異常が正常になる日(自閉症療育)
アメリカのスペースシャトル、チャレンジャー号の事故を知っていますか。発射の際の事故で、乗組員全員が亡くなった痛ましい事故です。
その事故報告書に興味深い記載がありました。社会学の専門家である Diane Vaghanによって書かれたものです
チャレンジャー号とコロンビア号の事故原因を分析していった結果、その内面的要因に NASAの組織文 化が関与していることが判明した。「逸脱の正常化」という独自の特徴が露呈した。NASA 内部では特定の 規則が破られたわけではないが、小さな問題が積み重なり、それがいつしかノーマルな現象と認識されてし まっていた。これが NASA における独特の組織文化の一面であるといえる。
http://fs1.law.keio.ac.jp/~kubo/seminar/kenkyu/sotsuron/sotsu13/15sueki.PDF
「逸脱の正常化」(normalization of deviance)は、正常ではない状態が続くことにより正常として認識されてしまうとということだと解釈しています。これは自閉症スペクトラム障害等の発達障害児に対する支援によく起こることです。
- 授業中に発達障害児が着席していなくても注意されなくなる
- 他の子供が発達障害児に攻撃されてもすぐに逃げるようになり「やめて」と訴えなくなる
- 発達障害児が課題をしなかったとしても注意されなくなる
このように、「この子は課題ができないなぁ」から「この子は課題をしなくてよい」に変わることががあります。これが非常に残念なことです。最初からできないと諦められてしまうことが多くなるからです。こうなると、実際に練習機会が与えられなくなり、機会がない→下手になるというループにはまってしまいます。
支援者は子供が現時点でできないことは認めるべきですが、できることを少しずつ増やしていくように支援することが求められます。