ABAで見る「できない」の正体― 性格ではなく、行動が起きにくい条件を見る ―

子どもが何かをできない時、
「やる気がない」
「怠けている」
「何度言っても直らない」
と考えてしまうことがあります。
しかしABAではできないことを子供の性格
だけで説明しません。
できない行動には多くの場合以下の状態が
起きています。
- 何をすればよいか分からない→指示を理解していない
- 課題が難しすぎる→スモールステップになっていない
- 一度に2つ以上のことを求めている
- 課題をする場面がふさわしくない→子供のモチベーションが低い
といった理由があります。
大切なのは、「できない子」と考えることではありません。
どこで止まっているのか。
何があればできるのか。
できた後にどんな結果があるのか。
これを具体的に見ていくことです。
“他人や自分や組織がすべきことができないときに、その原因を性格とか能力とか態度などの《心》の概念のせいにして、どうすればできるようになるかを考えなくなってしまうことを私は『個人攻撃の罠』と呼んでいる。(出典:「人は、なぜ約束の時間に遅れるか」(島宗理)P.155)“
目次
1.「できない」を一つの行動として見ない
「朝の支度ができない」
「宿題ができない」
「片づけができない」
このような言い方では、何に困っているのかが分かりません。
例えば、「朝の支度ができない」と言っても、実際にはいくつもの行動があります。
- 起きる
- トイレに行く
- 着替える
- 顔を洗う
- 朝食を食べる
- 歯をみがく
- 荷物を持つ
- 玄関へ行く
この中のどこで躓いているのかを見ます。
服を選ぶところで止まる子もいます。
遊びをやめられず、着替えに移れない子もいます。
着替えた後に何をすればよいか分からず、ぼんやりしてしまう子もいます。
同じ朝の支度ができないことでも必要な
支援は違います。
そのため、最初にすることは
できないとまとめることではなく
どの行動ができていてどの行動の段階で
止まっているかを分けることです。
2.何をすればよいかが分からないと子どもは動けない
大人にとっては簡単な指示でも、子どもにとっては曖昧すぎることがあります。
- 「ちゃんと準備して」
- 「早くして」
- 「片づけて」
- 「宿題をやって」
このような言葉は、何をすればよいのかが分かりにくい指示です。
例えば、「宿題をやって」と言われても
- プリントを出す
- 鉛筆を持つ
- 何から始めるか決める
- 問題を読む
- 分からない問題をどうするか考える
といった複合動作になっています。
求められることが複数になってしまうので
難しくなっているのです。
その場合は求める行動を一つにします。
- プリントを机に出す
- ノートを開く
- 宿題をチェックする
- 宿題を3問する
この中で一つだけ教える行動を選びます。
それ以外の行動は親がやってしまっても
構いません。
子供一人で行動させる場面と
親がしてしまう場面を明確に分けます。
3.必要な力がまだ身についていないことがある
できない行動の中には練習不足ではなく
その前に必要な力がまだ育っていない場合があります。
できない行動を見た時は、
- 指示がわかっているか
- 親のヒントなしでできる課題か
- 一度に2つ以上のことを求めていないか
- 一度にする量が多くないか
をチェックしてみましょう。
4.できないことで、嫌なことを避けられている場合がある
子どもが課題を嫌がる時その行動の後に
何が起きているかを見ることも重要です。
例えば宿題を始めると泣く、怒る、机から
離れる子がいるとします。
そのたびに宿題を諦めてしまうと子どもは
次のような流れを学習する可能性
があります。
宿題を嫌がる
→ 宿題が減る
→ 宿題をしなくてよくなる
この流れが続くと、泣く・怒る・逃げると
いった行動が宿題を避ける手段として
強まりやすくなります。
そのため課題量は癇癪の最中に
決めないことが大切です。
最初から
- 計算を3問終えたら休憩
- 漢字を2語書いたら終わり
と決めておきます。
嫌がったしても落ち着いたら最初に決めた
少量の課題を実施します。
- 課題量がいつもはできている量
- 学習が始まる前に癇癪が起きている場合は課題を始めない→学習が始まってから癇癪が起きた場合は続行する
という条件であれば子供に負担を
かけ過ぎていることはないです。
5.大人が手伝いすぎていることもある
子供ができない時大人はすぐに助けたくなります。
- 服を着るのが遅いと、親が袖を通してしまう。
- 宿題で止まると、答えを言ってしまう。
- 片づけが進まないと親が一緒に片づけてしまう。
必要な手助けはありますが毎回
手伝っている場合は面倒な時やわからない
時に
- 立ち止まって親の顔を見る
- 「できない」と言う
- 「やって」と言う
等の行動が出てしまい自分から試す行動が育ちにくくなります。
そのため支援は全部親がやる部分と
子供一人でさせる部分を明確に分けます。
例えば、着替えなら
- 服を出して並べることは親がする。
- パンツ、下着は自分で着させる
- パジャマの上下は親が着せる
このように子どもが一人でさせる部分を
明確にします。
- 一人でするパート
- 親がするパート
を明確に分けることで「できなかったら
手伝ってもらう」パートを作らないように
します。
少しずつ子供一人でできるパートを
増やすことが目的です。
6.できる条件を整えると行動は変わりやすい
子どもができない時は本人を変えようと
する前に環境を見直します。
- 集中できる環境か
- 指示が長すぎないか。
- 終わりが見えているか。
- 課題が難しすぎないか。
- 制限時間があるか。
- 課題場面が決まっているか。
例えば宿題をすぐ始められない子には、
- 帰宅後手を洗ったら宿題を机に出す
- 計算を3問だけする
- 短く休憩する
という流れを毎日同じ順番にします。
宿題を始める前にイヤイヤになる前に
帰ってすぐに少量始める形の方が
子供の行動を習慣化しやすくなります。
行動は本人の意志だけで決まるものでは
ありません。
環境とルールを整えることでできなかった
行動が少しずつできるようになります。
実践例
お風呂後の着替えで毎日止まってしまう子
の場合です。
これまでは、
- 「早く着替えて」
- 「何回言えば分かるの」
- 「もう時間がないよ」
と何度も声をかけていました。
しかし子どもは遊びを終えられず裸で
遊んでいました。
そこで次のように変えます。
- パンツ、下着、パジャマの上は親が着させる
- パジャマのズボンだけ子供一人に着させる
- 時間制限をかけオーバーしてしまった場合は再度履かせる
- ズボンを履いて「できた」と言えたら脱衣所から出す
このようにスモールステップに分けて
教えることで効果的になります。
子どもができない時は叱る前に
- 何が分からないのか。
- どこで止まっているのか。
- 何があればできるのか。
常にチェックするようにしましょう。
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