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療育でご褒美は使うべきか?

https://www.photo-ac.com/main/detail/2719703?title=%E4%BB%B2%E8%89%AF%E3%81%97

 自閉症スペクトラム障害に対する子供の療育で論争になるのが「ご褒美を使うか、使わないか」論争です。ABAではご褒美のことを好子(強化子)と呼びます(厳密に言うと違いますが、基本的にはそう考えて問題ありません)。好子を行動の結果で得られると行動が増えます。好子を得て行動が増えることを、正の強化、好子による強化と言います。

 好子を使う派の意見としては、自閉症スペクトラム障害の子供は褒められてもうれしくないし、好子を使わないとモチベーションを保てないということが挙げられます。

  一方、好子を使わない派の意見は、「自然ではない」「そんなものを使用しなくても普通に育つ」「褒めるだけで十分」ということが言われます。

  これらは、内発的動機づけ、外発的動づけという違いで説明されることがあります。詳しく説明すると長くなるので簡単に説明しますと、自分自身の欲求から行動すること(例えばプラモデルを作って自分の部屋に飾る等)が内発的動機と呼ばれ、外部からの好子を得るために行動すること(例えば、手伝いをして小遣いをもらう等)が外発的動機と呼ばれます。

 子供の行動に好子を使わない場合、全てが内発的動機で機能しているかというとそうではありません。もともと人間の場合、

  • 相手の共感
  • 相手からのほめ言葉
  • 相手の真似
  • 相手の笑顔

ということがご褒美として機能しています。これは、特に女性が強いと言われ、集団での生活をする人間ならではの特性だと言えます。これは、集団生活を送る他の動物でも見られ

  • 犬が飼い主に褒められて喜ぶ
  • 猿が他者から注目されるために高いところから飛び降りるといった注目獲得行動をする
  • クジラが特定の歌を歌う

といった例が挙げられます。ほめるということが好子とならないような動物の場合は、好子を用意しなければ言うことを聞かせることが難しいです。例えば、猫等では好子を使用して芸を教える必要があります。

 では、なぜ自閉症スペクトラム障害の子供では好子が必要とされるのでしょうか。それは、自閉症スペクトラム障害の特性が関係しています。自閉症スペクトラム障害児は、

  • 他人からの注目やほめ言葉が好子として機能しない
  • 他人に注目することがない
  • 普通の人間なら有している自然に他人と目を合わせるスキルが乏しい、もしくは欠損している

という特徴があります(というよりもこれらの特徴を有している者が自閉症スペクトラム障害と診断される)。通常、定型発達の赤ちゃんは1歳ごろから喃語が増えていきます。これは、喃語に対して親が「よく喋れたね」「わんわんだよ」と注目したり称賛したりというリアクションをとり、これらが赤ちゃんにとって好子として機能するから段々と言葉が増えていくのです。一方、自閉症スペクトラム障害児の場合、定型発達児と同じように喃語を話す時期がありますが、喃語から言葉に発達しないで停滞したり、言葉が消えたりします(いったん話していた言葉が消えることを折れ線現象、ブーメラン現象と呼びます)。これは親からの注目が好子として機能しなかったので好子による強化が起きなかったからです。

 ですから、言葉が出現しない子供に対して好子を使用することは定型発達児と同じような発達をするためには必要です。ただし、言葉に対して好子を使用し続けるわけではありません。

https://www.photo-ac.com/main/detail/2526103?title=%E3%81%8A%E8%8F%93%E5%AD%90%E3%81%AE%E5%AE%B6

 もともと、自閉症スペクトラム障害児の言葉の訓練に対して好子が必要なのは、他者からの注目や賞賛が好子にならないからですが、仮にこれらが好子に変化したらお菓子等の好子を使用する必要がなくなります。

 「そんな夢みたいな方法があるわけ…」と思われますが、実現可能です。ペアリングという手法を使用します。

 ペアリングとは、同呈示とも呼ばれ、好子と好子ではない物を同時に提示すると好子ではないものが好子に変化するという素晴らしい方法です。例をあげます。

 この子供の場合、くすぐりは飲み物は好子として機能しますのでよくできた時は、飲み物という好子を与える前にほめ言葉、笑顔、くすぐりを実施します。そうすると、最終的にほめ言葉、笑顔が子供にとって好子に変わります。

 このように、行動を教える場合に好子を使用したとしても褒めること、子供に笑いかけることが好子に変われば最終的にお菓子等の好子を使用しなくても行動を強化していくことが可能になります。ですから、お菓子等を使用しても最終的には使わなくすることを目標に療育を実施していくべきです。

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