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自閉症児のコミュニケーションの特徴(最新研究から)

自閉症スペクトラム障害等の発達障害児は
特殊なコミュニケーション方法を
見せることがあります。

最新研究で自閉症児のコミュニケーション
の特性についてまとめました。

最近では従来の医学モデル的な視点に加え
当事者の視点や神経多様性(ニューロダイバーシティ)の観点からのアプローチが
注目されています。

1.自閉症のコミュニケーションの特徴

自閉症のコミュニケーションの特徴は
「言語的コミュニケーション」「非言語的コミュニケーション」
言葉の裏を理解する「語用論」の3つの側面から捉えられます。

①非言語的コミュニケーションの特異性
他者とのやり取りにおいて言葉以外の情報
(表情、視線、身振り等)の使い方が
非定型的な場合があります。

  • 視線の合いにくさ:
    相手の目を見るのが苦手だったり
    逆にじっと見つめすぎたりする
    ことがある
    これは
    相手の目からの情報量が多すぎて処理しきれない
    あるいは不安を感じるためといった理由が考えられる
  • 表情や身振りの乏しさ
    自分の感情を表情に出すことが
    少なかったりジェスチャーをあまり
    使わなかったりする傾向がある
  • 他者の非言語サインの読み取り困難
    相手の表情や声のトーンから
    感情や意図を読み取ることが難しい場合がある
    特に音声情報よりも
    表情からの感情の読み取りが
    苦手な傾向が示唆されている

②言語的コミュニケーションの特異性
話し言葉そのものにも特徴が見られることがあります。

  • 言語発達の遅れ
    言葉の発達が同年代の子どもに比べてゆっくりな場合がある
  • エコラリア(反響言語)
    相手が言った言葉やテレビのセリフ
    等をそのまま繰り返すことがある
    意味を理解せずに繰り返す場合も
    あればコミュニケーションの試み
    として用いる場合もある
  • 独特な話し方
    声のトーンが一本調子であったり
    独特の抑揚で話すことがある
  • 曖昧な表現や比喩の理解の困難
    適当に、少しだけ等の曖昧な表現や
    「恥ずかしくて死にたい」等の
    比喩・慣用句を文字通りに
    解釈してしまう傾向がある

2.最新の研究で注目される新たな視点

近年の研究ではこれらの特徴を異なる角度
から捉え直す動きが活発になっています。

①ダブル・エンパシー問題
従来コミュニケーションの困難は
自閉症児者側の「共感性の欠如」に
起因すると考えられてきました。
しかし、「ダブル・エンパシー問題」は
自閉症の人と非自閉症の人との間で
お互いの経験や考え方が大きく異なるため
双方が相手に共感し理解することが困難
になっているという考え方です。

  • 自閉症児者同士のコミュニケーションは円滑
    研究によると自閉症児者は他の
    自閉症児者とコミュニケーションを
    とる方が非自閉症の人と話すよりも
    スムーズで心地よいと感じることが
    報告されている
  • コミュニケーションの違い
    この理論は自閉症のコミュニケーションスタイルを欠陥ではなく違い
    として捉え困難は双方の相互理解の
    ズレによって生じることを
    示唆している

③カモフラージュ
自閉症児者が社会的場面で困難を
解決するため無意識的あるいは意識的に
自分の特性を隠し周囲の非自閉症の人々
の行動を模倣することをカモフラージュと呼びます。

  • 特に女性に多い
    研究では男性よりも女性の方が
    カモフラージュを多用する傾向が
    報告されている
    これにより女性は幼少期に自閉症と
    診断されにくく診断が成人期に
    遅れる一因となっている
  • 精神的な負担
    カモフラージュは一時的に社会に
    適応する助けになる一方で
    常に自分を偽っている感覚や
    疲労感につながり不安や抑うつ等
    二次的な精神的問題のリスクを
    高めることが指摘されている

③文化差による影響

コミュニケーションのあり方は
文化によっても異なります。
日本のようにお辞儀や相槌といった
非言語的合図が重要な役割を果たす文化と
欧米の文化とでは自閉症児者が直面する
コミュニケーションの課題が異なる可能性
が示唆されています。
欧米の研究成果をそのまま日本の状況に
当てはめることは慎重さが求められます。

参考文献

  • On the ontological status of autism: the ‘double empathy problem’. Disability & Society, 27(6), 883-887.
  • Autistic peer-to-peer information transfer is highly effective. Autism, 24(7), 1704-1712.
  • “Putting on my best normal”: Social camouflaging in adults with autism spectrum conditions. Journal of Autism and Developmental Disorders, 47(8), 2519-2534.
  • 自閉スペクトラム症の女性が行うカモフラージュ行動の傾向と動機に関する研究の現状と課題. お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要, 23, 37-44.
  • 「本当の思い」は隠されている?―自閉スペクトラム症の女性のカモフラージュ. 臨床心理学, 21(2), 203-208.
  • Cross-cultural differences in the interpretation of social communication in autistic individuals in Japan and the UK. Waseda University Research News.
  • Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.)

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