要は
ありません。
子供の行動が変わった場面や
大人が指示を出した場面
遊びや課題が始まった場面
人や場所が変わった場面等を
中心に記録します。
3.結果も直後だけとは限らない
行動の後に起きたこともすぐに起きた
出来事だけとは限りません。
例えばゲームを終える時に
子供が大声を出したとします。
親が最初は「時間だから終わりだよ」と
伝えたけれど10分間泣き続けた後に
「今日は特別に5分だけね」
と言ってゲームを再開させたとします。
この場合大声を出した直後にゲーム時間が延びたわけではありません。
しかし、
- 大声を出す。
- 泣き続ける。
- ゲーム時間が延びる。
という流れがあるためゲーム時間の延長は
行動の結果として記録した方が良いです。
行動に影響を与える結果は
- 行動の数秒後に起きる場合があります。
- 数分後に起きる場合もあります。
- 大人が何度も説得した後に起きる場合もあります。
- 子供が落ち着いた後に起きる場合もあります。
そのため行動の後に何分までを見るかを
固定することはできません。
子供の行動が終わった後も、
- 活動がどうなったか。
- 課題はなくなったか。
- 親の注目が続いたか。
- 好きな物を手に入れたか。
- 別の場所へ移動できたか。
等を観察すると良いでしょう。
4.ABC記録では関係していそうな流れを書く
ABC記録では短く書こうとして、
- 「怒った」
- 「注意した」
- 「落ち着いた」
だけで終わらせると何が起きたのかが
分かりません。
長く書く必要はありませんが具体的な行動を詳細に書きます。
例えば
- きっかけ
ゲーム終了の10分前に親が「そろそろ終わるよ」を伝えた。 - 行動
子供が大声で泣きゲーム機を床に投げた。 - 結果
子供が「まだやりたかった」と大声を出して泣き続けた後に親が「あと5分だけね」と言ってゲームを5分延長したら子供がすぐに泣き止んだ。
このように書くとわかりやすいです。
記録を見る時は子供の行動だけでなく
親の対応が困った行動の維持要因に
なっていないか
適切行動の後に子供にとって良い結果が
起きているかを確認します。
5.親の声かけも行動の一部として見る
子供が動かない時親は以下のような言葉を何度もかけることがあります。
- 「早くして」
- 「何回言えば分かるの」
- 「ちゃんとやって」
- 「まだなの」
しかし声かけが増えるほど子供が自分で
動かなくなることもあります。
- 親が何度も言うまで行動を始めない。
- 怒った声になるまで動かず好きな活動を続ける。
- 静止していると親が次の行動を全部教えてくれる。
という形になっている場合があります。
この時は子供の行動だけを見るのではなく
- 親が何回声をかけたか
- どの言葉で動いたか
- 声をかけないと何分待つか。
- 声をかけた後に子供が何をしたか。
を見ます。
例えば朝の支度なら「着替えて」と何度も
言うより
- 服を並べる。
- タイマーをスタートする
- 子供がパンツを履く。
- できたら次の服を出す。
という形にした方が親の声かけを減らせる
ことがあります。
6.うまくいった場面と比べる
困った行動が起きた場面だけを見ていると
何が原因か分かりにくいです。
同じ場面で問題行動が起きなかった時も
確認します。
例えば食事の時間に遊びをやめられない子
がいるとします。
ある日は怒って食卓へ行けない、別の日は
声をかけるとすぐ座れる場合は
この違いを見ます。
- 食事の前に予告があったか。
- 遊びがちょうど終わる場面だったか。
- 親が怒らずに次の予定を伝えたか。
- 遊びを終えた後に少し時間を置いたか。
等を比べます。
うまくいった日には子供が何をできたか
親がどう対応をしたか
周囲の環境がどうだったか
という支援のヒントがあります。
困った行動を減らすためには困った行動が
起きなかった条件を見つけることも
重要です。
7.行動の前後を変えると支援が変わる
行動の前後を確認すると叱る以外の方法を
考えられるようになります。
例えば宿題を出すと毎回机から離れる子の
場合です。
- 宿題を出す。
- 子供が机から離れる。
- 親が宿題を片づける。
という流れなら最初にすることは
机から離れないように注意することでは
ありません。
- 宿題を一枚出すのではなく計算を3問ずつに分割する
- 宿題を始める前にやるべき量と制限時間を伝える。
- 終わったら休憩にする。
というように宿題の前の条件を変えます。
また問題行動が起きた場合は机から離れた後に宿題がなくなる形ではなく
- 宿題を完了せずに離席した場合は遊びを許可しない。
- 落ち着いたら最初に決めた3問に戻る。
- 終えたら休憩に入り好きな遊びをできる。
という結果に変えます。
子供に求めることだけでなく
子供が行動しやすいきっかけと
行動後の結果を整えることが大切です。
実践例
食事の開始時に遊びをやめられない子の場合です。
親は、「食事の時間になっても毎回遊びをやめられない」と感じていました。
そこで食事の10分前から食卓につくまでの
流れを記録しました。
- きっかけ
食事の時間になり親が「おもちゃ片付けて」と子供に言った。 - 行動
子供がブロックを握ったまま「まだやる」と大声で言った。 - 結果
親が「あと10分だけね」と言って食事の開始を遅らせた。
別の日には以下の行動が観察されました。
- きっかけ
食事の10分前に遊びの終了を伝えた。 - 行動
子供がブロックを片づけた。 - 結果
親が「自分で遊びを終えられたね」
と具体的にほめてくすぐったら子供が笑顔になった。
この記録から予告なく遊びを終了すること
が難しい可能性が見えてきます。
そこで、
- 食事の10分前に
遊びの終了を伝える。 - 5分前にもう一度伝える。
- 遊びを終えられたら子供が喜ぶようにほめる。
- 遊びを終えた後に5分ほど落ち着く時間を作る。
- その後に食卓へ誘導する。
という支援に変えます。
観察を続けることで
- 何がきっかけになっているのか。
- 親の対応で何が続いているのか。
- どの行動を増やせばよいのか。
が見えやすくなります。
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