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行動を結果論で語ることは誰でもできるが意味はない


https://www.photo-ac.com/main/detail/2405367?title=%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%B3

 報道によれば、高齢となった伯父夫婦は、訪問看護の必要から市に、隆一容疑者と接触がないので看護師を自宅に入れても大丈夫かと17年以降十数回にわたって相談していた。そして今年の1月、市の担当者の勧めで、伯母がひきこもりを心配する内容の手紙を岩崎容疑者の部屋の前に置いたところ、岩崎容疑者は口頭で伯母に、「自分は洗濯もするし食事も作れるから閉じこもっているわけではなくちゃんと生活している。ひきこもりとはなんだ」と答えたという。
「市の担当者が勧めた、ひきこもった人に手紙を渡すのはマニュアルのひとつとなっていますが、これはまずかった。ひきこもりと言われて、自分のことを全否定するメッセージと伝わってしまいますよ。本人には、ひきこもりと言うべきではありません。ひきこもりと言われたことをきっかけに暴力的になるケースが少なくありません。ずっと接触がなかったわけですから、まず、“おはよう”とか声を掛けて、“美味しいものを作ったから、一緒に食べよう”などと誘ってみるしかありません。少しでも人間関係を築いてから、問題の解決に乗り出すべきでした。自分の存在が否定され、これまでの生活が続けられないと絶望し、死を覚悟したのかもしれません」(同)


https://www.dailyshincho.jp/article/2019/06030601/?all=1&page=2

 川崎の殺傷事件で心理士、精神科医、自称専門家の見解が連日のように報道されています。大体酷いのですが、上の記事は最低ですね。伯母が手紙を渡さなかったら事件は起こらなかったと言わんばかりの論調です。では同居している方は何もしなければよかったのでしょうか。「〇〇するな」という意見の大半は代案が曖昧なものになっていることが特徴です。これも声をかければよかったというアドバイスになっています。

 科学の本質は記述、予測、制御です。つまり、今後起こることを予測し、制御できない場合は意味がほとんどありません。

 犯罪者心理学で難しいことはサンプルが非常に少なく、データ量が少ないことです。最新ではありませんが、こちらのデータによると8年前の殺人を犯す者の割合は10万人に1人以下で、発生率は0.001%以下です。さらに通り魔は年平均6.5件で、殺人全体の0.7%です。つまり、通り魔をする者の発生確率は0.001%×0.7%=0.000007%です。

 これはどれほどの確率かというと以下の通りです(こちらを参照しました)。

  • 年賀はがき一等当選0.001%(1429倍起こりやすい)
  • オスの三毛猫が生まれる0.003%(428倍起こりやすい)
  • 毎日飛行機に乗っていたとして事故にあう0.0009%(128倍起こりやすい)
  • カジノで億万長者になれる0.0002%(29倍起こりやすい)
  • 雷に打たれる0.00001%(1.4倍起こりやすい)
  • ジャンボ宝くじ一等0.000005%(0.7倍起こりにくい)

 ジャンボ宝くじがいかに当たらないかがわかりますね。このようにサンプルが少ないケースの発生を予測し、制御することは至難の業です。

 私は今回の事件は犯人が引きこもりだから起こした事件とは言えないと思います。証拠がなく、あくまで推測になってしまうからです。ですが、仮に殺人事件を起こしても起こさなかったとしても引きこもり状態が解消されていたほうが犯人にとっても周囲の人間にとっても生活はしやすかったのではないでしょうか。

 殺人を予測し制止することは難しいかもしれませんが、不登校、引きこもり等といった目に見える問題に働きかけ、一人ひとりの生活のしやすさを向上させていくことは無意味ではないです。私は不登校や引きこもりが問題とは必ずしもとらえてはいませんが、本人や家族が状態の改善を望んでいるのであれば適切なスキルを持って働きかける必要があると考えています。

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