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自閉症児の問題行動を減らす弱化の原理とは(ABA)

 自閉症スペクトラム障害児(自閉症児)の適切行動を増やすために、強化の原理を使用すると説明しました。自閉症児と強化の解説は以下のページを参照してください。

 今日は、自閉症児の問題行動を減らす方法の一つである弱化の理論を説明していきます。

弱化とは何か

 弱化(じゃっか)は過去には罰(ばつ)とも呼ばれていました。これには理由があり、英語で弱化はPunishmentだから直訳で罰と呼ばれていたです。弱化の定義は以下の通りです。

ある行動や 応答が将来起こる生起性を低減する。

自閉症百科事典P.139

 簡単に説明すると、行動の後にご褒美(好子)が取り去られたり、嫌なこと(嫌子)が与えられることにより行動が減少したり、弱まったりすることです。2種類の弱化があります。

好子による弱とは

 好子による弱化は強化子による弱化、負の弱化(Negative punishment)とも呼ばれます。以下のように定義されます。

正の強化の除去や撤回をはじめとする罰(弱化)

自閉症百科事典P.139()内は坂本が追加

 行動した結果、好子が除去されることにより行動が弱化されます。2種類の好子による弱化があります。

①好子消失による弱化
 現在手に入っている好子が無くなることで行動が弱化されます。以下が例です。

  このように、違反した結果、罰金(好子)を支払わないといけない場合、好子消失による弱化が起こります。もし、懲役刑等が加わる場合は、後述する嫌子出現による弱化も加わることとなります。

②好子出現阻止による弱化
 将来的に手に入る予定だった好子を取り上げてしまうことで行動が弱化されます。以下が例です。

2:13~5:40

 これは、トークンシステムという方法を使用して好子を渡す方法です。あらかじめトークンと呼ばれるチケットのような物を渡しておいて、後程それに基づき好子をもらうという強化システムです。態度がよかった一人の男の子しかお菓子をもらえておらず、あとの子供はお菓子を取り去られた状態です。お菓子という好子が出現することが阻止されることにより弱化が起きます。

嫌子による弱化とは

 嫌子による弱化(けんしによるじゃっか)は、弱化子による弱化(じゃっかしによるじゃっか)、正の弱化(せいのじゃっか)(Positive punishment)嫌子による弱化の定義は以下の通りです。

 行動に引き続いて不快な出来事が起こるような罰(弱化)

自閉症百科事典P.139()内は坂本が追加

 嫌子による弱化は、行動の後に行動する者が嫌がる物(嫌子)を与えることによって行動が減少、弱まる原理です。2つの種類の嫌子による弱化があります。

①嫌子出現による弱化
 嫌子が与えられることにより行動が減ったり弱まったりする弱化です。

1:29~1:41

 このように、行動の結果に髪の毛を引っ張られるという嫌子が出現することで行動が弱まったり、減ったりします。

②嫌子出現阻止による弱化
 嫌子が出現することを阻止するために行動が弱まったり減ったりすることです。

 このように、授業参観中はふざけていると親に後から怒られたりしてしまうので授業参観中はふざける子供が減ります。嫌子出現阻止による弱化の場合、一度痛い目にあって学習していることがほとんどです。ですから、授業参観もふざけていて後から親に怒られてしまった場合は、次からふざける行動が減る可能性が高いです。

弱化が起きているかはどう確認するか

 弱化が起きているかどうかは、強化と同様でその場では確認できません。

 例えば、このような行動の場合、子供が泣いているから嫌子による弱化が起きているだろうと考えることは問題があります。

 このように、その後同じ行動が減るかどうかで弱化が起きているかを確認できます。注意点としては、親に注意されて泣くことは問題行動の強化が起きることがあるのです。

 このように、親は子供が泣いたから反省しているだろうと考えた時でも、子供は泣くと親が怒ることを止めると学習してしまっていることがあります。このような子供の場合、親が怒ると大声で泣きますが、怒らなくなった瞬間に泣き止んでいるということがあります。

弱化はABAでどのような役割を果たすか

 弱化の理論はABAの指導で大きな役割を果たします。弱化対象となる行動は、即座に消したい行動や、消去で消えなかった行動等です。

 特に他人に迷惑をかける行動や自分自身が危険にさらされるような行動に関しては弱化が使われることが多いです。

 また、弱化は何かの行動を減らすことはできますが、代わりの行動を教えるものではありません。例えば、泣いてお菓子を要求することを弱化すると泣いて要求することはなくなりますが、自閉症児にとって代わりの要求手段がないとまた泣く行動に戻ってしまう可能性が高いです。ですから、弱化をして問題行動を減らした後は、強化を使用して適切行動を教えていく必要があります。

弱化の優先順位

 好子による弱化と嫌子による弱化がありますが、自閉症児の指導に使用する場合、好子による弱化が優先されます。好子による弱化のほうが子供への負担が少ないからです。一方、嫌子による弱化は最終手段として使用されます。

まとめ

 弱化は長期間行動を弱めるということは難しいことが多いので、強化とセットにして問題行動を減らした後には即座に適切行動を教えていくということを忘れずに実施していきましょう。

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