自閉症児の自己刺激行動に関する最新研究

自閉症スペクトラム障害等の発達障害児は
自己刺激行動と呼ばれる特殊な行動を
することがあります。
自己刺激行動は以下のように定義されます。
“持続的、非常に反復的で変化に欠ける動作・癖・連続した行動で、明確な目的がなく自傷的でないもの。手をハタハタさせる、体を揺するといった常同行動を含む。”
『発達障害事典』P.425(明石書店)
自己刺激行動を最新研究を元にまとめました。
目次
1.自己刺激行動の概要と目的
自己刺激行動は、自閉症の診断における中核的な特性の一つです。
「常同的または反復的な運動、物体の使用、または発話」として診断基準(DSM-5)に含まれ多くの自閉症児に見られます。近年の研究ではこの行動は単なる無意味な
繰り返しではなく本人にとって重要な目的
を持つ自己調整メカニズムであるという
見方が主流です。
- 感覚の調整
光、音、触覚等の外部からの感覚入力が多すぎたり(感覚過敏)、
少なすぎたり(感覚鈍麻)する際、一定のリズムの動きで脳への入力を調整し安心感を得るために行われる- 感情の管理:
喜びや興奮等の良い感情や
不安、ストレス、等の負の感情から心を落ち着かせるために行われる- 集中力の維持
何かに集中したい時に他の刺激を遮断し集中する手助けとなる2. 主な統計的知見と傾向
特定の論文に自閉症児が自己刺激行動を
行う割合明確な統計は示されていません。
自己刺激行動が自閉症の中核的な特性で、
その有無よりも「どのような種類の行動が、どの程度の頻度や強度で見られるか」が重視されるためです。
研究からは下の傾向が報告されています。
- 性別と機能レベル
研究では
男児や知的障害を伴う自閉症児は
女児や知的障害を伴わない自閉症児
よりも自己刺激行動が多く見られる傾向があると報告されてる- 行動の種類
最も一般的に見られる自己刺激行動は体を揺らす、手をひらひらさせる、飛び跳ねる、走り回る、行ったり来たりする等の身体的動きが含まれる- 有害な行動のリスク
多くの自己刺激行動は本人に有益で
無害だが頭を打ち付ける、体を掻く・噛む、髪を抜く等の自傷行為につながる場合もある3. 現代の自己刺激行動の考え方
かつては自己刺激行動を問題行動と捉え
消すべき対象と考える傾向がありましたが
近年はその認識が大きく変化しています。自閉症の当事者や神経多様性を支持する者は自己刺激行動が不安を和らげ周囲の環境に対処するための重要な適応メカニズムであると主張しています。
そのため
自傷行為など明らかな危険が伴わない限り
無理にやめさせるのではなく
本人が安心して行える環境を整えることが
重要だと考えられています。参考文献リスト
- ‘People should be allowed to do what they like’: Autistic adults’ views and experiences of stimming. Autism,
- Towards Safe Self-Stimulatory Behaviors in Autistic Children
- Characteristics and predictors of auto-stimulatory behavior in children with autism.
- Repeated movements and behaviour (stimming).
- Autism and Stimming